【対談】CTOが企画部門のトップに聞く。仕事で大切にしていることは何ですか?

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宮内 俊樹
執行役員/商品開発本部 メディアプロデュース統括部長/ディップ総合研究所 所長/システム統括部長 ▼詳細

豊濱 吉庸
CTO(最高技術責任者) ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

企画部門と開発部門は距離を詰めれば詰めるほどいいものができる」と語る、メディアプロデュース統括部長の宮内。そんな宮内はどのような考えを持ち、仕事をする上で何を大切にしているのか。企画部門と開発部門で相互理解を深めるべく、CTO(最高技術責任者)の豊濱をモデレーターに、開発部門のエンジニアも多数参加し、対談形式のイベントを行った。

大切にしているのは、スピード

司会:本日の企画はですね、宮内さんがメディアプロデュース部門(以下「MP」)の統括部長としてディップにジョインされてから早数ヵ月が経ち、今後、MPとシステム開発部が協同して仕事を進めていく中で、宮内さんが使う言葉だったり、言い回しが独り歩きしないように、どういった意図をもって使われているのか、またどのようなことを大切にして仕事をされているのかなどをお伺いできればと思っています。具体的には宮内さんが大事にされている「5つの価値観」について説明いただいて、我らがボスであるCTOの豊濱さんと対談形式にてお話いただければと思います。

宮内:MPの宮内と申します。まだ新入社員で(笑)、11月に入社しました。豊濱さんも同じ時期に入社されたので、同期ということになります。

僕はもともと編集者としての職歴が長くて、15年くらいやっていました。その後2006年にITサービス企業に入社して、社会貢献のサービスの責任者をやったり、大阪の開発本部の立ち上げをやったり、天気のアプリを成功させたりして、その後はわりとプロジェクト型でいろいろな案件に携わってきました。豊濱さんとはその会社で2012年くらいに一緒に仕事をしていたことがあって、当時カンパニーのCTOが豊濱さんでした。豊濱さんはとにかくモノをつくることにこだわっているなという印象です。ディップでは、とにかく「プロダクトをいいものにしていこう」をミッションにしています。よろしくお願いします。

宮内:COOとして2020年7月にジョインされた志立さんは実は僕の元上司なのですが、「入社したらまずは90日間くらいじっくり観察するといいよね」とアドバイスいただいて。実際にそれくらいの期間観察をしてみて、いろいろな課題が見えてきて、まず取り組もうと思ったのが自分の考え、価値観の言語化でした。

まず1つ目が、「大切にしているのは、スピード」です。僕は開発するときはとにかくスピード重視で、速い(=Fast)が大事なのはもちろん、それをやるためには組織がフラット(=Flat)で、かつ楽しく(=Fun)つくることが大事だと思っています。だいたい楽しくつくってないと遅くなるんですよね。なので楽しくてフラットで速ければ絶対にいいものができるというのが僕の信条です。豊濱さんはどうですか?

豊濱:僕も以前勤めていた会社ではプロダクトファーストとかユーザーファーストという考え方を身に染み込まされているので、このあたりの話はとてもよく分かります。

ひとつ聞いてみたいのが、スピードはもちろん大事だと思うのですが、やっぱり品質も同じくらい大事だと思っていて。そのあたりのバランスはどのように考えられていますか?

宮内スピードと品質は両立すると思っています。スピード重視だから悪いものができるというのは間違っていて、スピードと品質を両立させることにみんなが思いを馳せれば、必ず実現すると思っています。

ひとつ事例を挙げると、僕が前職で天気のアプリを開発したときに、なかなか品質が上がらなくて、いったん開発したものを捨てて、いちからやり直したことがあったんですね。そのときは品質への意識はすごくあったのですが、スピードへの意識がなくて。だからどうしても「なんとなくつくっている」感じがあって、夢中でつくっている感じではなかった。だから「確信に変わるまで徹底的にやれ」と言ったら、スピードも品質も高くなったんですよ。

