ディップのSDGsへの取り組みは、とある社員の社長へのメールから始まった。

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櫻沢 美樹
人事総務本部 人材・組織開発室 / 商品開発本部 次世代事業統括部 Biz dev課 ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

フードバンクプロジェクト」を始め、SDGsを推進するディップ。そのスタートは、当時営業課長であった櫻沢の一通のメールから始まりました。

ずっと「誰かのため」になりたかった

高橋:櫻沢さんは2020年10月からSDGs関連のお仕事を兼務(現在は専任)されていますが、それまではずっと営業職でしたよね。

櫻沢:2015年に新卒で入社して、新宿営業部で採用コンサルタントをしていました。入社してからずっと営業しかやってこなかったので、SDGsに関わるようになってからは仕事の進め方の違いに苦労しましたね。「0から何かを始める」という経験がなかったので、「新しいことをやるってこんなに難しいんだ」「こんなにいろんな人を巻き込んでやるんだ」と、個人的には自分の至らなさを感じた半年でした。

高橋:そもそも、櫻沢さんはなぜディップに?

櫻沢:実はディップを受ける前に、とある銀行の事務職で内定が出ていたんです。小さい頃から「母を支えたい」「母に喜んでほしい」という思いが強くて、母が喜ぶのは当時、安定していた事務職なんじゃないかと勝手に思い込んでいて。でも「本当にそれでいいの?」と母に聞かれて、「確かに自分がやりたいことじゃないのかも」と思うようになって。それで11月頃から就活を再開しました。本当にゼロベースで「自分は何がやりたいのか?」を考え直して、事務や営業など、100社くらいエントリーし直しましたね。

高橋:おぉ、そんな経緯が。どんな軸で就活を?

櫻沢:先ほども「母のため」という話をしましたが、もともと「誰かのためになりたい」という思いが強いタイプでした。だから、就活の軸は「お客さまのために本気でやっている企業か」を大事にしていました。そんなときに出会ったのがディップでした。

正直、説明会を受けるまでディップのことはよく知らなかったのですが、説明会を通してディップは圧倒的にユーザーファーストな文化なんだなと感じて。他の求人サイトにはない動画コンテンツがあったり、制服の写真まで載せられたり。それがすごく魅力的に感じられたというのが1つ目の理由です。

もう1つは、ディップってすごく若い会社ですよね。だからこそ「道が出来上がっていない分、レールは私たちがつくっていけばいいんだ」という点が魅力に感じられて、チャレンジ精神に火が付きました(笑)

高橋:入社してからは、どうでしたか?

櫻沢:最初は結構尖ってたと思います(笑)お客さまのことはすごく大好きで、お客さまへの愛を持っているのに、1年目はぜんぜん売れなくて。「なんでこんなにお客さまのことを思っているのに売れないんだろう」と落ち込んだり、周りに対しては「なんで私のほうが行動しているのにあの子のほうが売れてるんだろう」とやっかみのようなものを感じてしまうこともありました。

でもそんな考えを変えてくれたのもディップの人たちで。たとえばすごく早く帰る人でも、裏では実は努力していたり。私の知らないところで、お客さまと深く交流していたり。「目に見えるものだけが全てじゃない」「自分の考えだけが正しいわけじゃない」と、上司や課のメンバーたちと関わることで、だんだん分かるようになってきました。本当に、人としてすごく成長させてもらった5年間だったなと感じています。それからは、「誰かのために」「社会のために」ということをより考えられるようになりましたね。

高橋:2019年4月からは管理職になられていますよね。

櫻沢:それまではお客さまと直接コミュニケーションを取れていたのに、課長になるとメンバーを通してでしかお客さまと接することができなくなって、お客さまが見えづらくなったのは少し苦しかったです…。

でも、だからこそ自分のメンバーがお客さまに褒められたりすると、自分のこと以上に嬉しかったですし、そういった意味で管理職もすごくやりがいのある仕事だなと感じていました。たとえばお客さまに一生懸命になれなかったメンバーが、ちょっとずつ変わっていく瞬間とか、言動で分かるんですよね。「お客さまへの質問の内容が変わったな」みたいな。そういう瞬間は、すごく嬉しかったですね。

社長にメールで直談判。全社でもっとSDGsに取り組みたい

高橋:そこから、なぜ突然SDGs関連の仕事に?

