コトバにするだけで 泣いてくれたお客さんがいる。 それが僕の原点。

営業はダメでした…(笑)得意を活かすために転職した「制作」という道。

僕のキャリアは「営業職」からスタートしています。80人程度の人材系のベンチャーで、中小企業の社長を相手にヘッドハンティングの営業をしていました。でも、腹落ちしてない営業トークをうまく話せなかったり、思い込みが強かったりなど、成果は出ず。そんなとき、「佐々木は社内でも貴重な文章力が高い人材だから、活かす仕事をさせるように」と社長から僕の上司にメールが届いたんですね。

そこからはクライアントへのプレゼン資料や社内研修ツールの作成がメインの仕事になって、気付けば”ひとり制作部”と呼ばれるようになっていました。そこからは「違う自分になるのはムリなんだ。自分の本音でできる仕事をしよう」と考えるようになりました。

そこで制作を学べる仕事をしようと、ブックデザインという制作会社(2006年、ディップが株式を取得しグループ化。2008年、吸収合併)に転職することを決めました。

コトバにするだけで泣いてくれたお客さんがいる。それが僕のクリエイティブの原点。

――入社当時の仕事は?
「ジョブエンジン(ディップが運営していた中途採用ページの検索サイト。現在は終了)」の制作ディレクターをしていました。

――うまくいきましたか?
ちゃんとつまづきましたよ(笑)。ひとつの企業に3時間ほど取材をして、月に5本ほど「ジョブエンジン」に掲載する中途採用ページをつくっていましたが、専門職で仕事内容がイメージしきれないまま取材を終えたり、ユーザーに伝わりづらい言葉を使ってライティングしてしまったり。

たとえばセキュリティの会社で「堅牢性」という言葉を使ったら、当時の上司「堅牢性ってなんやねん。伝わらん」とかなり怒られました(笑)。広告は基本読まれないものだから、0.1秒でも考えさせたらダメ。そういう制作の基本をイチから学びましたね。

――思い出深い仕事はありますか?
何年もお付き合いがあったのは、某居酒屋チェーンですね。「ジョブエンジン」が終わってからもバイトルの担当として何年か関わらせてもらいました。当時そのクライアントは、世間からの評判があまりよくなかった。でも制作担当として、数年間で20~30人の人に会い、何cmもあるような資料をいくつも読み込んでいくうちに、自分自身が誤解していたということに気づいたんですよね。「すごくいい会社じゃん!」って。

そしてある時、採用担当者からアルバイト採用で伝えるべきことに悩んでいる、という話を伺いました。「うちの企業メッセージが伝わらないのはわかってる。俺らの世代はあれを見て『何言ってんの?俺らは俺らがいいと思う店をつくるよ』と思って仕事をしてきた。でもそれで結局行きついたのはこのメッセージだったんだよ」と。そのままで伝わらないことは分かっている、でもそれを伝えるにはどうすればいいか、というわけです。

それから取材を繰り返し、コピー案のなかでふと目にとまったものをキーメッセージとして携えて、何回目かの打合せ。「こういうことかなと思うんですが…」とその方に見せると、急に嗚咽を始めて…最初は何が起きてるかわかりませんでした。40過ぎのおっさんが、目の前で急に目頭を押さえて肩をふるわせて…。「そうです!僕はずっとこれが言いたかったんです!」って。

たとえ自分の会社だったとしても、その課題や魅力に気づいていないお客さんはたくさんいます。

だからこそ、それを発見し、代弁してくれる人を切に求めている。コトバの力、クリエイティブの力って、そういうところにあるんだと思います。

今は、数値や効果がより問われるようになった。でも“クリエイティブ”の力は絶対に必要です。

――最近はクリエイティブにこだわるのではなく条件でマッチングさせることも多いじゃないですか。そのあたりはいかがですか。
たしかに、僕が入った頃とくらべると、いろいろと時代は変わっています。求人に限らず、広告のWeb・デジタル化が進み、効果(アクセス数、CTR、CVR)がよりシビアに問われるようになりました。
「なぜそのターゲットを狙うのか」
「なぜその魅力を伝えるのか」
「その広告をのせるとどういう効果が得られるのか」
という数値的な根拠も求められます。端的に言えば、広告を買ってもらうのが難しい時代になってきた。そこで数年前から導入しはじめたのが、「ダイレクトマーケティング」の考え方です。