スピードが遅いときって、案外見えないコストを払っているんですよね、コミュニケーションコストとか。タスク割りして来週までにお願いしますというのも、実は夢中になってやれば1日で終わることを1週間かけていたりするじゃないですか。なので自発的に、主体的にやりたいという気持ちになれば、品質もスピードも絶対に両立するというのが僕の考え方ですね。

豊濱:要は品質とスピードが両立しないときには、どこか他に課題があるんじゃないかということですよね。

宮内:そうですね。正にそうだと思います。

豊濱:あと、Funというのも僕はすごく大事だと思っているのですが、宮内さんが仕事をしているときに一番楽しく感じるのはどんな瞬間ですか?

宮内:一番は、一つひとつのミーティングでも超うまくさばけたときは「勝った」と思うタイプなんですよね。失敗したら負けたと思うんですけど(笑)毎日その繰り返しで、勝ちが増えれば絶対にいいものができるはずという思いでやっています。だから失敗したときは何がいけなかったんだろうとひたすら考えるようにしていますね。

司会:フラットはどのような場面で意識しますか?

宮内:よく「上位レイヤー」とか「上層部とか」言うじゃないですか。あれってホントに良くない言葉だと思っていて、禁止にしたいくらいなんですけど(笑)同じ人間で、上位も下位もないじゃないですか。それに、同じ人間同士で意見を言えなくなったら、イノベーションは起きないし、いいものは絶対につくれないと思うんです。

もちろん、上が厳しく言うことで下が何も言えなくなることもあるのですが、下が勝手に忖度するのはもったいないと思っています。だからエスカレーター状に順番に承認フローが上がっていくとかもったいなくて。もっとフラットに、Slackで「こんなプロトタイプつくってるんですけどどうですかね?」と言われたら、めちゃめちゃ速くレスしますし。それくらいフラットな組織のほうがいいものができると思っています。

豊濱:僕も「上程」という言葉があまり好きじゃなくて。言葉ひとつかもしれないですけど、そういう言葉を使っていると無意識で「上下関係」を意識してしまうので、変えていきたいですね。

司会:とはいえ、メンバーからすると豊濱さんや宮内さんってすごく「上の方」じゃないですか。気持ち的には「何でも気軽に言ってほしい」みたいな感じなんでしょうか?

宮内:スケジュール的にはぜんぜん気軽じゃない状況なんですけど(笑)でもそれをそのまま言うのはマネジメントする立場としては失格じゃないですか。だから「どんなときでも、いつでもウェルカム」と言っていますね。たとえ3分しかない状況でも、ウェルカムです。

課題の本質を大事にする

宮内:2つ目に、「課題の本質を大事にする」を挙げています。さっきと近い話なのですが、何を承認してほしいのか、5W1Hで言える内容にまとまっていれば、メールでもSlackでも意思決定はできるんですよね。なのでドキュメントの作成とかミーティングとかそんなにかしこまる必要はなくて、だいたいの概要やアウトラインができたらその状態で相談してほしいと思っています。

豊濱:ここは1番と同じかもしれないですね。

宮内:よく言うのは課題発見と課題解決という言い方ですが、だいたい正しく課題を発見できていればほぼ解決するんですよね。だからうまくいかないときは、課題を正しく発見できていないケースが案外多いと思います。

豊濱:これは僕自身が聞いてみたいことなんですけど、メンバーはだいたい課題を特定して持ってくることが多いじゃないですか。宮内さんとしては、「課題が何か分からないけど、なんかこれいけてない気がするんです」みたいなふわっとした状態の相談でもOKですか?

