2ヵ月で戦力化?失敗もいとわない、実践的なエンジニア研修。
2015年から新卒の受け入れをはじめたシステム開発部。「良い人が育つ組織であれ」と指標を掲げるこの組織は、いったいどのような新卒研修を行っているのでしょうか。研修チームの4人(山崎、網目、石川、中川)に取材しました。
技術以前の、エンジニアとしてのスタンスを学ぶ2ヵ月間。
東島:まずは研修の概要からおしえてください。
山崎:はい。新卒研修は「新卒採用したメンバーを早期に戦力化」することを目的に、およそ2ヵ月かけて行っていきます。昨年、本格的にプログラムを作成し、システム開発部初の新人賞輩出という成果も出たので、今年も基本的には同様のプログラムで行いました。とはいえ、コロナによってテレワーク下で実行していかなければいけないという点で細々とした変更は多々ありましたが。
東島:具体的にはどのような研修を行っているのですか?
山崎:技術面での指導は研修後の現場で行うので、研修期間ではシステム統括部という組織についての説明や、社会人としての基本スキルを教えていきます。それと並行した形で、プログラムのメインである“開発プロジェクト演習”を行います。
指導はほとんど無し。新卒が自力で要件定義からローンチまで。
東島:“開発プロジェクト演習”というのは、どのような内容ですか?
山崎:約2ヵ月の期間を設け、新卒だけでプロダクトをつくるという研修です。具体的には、リクエスタからのざっくりとした「こういうものがほしい」という要求に対し、新卒にほとんど自力で要件定義~ローンチまでやってもらうという内容です。リクエスタの他、気軽に話せる相談相手としてメンター、適宜 確認と指摘を行うレビュアがおり、私は研修の統括を行いました。
綱目:私が今年のリクエスタ役です。システム統括部内には「サポ10(テン)と呼ばれるエンジニア個人に年間10万円を支援する制度があるのですが、それをもっと簡易に申請できるようにしてほしい、というのが今回のお題です。要求の背景には運用が効率化されていなかったり、もっと多くの人に制度を活用してほしいなどがありますが、はじめはあえてそこまで言いません。「イイ感じにつくってよ」と、ざっくり(笑)
東島:そんな、いきなり任せてうまく進行するものなのですか?
綱目:明確な指示は出しませんが、さりげなく周りが促したりはしています。「まずは自分で使ってみたら?」とか「どんな人が使ってるんだろうね」とか。これは研修チームだけじゃなく、システム開発部みんなでやってます。
東島:みんなで新卒を育てているんですね…!そうは言っても、ヘンな方向に突っ走ってしまったりしませんか?
石川:何度もありましたよ(笑)私はレビュア役だったので適宜 進捗を聞くのですが、課題を決めつけてしまっていたり。「ここが課題だと思ったのでこうしました」と言うんだけど、「その課題は本当なの?」と聞くと、確認してないから証明できない。で、再定義から…の繰り返しです。
東島:めちゃくちゃ時間かかりそうですね。
山崎:実際の開発でも、意図を汲むことの方が時間がかかるんですよ。去年の演習も、要件定義には3週間近くかけてますが、開発は1週間ほど。時間がかかるのは承知でやってはいるのですが…今年はテレワークの影響で色んな人とスケジュールが合わせづらくなってしまったり、昨年のお題より改善に取り組むべきフローが多かったこともあり、スケジュール通りに進めることができませんでした。結局延長して3ヵ月やったものの、要件定義まで終わらず…ローンチが目的ではないので研修としては成功したと思いますが、プロジェクトとしては改善の余地がありますね。
演習は安心して失敗できるからこそ、大きく成長できる。
東島:そもそも「開発プロジェクト演習」にはどのような狙いがあるのでしょうか?