それまでの制作は、どちらかと言うとアカウントプランニングの制作手法一辺倒でやっていました。企業の特徴をつかみ、ターゲットを定め、そのターゲットの気持ち(インサイト)を想像し、心が動く表現を考える。それに対するのがダイレクトマーケティングで、具体的には「『反応』がすべて」と考えます。掲載エリア、ターゲット、魅力因子…いろんな要素においてパターンを試し、その結果(数値)をもとにさらに次のパターンを考え、PDCAをまわし、効果を最適化していく。2017年の後半から営業部の効果対策で取り入れたのですが、今までに手を出していなかった分野だからか、一定の成果を上げることができました。

――そうなると、制作の仕事は反応の最適化、ダイレクトマーケティング的な手法に傾倒していくのでしょうか?
そんなことはありません。前例(効果)をもとにロジックを組み立てていくダイレクトマーケティングは、顕在層の応募を獲得するのには向いていますが、潜在層の獲得には向いていません。

ダイレクトマーケティングは、あくまでも手法のひとつで、万能じゃない。クライアントの課題は多岐にわたり、採用の難易度はますます増していくので、顕在層をとりきったあとには潜在層にもターゲットを広げる必要が出てくるし、「前例の踏襲では得られない新たな打ち手」を求められる機会も必ず出てきます。
どちらがいい悪いではなく、世の中のさまざまな手法を学びながら、課題に合わせて「最適な手法で解決できる人になる」という考え方が大事になってくるんじゃないでしょうか。

ひとりひとりのポジティブな想いが、世の中を動かす世界になってほしい。

――佐々木さんが大切にしていることを教えてください。
僕はもともと、ポスト資本主義の在り方を議論するような学生時代を過ごしていました。なので、ビジネスというのは、あくまでも社会の一部であり、すべてではないと。ビジネスを突き詰めれば突き詰めるほど、必ず影の部分が出てくる。そのため「ビジネスの成功は、必ずしも社会の成功とはいえない」という意識がいつもあり、ときどき仕事の成果に言い訳をつけていた時期があります。上司にビジネス雑誌を読めと言われても、「僕の人生にとって重要ではないんで」とご遠慮させていただいたこともあります(笑)。

――イヤな部下ですね…。
ははは。でもいろんな人と対話する中で知ったのが2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスです。彼は、バングラデシュで貧困層の女性向けに少額の融資を行うためのシステムを考え、グラミン銀行を設立しました。その銀行によって、顧客の半数以上が絶対的貧困から抜け出して、1日3回の食事をとれるようになり、衛生的なトイレと雨漏りしない家を持てるようになったんです。要するに資本主義って経済を優先して社会に問題を生み出すという側面があったわけですが、これは資本主義のシステムを使って社会問題を解決してるんですよね!

――それって、ディップの「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」とも通じるところがありますね。
そうだと思います。僕がディップでがんばろうと思えるのも、その根幹に共感するからです。

もちろん日々たくさんの仕事があるし、売上や利益も大事です。でも利益を上げているところだけが、株主に人気なわけじゃないですよね。未来の理想やワクワクを描き、「未来への期待値からお金を集める」企業も増えてきています。

僕は、働くからには社会を良くしていきたい。

「誰かのことを良くしたい、救ってあげたい、幸せになってほしい」というプラスの想いが世の中を動かす世界になってほしいと思っています。そのためにも、メンバーひとりひとりに「この仕事の先に誰がいるのか。誰を幸せにするのか」を考えてほしいし、僕自身もビジネスと社会課題の解決を両立できる組織をつくっていきたいと考えています。

interviewee

佐々木 太洋

人材サービス事業本部クリエイティブ統括部統括部広告制作部長。2006年12月入社。広告制作部のビジョン・ミッション・戦略設計を企てながら、約70名の制作部の指揮を執る。かなりスリム。

staff

高橋 正憲

2008年、dipに新卒入社。営業しか募集していなかったのになぜか社長の気まぐれで制作職として拾ってもらう。人見知りのくせに課長。大阪出身だが東京→名古屋→大阪と転勤を繰り返し、大阪弁を見失う。

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