宮内:OKですね。それを解き明かしていくのが好きです。ただその課題の本質を、できる限り自分で構造化して順番を付けてくれたらよりスピードが速くなるので、それはみなさんにスキルを付けてもらうといいかなと思います。

『1分で話せ』という本がありますが、本質にたどりつくと絶対に1分で話せるんですよ。何に困っているとか、何を解き明かしたいとか。だからなるべくそこまで深められるように頑張ってほしいとは思っています。

豊濱:スタートアップがやっているエレベーターピッチもまさにそれですよね。

宮内:よくサービスの上のほうに書いてあるタグラインってあるじゃないですか。何と何をマッチングさせて何を解決するサービスですよ、とか。あれが書けなかったらだいたいサービスとしては失敗するわけです。ユーザーが分かる形で価値を定義できていないということなので。だからそういった本質をちゃんと考えるようにしましょうとメッセージしています。

参加者:何が本質かは人によって違う気もするのですが、「これが本質だ」と分かるものは?

宮内:僕もそれは長い間ずっと難しいなと思っているのですが、先日参加したセミナーで「課題って何ですかね」という質問に対して、講師の方が「何にケリをつけたいかだ」とおっしゃっていて。たとえばユーザーの滞在時間を延ばしたいというときに、ホントに滞在時間を延ばしたいだけなのか。それとも滞在時間が延びるということはユーザーの満足度が上がっているということだから、最終的には「エンゲージメントを高めたい」ということなのか。「何にケリをつけたいのか」をハッキリさせるのがひとつのバロメーターだと思っています。

権限移譲

宮内:3つ目は「権限移譲」です。シンプルに言えば、「僕の承認を取るくらいだったら、ユーザーに聞いてくれ」と。これは10年前だとそうではなかったのかもしれませんが、今はPCのサービスよりスマートフォンのサービスが主流だし、スマートフォンのサービスってホントにサイクルが速くて、PDCAを回してグロースしてかつユーザーのニーズにも合わせないとぜんぜん使われなくなりますよね。そう考えると、僕が正しいとは言い切れないんですよ。

僕も、自分が絶対に正しいということだけで仕事をしていません。誰が正しいかと言えばユーザーが正しいので。場面よっては、「僕は間違っている」と思えないと非常に危険なんですね。もちろん自分なりに蓄積した知見はあるので仕事上のディスカッションは行いますが、究極的には間違えることがあると思っているし、そう思っているマネジャーのほうがいいマネジャーだと思います。

だから基本的には現場で、ユーザーに近い人たちになるべく権限移譲していきたい。かつ、僕に無駄なミーティングをセットする時間があったら、1人でも多くのユーザーに話を聞いて、ひとつでも多くのインサイトをとらえたほうが絶対に正しいと思っています。そういう意味で自戒も込めてこのようなメッセージにしています。

豊濱:これはすごく共感しますね。とくに『バイトル』などのディップのサービスの場合、ユーザーはすごく若い人が多いですから、たぶん僕らみたいな世代より、10代や20代のほうが正解を知っているんじゃないかと思うんですよね。ちなみにこれまで宮内さんがサービスを担当されていたときは、どのようにユーザーヒアリングをしていたんですか?

宮内:僕の場合、たまたま娘がユーザー層に近かったので、娘に聞くのが定番でした。たとえば子ども向けのサービスを担当していたときは、娘が小学校4年生で、天気のアプリをやっていたときは、大学生で。とにかく「ダメなところを教えてほしい」と聞いていました。

よく「ユーザーインタビューじゃないと調査できない」と言う方もいるのですが、たくさんのインサイトを聞くのが大事なので。インタビューだけじゃなく、一人ひとりの定性的な意見を興味を持って聞いてみるアプローチが大事だと思っています。当時、天気アプリを担当していたときは大阪の梅田のビルで働いていたのですが、雨が降ってくるとみんながどういう挙動をしているのか交差点まで降りて見に行ったり、スマホを使っている人に何をどう使っているのかヒアリングしたりしていましたね。

豊濱:下手したらナンパと勘違いされますね(笑)

宮内:関西の人は優しいので大丈夫でした(笑)

そのときに思ったのが、雨になるとみんな傘をさすのですが、スマホを右手で持っている人と左手で持っている人でバラバラだったんですよ。そうすると大きい端末でも左右どちらからでも押せないとダメだなと思い、重要な機能について真ん中に配置するようにしました。

司会:「インサイト」というのは?