櫻沢:全社の管理職が集まる研修で、SDGsをテーマに扱ったことがありました。そのときに、私がやりたかったことってまさにSDGsなんだ!と感じて。社会に対してずっと感じていたモヤモヤと、ディップだからこそ実現できること。2つとも、SDGsに取り組むことで叶えられるんじゃないかと思い、「ディップでこういうことを実現したいです」と冨田社長に直接メールを送りました。

高橋:すごい行動力ですね。櫻沢さんが叶えたかったことって何ですか?

櫻沢:子どもの頃の原体験として、ずっと「満員電車」に疑問を感じていて。通勤している人たちの顔を見ると、みんなしんどそうで、なんだかつまらなそうな顔をしている。だから大人になったらきっと大変なんだろうと思っていました。でも、自分が大人になって、社会に出てみると、確かに苦しいことはたくさんあるけれど、すごくいいこともある。働くことって、実はとっても楽しい。だから、みんなが「仕事って楽しい。働くって楽しい」と思える社会に変えていきたい、と思っていました。

もう1つは、私自身が営業としてお客さまと向き合い、たくさんの問題、課題に触れる中で、「労働力の問題解決のプロフェッショナル」として、ディップにはもっとできることがあるんじゃないかと思ったからです。営業をやっているとどうしても「自分の営業目標を達成する」ことばかりに目が行きがちですが、お客さまのため、世の中のためにできることはまだまだあるはず。そういったことを社員のみんなで語り合い、実現する風土にしていきたいなと思っていました。

そういった思いもふまえて、SDGsの「1.貧困をなくそう」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」などの項目に沿って、ディップとしてもっとアクションを起こしていきたいと社長に伝えました。

高橋:社長から返信はありましたか?

櫻沢:すぐに「それいいね。ぜひ進めましょう」と返信をいただけました。その後、CHOの鬼頭さんにも加わっていただき、私が思っていることを形にするため、具体的な提案書へと落とし込んでいきました。そこで生まれたのがSDGsプロジェクト「シャカツ」(社会を改善する活動の略)です。

有志のメンバーで始めたフードバンクプロジェクト。社会の問題を目の当たりにした

高橋:「シャカツ」の第一弾として、「フードバンクプロジェクト」を開始されましたよね。

櫻沢:はい。フードバンクというのは、その名の通り「食料銀行」を意味する社会福祉活動です。「包装が破損している」「在庫が過剰になっている」など、安全に食べられるのに世の中には流通できない食品を企業から寄贈いただき、食べ物に困っている方々へ無償で提供しています。ディップでは、フードバンクを行っている団体の方々と連携し、該当地域周辺の顧客企業へチラシを配布し、ロスフード提供の呼びかけを行ったり、『バイトル』にフードバンクの認知を広げるための特設ページを掲載したりしました。また、有志のメンバーを集めて、パントリー開催当日のボランティアスタッフとしても活動を行いました。現時点で、計6回ほど運営に参加しています。

高橋:櫻沢さんもボランティアスタッフとして参加されたと伺いましたが、参加してみてどうでしたか?

櫻沢:日本って、一見裕福に見えると思うんです。でも、フードバンクに参加して、食料を取りに来られる方たちと直接関わることで、日本にも貧困で困っている方がたくさんいるんだと、ようやく生身で体感することができました。家族連れの方とか、ひとり親の方とか、本当にたくさんの方が来られるんですよ。それに、みなさん本当に「ありがとう」と感謝されていらっしゃいました。

フードバンクの運営団体の方ともたくさんお話させていただきましたが、ちょうどコロナ禍とも重なり、働くことがままならない方々、経済的な事情で日々の食事に困っている方々が増えてきているとのことでした。また、実際は生活保護を受けられる条件なのに、世間の目が気になり諦めている方々がいるなど、さまざまな問題が起きていることも知りました。

世の中で起きている問題を、データではなく、リアルに感じられる場だったので、参加してとても良かったなと思います。それに、労働問題を解決していくディップとしては、やはりもっと深くこういった問題に取り組み、SDGsを推進していく必要があるなと実感しました。

高橋:フードバンクは今後も続けていくのですか?

櫻沢:現状では「ボランティア」という形での参加がメインになっているので、ディップのリソースを使ってもっと貢献できることがないか、今、別のメンバーが考えてくれています。ただ、私にとっては「SDGsに本気で取り組みたい」と再確認できた、とても貴重な体験でした。

社員全員がSDGsを起点に語り合い、行動していける仕組みをつくりたい

高橋:フードバンクでの活動を経て、現在はどのようなことを?