石川:目的は二つあります。一つ目は「他人の問題を解決し、人に使ってもらえるものをつくること」。一般的な研修だと「研修用に掲示板を作ってみました」みたいなものを見聞きします。でも、これでは自身の血肉にならないと私は考えています。新卒で入ってくる方も開発経験はあるのですが、たいてい自分の為になにか作ったというものが多く、誰かの問題を解決するという経験はあまりなかったりします。弊社ではチームプレーが必要不可欠ですし、自分のためのプロダクトはありません。誰かが困っていて、それについて本質的な課題を捉えられないとローンチ後も使ってもらえません。だから、他者の意図を汲み取るスキルが身に付き、人に使ってもらえる喜びを感じられるような課題を用意しようと思いました。
もう一つは「安心して失敗できること」。実際のプロダクトに入るとどの媒体も個人情報の塊なので失敗してしまうとものすごいインパクトなんですよ、社長が謝罪するレベルの(笑)いきなりそういったフィールドに出てしまうと、おいそれと失敗はできないし失敗したときの影響が大きすぎる。その前に失敗しても影響が大きくない場所でたくさん失敗し、どうなったら失敗が大きくなるのか、その失敗はどうしたら回避できたのかなど、失敗から学ぶ機会を提供し、しっかり学びを得られるようなプログラムにしました。
東島:失敗する経験を積むための場なんですね。だからどんなに時間がかかってもローンチまで誘導しないんだ…。
綱目:うーん、でもデッドラインを決めてテコ入れするべきだったかなとも思います。部分部分ではやってたんですが、全体のスケジュールがしっかりきまっていたわけではなかったので…
中川:でも、新卒の子は研修が終わってからは意識がだいぶ変わりましたよ。この前も、「こういったことが本当の課題じゃないですかね?」って聞きなおしてくれましたし。
一同:そうなんだ~それは嬉しいね。
東島:中川さんはメンターですよね。そういった役割分担もかなりしっかりされてますよね、メンターは新卒ひとりひとりに担当がいるみたいですし。具体的にはどんなことをされるんですか?
中川:メンターは心理面のサポート役で、一番気軽に相談できる人という感じです。そのため年の近い入社2~3年目のメンバーが担っているのですが…入社2年目だった去年の自分なんか、教えられるような立場でもなかったので、相談を受けたらアドバイスするというよりは一緒に悩んで、一緒に怒られるって感じでしたが(笑)
山崎:できるだけ近い立場にいることが大事だから、それはそれでいいのよ(笑)メンターにはあえてお題の意図とかを伝えていないんです。プロジェクトの深くまでは関わらせず、新卒と同じ立場にいるからこそ信頼を得られると思っています。
東島:すごい…!徹底してる…!
中川:それから、新卒とは毎日30分ほど1on1(1対1で行う面談のこと)を行って、その日上手くいったこと、上手くいかなかったことなどを聞いています。日報も毎日書いてもらって、システム開発部みんながみられる状態にしてあるのですが、先輩たちも結構コメントをくれてますね。
高橋:聞いてると、みんなで育てる空気がすごくありますよね。この研修メンバーはどうやって選ばれているんですか?
山崎:私は組織長なので別ですが、他はみんな有志で集まっています。
高橋:それってすごいですね。どういった想いで自主的にみなさん集まっているのですか?
中川:自分は1年目のときに色んな先輩にお世話になったので、その恩返しというか。自分も同じ立場になったとき、同じようにしてあげたいなと思ったので。
綱目:もともと教えるのが結構好きだからかなー。30代も後半になって、若い人に教えるようなお年頃だしね(笑)中川さんとかが成長していく姿をみるのも楽しいよ。
中川:(笑)
石川:自分の中でチームビルディングが課題だったというのもありますけど…単純に、「面白そうだから」が大きいかな。
ディップのエンジニアが目指すのはローンチではなく、課題を解決すること。
綱目:スケジュールの面では課題が残りましたけど、この研修の大きなテーマはあくまで“課題解決”。事業会社ですから、言われたものを作るのではなく、課題を自分で拾い上げること。極端なことを言えば、開発をせずに課題が解決できるなら開発はしなくてもいいんです。開発は課題解決のための手段にすぎない。さっき中川さんも話してくれたけど、この考えは浸透したと感じるのでよかったと思います。
東島:なるほど~。目的やテーマがしっかりしているからこそ細部まで一貫した取り組みができているんですね。では最後に、これを読んでいるかもしれない未来の新卒さんのために、採用の上で重視していることを教えてください!
山崎:コミュニケーションスタンスを重視しています。企画部門と一緒になって意図を汲みながら開発していく必要があるので、コミュニケーションが本当に大事。まれに、ものすごい技術力をもった方が面接にいらっしゃいますが、ひたすら技術を追い求めたいタイプだとお互いに幸せになれないんですよね。だから落選というより、ミスマッチ。ディップの土壌でスキルを伸ばしてあげられそうな人か、お互いに幸せになれそうかということを採用では重視しています。
東島:ありがとうございました!