宮内:ユーザーがどう感じているか、どう使いたいかという内側の本音のことです。ユーザーのインサイトって、言語化されていない行動なので、ユーザーもけっこうウソをつくんですよね。「これを使いたいか?」と聞かれると、つい「○」をする。5点満点だと、4点くらいをつける。実際は2点くらいなのに(笑)

だから僕はユーザーのインサイトを「信じながら疑う」の繰り返しでモノゴトを進めていました。たとえば5点中4点の人がいくら多くても、5点の人が1人でもいなかったらアプリは出さないとか。すごく熱中して使ってくれる人がいなければ、プロトタイプから正式版をリリースしたとしてもコアになる人がいないので、絶対に広がらない。そういうのがひとつの例ですね。

司会:たとえば、カラーを赤にするか、青にするかみたいな絶対的な答えがないとき、つい自分の好みや判断を入れてしまう気がするのですが、そのような場合はどのようにしていますか?

宮内:一番気をつけなきゃいけないのは、自分のいいようにデータを解釈しないことですよね。まずはそれを意識するのがユーザーファーストの第一歩。最終的に赤か青かという場合だと、自分がどれだけユーザーファーストな状態にあるかを客観視しながら決めていくみたいな感じですね。もう1人の自分が見ているのだとしたらきっと大丈夫です。

会話ではなく、対話を重視

宮内:4つ目は「会話ではなく、対話を重視」です。基本的に権限移譲をするので、対話をしないとダメだと思っていて。会話や報告よりも、ディスカッションがしたいんです。対話ができるようなフラットな関係性だと、心理的安全性が高くて、心理的安全性が高くなるということは、組織が多様になります。そして多様性があるということは、イノベーションが生まれる。1つのタイプの人間しかいない組織は変化に弱いので、多様な意見が出てくるような場をつくりたいという意味で、このように書いています。

豊濱:僕は「それ知らないの?」みたいな会話をされるとすごくやりづらいなと思っていて。チャットでも「知りませんでした」みたいな話が出てくると思うのですが、僕個人としては知らないものはそこで知ればいいと思うし、ぜんぜん問題はないと思っています。

宮内:知らないってことは伸びしろしかないですからね。めちゃめちゃいいことです。

参加者:中には、ディスカッション、対話を放棄する人もいるかもしれないですけど、そのような場合はどのようにされていますか?

宮内:僕はもともとファシリテーションが得意じゃなかったんですよ。でも権限委譲して対話が大事と言うからには、どんな人とでもディスカッションできるようにならなきゃいけないと思って、前職で大阪にいた頃に毎晩飲み屋に行って隣の知らない人と話すというのをやっていました。それで、2ヵ月くらいやっていたらめちゃめちゃ話がうまくなって。東京に行って役員にプレゼンしたらすごくうまくなったね、どうやったのと聞かれたので、「飲み屋で鍛えました」と言ったらウケたんですけど(笑)

ちょっとした工夫、鍛錬をすれば、絶対に誰とでもディスカッションできます。たとえばディスカッションを放棄しているように見える人も、「しゃべれる」というタイミングがあれば絶対に話してくれます。ちょっと目が上を向いたり、こっちを見ていたりする。それをいかに見逃さずに、ファシリテートできるか。そういった細かな積み重ねで話しやすい場はつくれるはずなので、「ディスカッションできないなんてことはないですよ」というのが僕の答えですかね。

参加者:「対話」と「会話」の違いは?