櫻沢:主に3つの軸で動いています。

1つ目は、私自身のSDGsに関する知識のインプットです。ディップは、2021年2月に、SDGsの専門メディア『SDGs CONNECT』を立ち上げました。ここではSDGsに取り組む企業、政府などの施策を紹介していて、私も編集部メンバーの1人として、取材、記事の執筆を担当しています。すでに何社か取材を終えましたが、「世の中ではこんな事業に取り組んでいる企業や団体があるんだ」など、日々発見が多いです。

高橋:2つ目は?

櫻沢:いわゆる「組織開発」です。私がフードバンクのボランティアを通して感じた思いや、『SDGs CONNECT』の取材で得た知見をもとに、ディップのみんながSDGsに関心を持って対話し行動を起こしていく風土醸成や機会づくりを行っていく予定です。第一段階としてまずは「SDGsに興味・関心を持ってもらう」ことをゴールに置いています。ただ、先ほどもお伝えしたとおり、社会問題を座学で学ぶのではなく、「リアルを知る」ことが大事だと思っているので、格式ばった「研修」というよりは、たとえば実際に困っている方々のお話を聞く場を持つなど、「社会問題を体感」する方法を考えているところです。

高橋:3つ目は?

櫻沢:社員一人ひとりのアイデアを形にする「仕組みづくり」です。

「シャカツ」を始めた際も、「あんなことがやりたい」「こんなことがやりたい」と、大小さまざまなたくさんのアイデアが社員から集まりました。ただ、私自身にそれらを判断する知識、経験がなかったため、まずは課題感の大きかったフードバンクプロジェクトから始めたという経緯があります。

そのため、そういった社員一人ひとりのアイデアをきちんと形にできるよう、今後は仕組みづくりを行っていく予定です。

高橋:具体的には?

櫻沢:新規事業の立ち上げやスタートアップの支援などを行っている次世代事業統括部を兼務させてもらうことになりました。そこで私自身が事業やサービスの立ち上げに関する知見を吸収し、社員のアイデアを形にする仕組みを考えていけたらいいなと思っています。

高橋:人材・組織開発室と次世代事業統括部の兼務にはそんな背景があったのですね。

櫻沢:とはいえ、仕組みづくりに関してはまだまだ模索中です。掲示板のようなものをつくろうとは思っていますが、そこで出たアイデアを誰がどう判断するのか、そのアイデアを誰にどう任せるのかなどのルールづくりはこれからです。

また、私としては必ずしも「事業化」にこだわる必要はないと考えています。それを事業にしたほうがよければ事業にすればいいし、発案者の部署で完結できるようなものであればそのサポートをするだけでもいい。大小問わず、社員から出てきたアイデアを形にする仕組みを整えたいです。

高橋:SDGsに関するインプット、教育、仕組みづくり。それらを通して櫻沢さんが実現したいことってどんなことなんでしょう?

櫻沢SDGsを軸にして、現場の社員一人ひとりが声を上げ、形にし、クライアントや社会、世の中のためになる仕事がどんどん生まれてくる会社にしていきたいです。

高橋:まさに企業理念である「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」の体現ですね。

櫻沢:みんな、入社当初はそのような思いを持って入社してくると思うんです。でも、どうしても目の前の仕事に追われてしまったり、「こういう商品やサービスがあったらいいのにな」と思ってもそれを誰にどう相談すればいいのか、どのように形にすればいいのかが分からない人が多いのではないかと考えています。だからこそ、そこをサポートできれば、ディップはもっとお客さまや世の中の役に立てるはずだし、社員一人ひとりももっと楽しんで仕事に取り組めるはず。そう信じています。

高橋:それってもともと感じていた「満員電車の~」の話にも通じますね。

櫻沢:そうなんです!ディップにはもともと「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念があり、その理念にもとづいてサービスづくりや施策を行ってきました。そこにSDGsの考えを加え、社員一人ひとりがSDGs達成に向けたアイデアを考え、形にしていけたら、もっと世の中を持続可能なより良い社会にできると思うし、社員の幸せにもつながると信じています。

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櫻沢 美樹

人事総務本部 人材・組織開発室 / 商品開発本部 次世代事業統括部 Biz dev課 2015年新卒入社。新宿営業部にて採用コンサルタント、新橋営業部にて課長職を経験。その後、2020年12月からはSDGs推進課の課長となり、「シャカツ」「フードバンクプロジェクト」などを推進。現在では人材・組織開発室の一員としてSDGsに関する社員教育に取り組みながら、次世代事業統括部を兼務し『SDGs CONNECT』の編集部メンバー・ライターとしても活躍中。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。