Google社独自のプログラム「デザインスプリント」を実施!ディップの企画・開発・デザイン担当が得た学びとは。

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江幡 卓朗
商品開発本部 システム統括部 システム開発部 プロジェクトマネジメント課 マネジャー ▼詳細

谷田部 成美
商品開発本部 メディアプロデュース統括部 グロースハック部 プロダクトデザイン課 ▼詳細

小林 礼実
商品開発本部 メディアプロデュース統括部 グロースハック部 グロースハック課 ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

2021年6月、Google社独自のプログラム「デザインスプリント」を実施したディップ。「デザインスプリント」に参加した江幡(開発)、谷田部(デザイナー)、小林(企画)の3名に話を聞いてみた。
※写真右上より時計回りに江幡、谷田部、小林

より早く、より価値のあるプロダクトを生み出すために。デザインスプリントを実施

高橋:今回、Google社独自のプログラム「デザインスプリント」を実施されたと聞きました。そもそもこの「デザインスプリント」とはどういったものなのですか?

江幡:デザインスプリントというのは、開発、企画、デザイナー、データアナリストなど、さまざまなステークホルダーを巻き込み、短期集中型でプロダクトを開発・改善する手法です。今回のデザインスプリントでは、各部署からエンジニア2名、デザイナー3名、データアナリスト1名、企画4名が参加し、計3日間で「バイトルの仕事一覧ページを改善する」というテーマのもと、課題出し、プロトタイプの作成、ユーザーヒアリング、プロトタイプの改善までを行いました。

高橋:3日間の内訳はどうなっているのですか?

小林:1日目、まずはスプリントで課題や施策を考えるにあたり観点の抜け漏れが起こらないように、「ライトニングトーク」と呼ばれる短いプレゼンテーションを受けました。「ビジネス視点」「マーケティング視点」「ユーザー視点」「テクノロジー視点」「検索視点」「UI/UX視点」における要望、課題を、ディップの各組織長からプレゼンしてもらいました。

江幡:そのライトニングトークの中に、実現すべきことや課題、大事にすべき視点などが埋もれているので、まずは一人一人で解決すべき課題をオンライン上の付箋に書き出していきました。その際に大事になるのが「How might we~?」という考え方です。「●●ができていない」「●●が問題」といったマイナス面に着目するのではなく、「どうすれば私たちは~できそうか?」とポジティブな問いを立てることにより、具体的な解決策を探っていく手法です。これらをまずは個人で、自分の所属している組織や役割に関係なく、ひたすら出していきました。

参加メンバーのアイデアを出したボード

小林:全員が課題を出しきったら、1人10個ずつくらいを選抜して、全員でグルーピングを行いました。その後、各々が再度課題設定を行い、複数の施策をスケッチした後、一番良いと思われる施策を具体化。今回はデザイナーが3名の参加だったので、その中から全員で投票を行い3つの案に絞り、3つのプロダクトをつくることにしました。

江幡:2日目は丸々プロトタイプの作成にあてました。プロトタイプの作成はデザイナーが中心となり進めましたが、他のメンバーは競合の調査、意見出しなどを行い、チームで助け合いながら作成を進めました。

小林:3日目は、3名のユーザーにプロトタイプを使っていただき、反応や声を聞きながら、その内容をもとに改善案までまとめるという流れですね。

高橋:なるほど、なかなか濃厚な3日間ですね。そもそも、ディップがデザインスプリントを行うことになった背景は?

江幡:バイトルって、実は週に数回レベルで新施策をテストしたり、リリースするような動きを取っているんです。他社の方からも「そんなにやってるんですか?」と驚かれるくらい、たくさんリリースしているんですよ。だから、それだけたくさんやっているという自負はあります。

一方で、そんな中でも、企画から開発までが長期化してしまって、その結果、ユーザーに価値を届けるのが遅くなってしまっていたものもあります。すべての施策をスピーディーに回せているわけではなくて、取りこぼしが起きているという課題がありました。

だからこそ、「ユーザーに価値を届けるスピードをより早めるにはどうすればいいか」の一環として、今回のデザインスプリントを実施したというのが背景になります。

同じゴールを目指し、職種・役割関係なく議論することの大切さ

高橋:「短期間で一丸となって開発・改善を行う」というやり方は、今までの開発手法と異なる部分もあったと思うのですが、デザインスプリントをやってみて感想はいかがですか?