宮内:単に話しているのが会話で、関係がフラットで、かつ何かイシューがあって、それについてディスカッションするのが対話ですかね。「上司・部下」だと会話で、「同じ人間としてディスカッションする」のが対話だと思っています。

参加者:「心理的安全性」について、最近言葉が有名になる一方で、「仲が良ければいい」とか、「言いたいことを言い合う」とか、本来の意味が誤解されがちなこともあると思うのですが、宮内さんの考える心理的安全性とは?

宮内:以前、チリで落盤事故がありましたよね。たくさんの人が炭鉱に取り残され、どう助け出すかを議論するためにプロジェクトチームが組まれたのですが、あれが心理的安全性のいい事例だと思います。多種多様な人が集まって、何をどうすればいいのかを話し合う。でも誰も経験したことがないから、正解は分からない。その上で、正解がないことを前提としながら、いろいろな人が意見を言えるようにし、結果、最適なやり方を見つけて挑戦して全員を救い出せた。心理的安全性はGoogleの研究で有名になりましたが、「先が読めない状態で何かをやる」ときに、とても大事なコンディションだと解釈しています。

迷ったらワイルドな方を選べ

宮内:最後は「迷ったらワイルドな方を選べ」です。最初MPで使ったらきょとんとされて、意味が分からなかったらしいのですが(笑)

これは現在東京都の副知事をやられている宮坂学さんがおっしゃっていたことで、最初は僕も何のことだか分からなかったのですが、やってみるとよく分かります。つまり「挑戦しろ」みたいなことなのですが、迷ったときには消極的な方ではなく、積極的な方をやったほうがうまくいく。

ワイルドなことをやっていると失敗も起きますが、失敗は許容する。失敗するより挑戦しないほうがロスが大きいので、どちらがワイルドかを自分で考えて選べるようになるために、この言葉を頻繁に使うようにしています。

司会:ワイルドって、「挑戦的かつ失敗を恐れない」という意味だと思うのですが、一方で日本企業だとなかなか受け入れられない気がしていて。どのあたりに原因があると思われますか?

宮内:イノベーションに対する考え方を深める必要があると感じています。基本的に、挑戦していない人はうまくいっていないんですよね。

たとえばGoogleも創業時に100社くらいのVC(ベンチャーキャピタル)に断られているわけですが、僕がもしVCの立場だったら選ばなかった方になりたくない。できればGoogleを発見した俺になりたい(笑)だからワイルドな方でもちゃんと選べるようになっておきたいんです。

司会:一方で、「挑戦」と「無謀」は紙一重だとも思うのですが、そのあたりはどのようにお考えですか?

宮内:無謀というのは、いろいろな情報を集められるのに集めていない状態。こういう時代なので、市場がどれくらい大きいか、ユーザーがどれくらいいそうか、競合他社はどうか、などはいくらでも集められます。そういった調べたら分かることは調べたほうがいい。でもやってみないことには、成功するかどうかは絶対に分からない。「人事を尽くして天命を待つ」のが挑戦で、何もせずにチャレンジするのが無謀なのではないでしょうか。

一番良くないのが、ずっとドキュメントばかりをつくって、ミーティングをして、ダメ出しをくらって、何度もやり直して…という状態。そのやり方だと、確実にスピードが落ちます。だからやっぱり「スピードを上げないと勝てない」とみんなが理解していることが大事なのだと思います。

司会:とはいえ、未知なこと、チャレンジングなことよりも、無意識に安定を選んでしまいがちな気もするのですが…それはどうすればクリアできるんでしょうか。

宮内:もちろんチャレンジばかりすればいいというわけではないんです。でも、日本人って遺伝子的にセロトニン・トランスポーターと呼ばれる神経伝達物質が少ないと言われていて。つまり世界でいちばん不安を感じやすいのが日本人らしいんです。ということは、遺伝子レベルでチャレンジを恐れる傾向にあるわけだから、意識して「チャレンジの比率を多め」にしないと絶対に挑戦できない。それが最近の僕の考えです。

豊濱:ちなみに、宮内さんがMPに期待していることや、デザイナー、エンジニアに期待していることはありますか?

