経理=過去の数字の取りまとめ、じゃない。未来を見据えた「攻め」の経理へ。

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石田 新
経営統括本部 経理財務部 販売会計課 課長/経理課 マネジャー ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

「経理=ルーティンワーク、守りの仕事」というイメージがあるが、ディップの経理はそうではないらしい。2008年に営業職として新卒入社し、その後経理畑へと異動した石田に、話を聞いてみた。

経理=会社の家計簿をつくるのが仕事

高橋:いきなりですが、そもそも「経理」って何をやっているのですか?

石田:まず、モノを買ったり、サービスを利用したりすると、取引先から請求書が送られてきますよね。その請求書を1枚ずつ、「これは何に使ったお金なんだろう」と確かめながら集計していき、いわゆる「家計簿」のようなものをつくります。家庭の家計簿の場合、趣味娯楽、食費、交際費などのカテゴリーに分かれると思いますが、それを「会社単位」でつくる。それが経理の仕事です。

さらに、ディップは上場企業なので、外部の方向けに「何にどれだけお金を使ったのか」「財政状態はどうか」などを発表する義務があります。有価証券報告書、決算短信などがそれにあたり、その元となる数値も経理が作成しています。

高橋:家庭の場合、「趣味娯楽」「食費」などがカテゴリーになるかと思いますが、会社の家計簿ではどのような項目があるのですか?

石田:大きいところで言うと、収入では売上高。費用では広告宣伝費、給料手当、販売促進費、地代家賃あたりが多いですね。

高橋:一定のルールに従って、経費を集計していくと。

石田:おっしゃる通り、経理は決まった通りに仕事をするので、ルーティンワークのイメージがあるかと思いますが、実はぜんぜんそんなことはありません。ある程度の枠組み、ルールは決まっていますが、それをどのように運用に乗せていくかは会社の方針とも関わってきます。

たとえば広告宣伝費と販売促進費も、内容はかなり似ているので、「これはどっちなんだ?」と迷うシーンが日常的に起こります。そういった場合に混乱が起きないよう、「これはこういう理由で広告宣伝費」という理由を言語化して、組織内でも共有しておく。そうすることで、誰でも同じ処理ができるようになり、外部の方へも正しい数値が報告できるようになります。

高橋:逆に、「項目」が変わるとどんな不都合があるのですか?

石田:周りからの見え方が変わってきますよね。有価証券報告書も決算短信も、見ているのは投資家の方々が多いです。たとえば広告宣伝費が本当は10億円なのに、ルールが共有されていなくて広告宣伝費が8億円、販売促進費が2億円となったとします。そうすると、外部の方からは「ディップは広告宣伝費をおさえたのかな?」「それってもしかして余裕がないってこと?」「来期はどうなるんだろう?」と、誤った解釈を持たれてしまいます。だから、数値は必ず正しいものを発表しないといけないし、仕訳のルールもキッチリ決めておく必要がありますね。

「前と同じ」は思考停止。常に柔軟に、ベストを尽くす

高橋:石田さんは2008年入社で、今年で14年目ですよね。石田さんが感じる「ディップらしさ」はどのようなところにありますか?

石田:ディップはとにかく変化が大きい会社です。だから経理も「変化に合わせて柔軟に対応する」「既存のやり方ではなく都度ベストな方法を考える」ということをやってきました。

たとえば消費税が8%から10%に増税されたときの話です。それ以前にも5%から8%への増税を経験していたので、通常であれば同じ対応をすればいいのですが、前回の対応時にいくつか課題があったのと、大きなコストがかかっていたので、あらためて今の組織、システム、リソースで何がベストかをイチから考えて、提案し、対応しました。

営業や関係部署の皆さんにとっては前回の増税時とやり方が変わってしまい、違和感もあったでしょうし、負担を強いた部分もあったとは思いますが…コスト的にはかなり抑えることができました。

高橋:「柔軟に対応する」「常にベストを考える」というのは、石田さんに限らず、周りもそうなんですか?