小林:これまでは企画側である程度開発したい機能、要望を固めた上で、開発のみなさんに相談するというやり方を取ることが多かったのですが、今回デザインスプリントで一緒にライトニングトークを受け、同じ目的、課題感を持ちながら議論し、施策を決めていくという経験が積めたので、とても価値があったなと思います。企画・開発が一体となって、より本質的なところまで議論することができました。

谷田部:コミュニケーションの点でも、とても学びがありました。今までだと「企画」と「開発」の壁を勝手に感じてしまい、「これを実現するにはすごく工数がかかってしまうんじゃないか」というバイアスを自分でかけている部分があり、手が止まってしまうこともありました。でも今回、開発の方と一緒に考えていく上で、「ここは工数がかかりそうだな」と悩むような部分でも、「そこはそんなに難しくないよ」「こういう形で進めていけるよ」とリアルタイムでレビューいただけて。「すぐ相談できる」環境というのが、もの作りにおいては何よりもいちばん大事なんだと、あらためて気づけました。今までは何日もかかって、さらに相談するタイミングを間違えて、また最初からつくり直す、みたいなことも起こっていたので…。今回のデザインスプリントのようなコミュニケーションを、今後は普段のプロジェクトでも自ら進んで行っていきたいなと思います。

高橋:たしかに、企画と開発は組織図の上では別の組織なので、「気軽に相談」というのもなかなか難しかったのかもしれないですね。でも最近では組織をまたぐ「ユニット制」も導入されたと聞きました。

小林:今期から、企画・開発組織を横断した「ユニット制」を導入しています。これまでは組織が縦割りになっていて、グロースハックチーム、SEOチーム、コンテンツチーム、デザイナーチームがそれぞれ分かれていたのですが、今期からは「バイトル編集ユニット」「はたらこ編集ユニット」などの形でサービスごとのユニットをつくって、SEOのバイトル担当、グロースハックのバイトル担当などプロフェッショナルが集まったチームをつくり、よりコミュニケーションを密に取れる状態にしています。

江幡:僕は現在バイトルのPM(プロジェクトマネジャー)を担当していますが、以前は『ナースではたらこ』というサイトを担当していました。『ナースではたらこ』を担当していた際は、企画も開発も一つのチームであるということを一人ひとりが意識して仕事に取り組めるように、業務上の改善KPTを一緒に行うなどの取り組みをしていました。でも、バイトルに携わるようになってからは、なかなかその辺りの動きができていないと感じていました。

ただ、2020年11月に新しく入られた企画部門のTOPである宮内さんも、同じ時期にCTOとして入られた豊濱さんも、「企画と開発が一体となってモノづくりしていくべき」という方なので、今期から導入されたユニット制も、その一環だと思っています。だから「組織の壁」のようなものは、どんどんなくなってきていますね。

ユーザーの声を聞く。反応を見る。そして素早く改善する

高橋:デザインスプリントでは「作成したプロトタイプを実際にユーザーに使ってもらい、反応を見る、聞く」というプロセスも大事になってきますが、江幡さんはユーザーインタビューに同席されたのは初めてだと伺いました。体験してみていかがでしたか?

江幡:こちらとしては、いろいろ意図してデザイン、機能を考えたつもりでも、いざユーザーに使ってもらうとその機能をまったく見てもらえなかったり、気づいてもらえなかったり、ということが往々にしてありました。それは、ちょっとショックというか(笑)、発見でしたね。

やはりユーザーはシンプルに「自分にピッタリな仕事」を探しに来ているので、サービスを提供する側としていろいろ工夫しようとしても、その目的に沿わないとなかなか気づいてもらえないんだなというのは、まざまざと感じましたね。

実際のユーザーヒアリング時の様子(ユーザー様より掲載許可をいただいています)

小林:企画としても、良かれと思ってたくさん機能を盛り込みたくなるのですが、人間というのはやはり何かひとつのことにしか集中できないので、どういう機能をどういうタイミングでサジェストするか、どういうフローの中で見せるかなどは、かなり気を配らないと、せっかく価値ある機能でもユーザーには気づいてもらえないんだなと実感しました。

高橋:たしかに、サービスを提供する側と、される側の温度差のようなものはあるかもしれないですね。

小林:あとは、あらためて「スピード感」がすごく大事だなとも思いました。昨日つくったものを今日出すとか、今日つくったものを明日出すというスピード感で動かないと、「きっとユーザーはこうかな」と想定して何ヵ月かかけてつくっても、実際にそうじゃなければすべて無駄になってしまいます。まずは1回世に出して反応を見ないと分からないというのを実感しました。

高橋:ユーザーの反応を見て、今後の企画や開発ではこんなことに気をつけようという学びなどはありましたか?