宮内:MPについては、みんなスキルが高いし、優秀なんだけど、ちょっと真面目にステップを踏みすぎる傾向にあるかなと。不真面目にやれとは言わないけれど、「いかに速くやれるかが大切」「速くやることが市場の優位性になる」ことを自覚し、そこにどれだけ貪欲になれるかが大事だと思っています。

システム開発部のほうは、みんな日々プログラミングをしてモノをつくっているし、かつみんなプライベートでもスマホでサービスを触っていると思うのですが、いざ会社の仕事となるとそういったユーザー体験は忘れがちで、ちょっと気になったことがあっても意外と口に出さずにスルーしてしまうこともあるかと思います。「なんか使いにくいな」でもいいのですが、もっと自分自身の品質に関する感覚をコトバにしていこうというのは感じますね。僕はいまだに上位のランキングのアプリはすべて落として使っているし、若い人が使っているサービスは若い人に感想を聞きに行ったりしています。

参加者:やはりアプリとウェブの違いなどはありますか?

宮内アプリは絶対にユーザーの期待を裏切ってはいけないんです。たとえば、「『こういう風に挙動するだろう』と思って触ってみたら、違った挙動になった」では二度と使ってもらえない。それくらいユーザビリティが大事だと思うし、ロイヤリティが高いサービスだと思っています。

司会:少し話が変わりますが、宮内さんはディップでの勤務以外にも、スタートアップでの非常勤や、大学での客員教授、音楽ライターなど幅広いことに取り組まれていますが、その源泉は何なんでしょう?

宮内:会社の仕事と思って取り組むと、なかなか夢中になれないんですよね。基本的に、僕は会社の仕事と思ってやっていません。

仕事って、これまでは会社員は会社の仕事をやって給料をもらっていましたが、これからはみんな複数の企業で副業をやったりして、自分のキャリアを考えて、今のままで自分の望むキャリアが積めたらそのまま働けばいいし、無理だと思ったら外に行けばいいと思うんです。もちろん、また気になったら戻ってくるのもありです。

大事なのは、ディップにいる間に夢中で仕事をして、その人がどこに行っても恥ずかしくないスキルをマネジャーが付けさせてあげることだと思います。仕事って、その人の人生、飯の種をつくっているようなものですからね。そうじゃなく、単に「与えられた仕事」だと思って取り組んでいると、なかなか夢中になれない。

最近よく言うのが、「会社人である前に社会人になろう」ということ。これまでは会社のために働いて会社から給料をもらうのが当たり前だったけれど、社会人って社会を良くするために存在しているので、ディップにいながら社会人でもある状態ってどういう状態なのかをみんなにも考えてほしいなと思います。ディップは企業理念で私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となるを掲げているので、こんなチャンスはなかなかありません。きっと、もっといい仕事ができるんじゃないかと思います。

豊濱:素晴らしい締めをいただいた感じがしますね。本日はありがとうございました!

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宮内 俊樹

執行役員/商品開発本部 メディアプロデュース統括部長/ディップ総合研究所 所長/システム統括部長 2020年11月入社。前職の大手ITサービス企業では社会貢献サービスの全体統括、大阪開発室本部長、天気アプリなどを担当。現在は「バイトル」「はたらこねっと」「バイトルNEXT」3媒体の編集長(メディアプロデュース統括部長)、ディップ総合研究所の所長、システム統括部長を兼務。

豊濱 吉庸

CTO(最高技術責任者) 2020年11月入社。大手ITサービス企業ではコンテンツの設計・開発、開発リーダー、テクニカルディレクター、CTO-Boardのキャプテンなどを担当。その後は、さまざまな企業にてシステムアーキテクチャを担当。ディップ初のCTOとしてジョイン。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。