石田:経営統括本部長(CFO・執行役員)の新居さんがとくにその思考が強いですね。「常に最善を考え尽くせ」とよく言われます。求められるレベルが上がる分、大変なこともありますが(笑)、結果的に仕事の質、成果が上がっていると感じるので、とても尊敬しています。

「過去」ではなく「未来」を見据えた、「攻めの経理」を目指して

高橋:事前のアンケートで、「今後は『攻めの経理』を目指したい」と伺いました。これはどういった思いで?

石田:経理の仕事は、その性質上、「過去の数字を出す」のが本来の役割です。数字を記録し、過去の数字で家計簿をつける。いわゆる「守りの経理」と言えます。

でも最近では、会社から、経理も「未来を意識した仕事」を求められているように感じています。つまり、「経営に貢献する経理」です。未来の姿を見て家計簿をつける。「会社がこうなりたいのならこのようにお金を使い、このように利益を出す」と提案する。未来の話や予測に関してはこれまで経営企画やIRが担当していたのですが、これからはそれらの部署とも密に連携して、「未来」につながる仕事をしていきたいと考えています。

高橋:なぜそのような考えに至ったのですか?

石田:理由の1つとして、まずはAI・RPAの台頭があります。いわゆる「単純作業」が自動化される世の中になっていくなかで、経理職に求められる役割が変わっているのだと思います。

もう1つは、『Labor force solution company』の実現に向けて、ここ2~3年で会社の変化がより大きくなり、変化のスピードもますます上がっているからです。会社がどんどん新しいことにチャレンジしていくなか、経理の僕たちも未来を意識して仕事をしないと、凝り固まったことしかできないし、会社にもついていけなくなってしまう。だから、今が進化するチャンスだと考え、未来を意識した仕事にシフトしていっています。

高橋:具体的にはどのようなことを?

石田:先ほどお話したように、経理も、IRも経営企画も、実は似たような情報を扱っています。でも、やっていることや出すべきアウトプットが異なるので、今までは「必要なときに必要なことだけ」連携を取っていました。

でも会社が求めているものが変わり、より「スピーディー」かつ「正確」に意思決定する必要が出てきたので、最近ではそれらの部署とも定期的に情報共有の場を持ち、連携を取っています。

今動いているのは、まさに「未来の数字」とも言える「業績予想」についてです。外部の方に向けた決算短信では来年1年間の業績予想を書いていますし、社内においても有効な戦略を立てる上で正確な業績予想はとても重要です。そのため、それらの数値を少しでも精度高く、かつスピーディーに出せるよう、「経理=過去の数字の取りまとめ」という考えから脱却し、連携を取りながら進めています。

高橋:まだ取り組み始めたばかりだと思いますが、「変わっている」感覚はありますか?

石田:定期的な場を持つことで、お互いに「寄り添おう」という感覚が出てきたように感じます。また、経理は今まで本当に「過去の数字しか見ていなかったんだな」ということも実感しました。IRや経営企画とのミーティングを通して、会社が「未来を見てほしい」と考えているのをより一層強く感じますし、経理に求められている役割が変化しているんだなと思います。

個人的には、経理という仕事はもはや「経営企画」に近い仕事に置き換わっていくのではないかと考えています。市場調査でも「将来なくなる仕事」に経理がランクインしていますが、一部は事実だと思っていて。まだまだ経理の仕訳作業などはロボットへの置き換えは難しいようですが、それが進んでいくと「その数字を利用してどう経営していくか」が人間に求められることだと思いますし、ディップとしてもそういった高度な人材を必要としていくのだと思います。今後は、経理業務でのAI・RPAの導入や、仕組みづくり、体制づくりも進めていきたいです。

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石田 新

経営統括本部 経理財務部 販売会計課 課長/経理課 マネジャー 2008年新卒入社。営業職として入社し、ジョブエンジン営業部にて営業職を経験。その後、2008年9月に経理財務部へ異動。経理・購買の実務、管理職などを経て、2021年4月より現職。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。