谷田部:気をつけようというよりは、もっとユーザーの声を聞かなきゃいけないというのは、ひしひしと感じましたね。定性的にユーザーの生の声を聞いて、反応を見て、どういうところでどういう困りごとを抱えているかをもっとデザイナーがキャッチアップしていかないと、いいプロダクトは絶対につくれないんだなと感じました。

江幡:ちょっと小林さんの話に乗っかるような形になってしまうのですが、やはり複雑に考えられたものがいいというわけではないと思うので、今後もし企画側からそういう複雑なものが出てきた場合、開発視点で「もっとこういう風にしたほうがライトにできるし、工数も少なくなるよ」というやりとりをしながら、最適なものをつくっていくことが大事なのかなと思います。

あとは今回スプリントで3案出しましたが、例えばその3案が、あまりユーザーに刺さらないなと思ったら、早めにそれを「やらない」と判断する必要もあるかなと思います。ある意味「やらない勇気」というのもスピードを上げるためにはとても大切で。せっかくつくったプロトタイプを捨てるのは心苦しい部分もあるのですが、目的は「より価値あるものをユーザーに届ける」ことなので、各々が同じ認識を持って、スピーディーに回していくことが大事かなと思います。

谷田部:すごく大事だと思います。身に染みました。

デザインスプリントの“いいとこどり”をして、ディップに最適な開発体制を整えていく

高橋:今回のデザインスプリントをふまえ、「今後このような取り組みをしていく」などはすでに決まっていますか?

江幡:このデザインスプリントを、毎回3日から5日かけてみんなの時間を拘束して行うことは難しいと思っているので、いわゆるいいとこ取りをして、自分たちに最適なやり方を模索する必要があるのかなと思います。具体的に何の、どういう案件でそれができるかについては、今ここにいるメンバーも含めてみんなで話し合いながら、「次の案件でここだけ取り入れてやってみよう」といった感じで、まずは部分的に取り入れていければなと思います。

小林:このデザインスプリントに限らず、先ほどお話したように各組織がつながる「ユニット制」ができたので、「開発だから」「企画だから」という壁はなくなってきたなという印象がありますね。

谷田部宮内さん豊濱さんが入られる前は、いい意味ですごくいろんなことに慎重な雰囲気があったように感じていて。それはとても大事なことなのですが、お二人が入ってきてくださって、その慎重さも残しつつ、「いいじゃん、ユーザーに聞いてみようよ」というライトな空気が入ってきているように感じます。「ユーザーに何でも聞こうよ」って、デザインワークとしてもすごく正しいと思うので、背中を押してもらえる環境になったなと思いますね。

江幡:開発のほうも、宮内さんと豊濱さんが入られて、「新しいことはどんどんチャレンジして、どんどんやっていいよ」という空気は感じますね。本当に、いちいちお伺いを立てなくても、「こういうことをやりたいのでこうやります」と報告だけしてくれ、みたいな。そういった動き出しやすさは、とても出てきたなと思います。

小林:宮内さんがよくおっしゃることなんですが、「企画側はこう」だとか、「デザイナー側は」「開発側は」ではなく、「ユーザー側に立て」が大事だなと思います。これまでは少し組織の壁のようなものを感じることもありましたが、そうではなくて、「ユーザーにとってどうなのか」をいちばんの起点にして、プロダクト開発を進めていきたいなと思います。

(参考記事)ユーザー体験のため部門を越えた共通指標を設定ーー「バイトル」が月間応募数 8% 改善

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江幡 卓朗

商品開発本部 システム統括部 システム開発部 プロジェクトマネジメント課 マネジャー 2010年中途入社。バイトルのPC、SP(WEB)開発のプロジェクトマネジメントを担当。「部署にとらわれず、カスタマーにとって最高のサービスをつくる」がモットー。

谷田部 成美

商品開発本部 メディアプロデュース統括部 グロースハック部 プロダクトデザイン課 2017年新卒入社。デザイナー。バイトル(WEB/APP)のUI変更など、プロダクトのデザインを担当。デザインを通して「バイトルを使ってよかった!」とひとりでも多くの人に感じてもらうのが目標。

小林 礼実

商品開発本部 メディアプロデュース統括部 グロースハック部 グロースハック課 2018年新卒入社。「はたらこねっと」のグロースハック担当などを経て、現在はバイトルのグロースハック(企画職)を担当。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。