事業戦略を「データ」で支える。データマネジメントの仕事とは。

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百々 久美子
企画・統括本部 営業企画統括部 戦略推進部 データマネジメント課 課長 ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

事業戦略を考えるために必要なマーケットデータの作成や、アポイント取得を進めるための企業リストの作成。他部署の社員には見えづらいこれらの仕事の裏側では、一体何が行われているのか。データマネジメント課の課長を務め、最近ではデータ活用のデジタルシフトを進める百々(どど)に話を聞いてみました。

市場を知るっておもしろい。自ら手を挙げ参加したデータマネジメントの仕事。

高橋:戦略推進部のデータマネジメント課は、ディップが営業活動を進める上で必要なデータをアレコレ準備されている部署だとか。とはいえ僕も営業経験がなく、実態はよく分かっておらず…。詳しく教えてください!

百々:まず、私が所属している戦略推進部では「お客さまとの接点を最大化しよう」をテーマに掲げていて、その上で各課で役割を分担し、ミッションを決めています。たとえばその1つがMAツールでのBtoBマーケティングです。その中で私たちデータマネジメント課が担当しているのは、事業戦略を立てるためのマーケットデータの作成や、アポイント取得を進めるための企業リスト作成、CRMアプリ「レコリン」の活用推進などです。

高橋:ありがとうございます。それぞれの詳細は後ほどお伺いするとして。百々さんが「データマネジメント」に携わるようになったきっかけは?

百々:私は2006年に新卒でディップに入社して、『はたらこねっと』の営業を2年経験した後は、事業管理や事業企画の仕事を担当していました。そんなある日、会社としてもマーケットをより精緻に把握・分析するためにマーケットデータの作成を推進することになり、私も上司のサポートとしてチームに入ったんですね。そのときに「市場を知るっておもしろい!」と思ったんです。今までも事務方として1社1社の売上や、事業部の売上などは把握していましたが、もうひとつ広い視点、高い視座でマーケット全体を見渡したときに、今まで見えていなかったものが見えてきたり、新しい発見がたくさんあって。「私はこの仕事がしたい!求人のマーケットをもっと調べたい!」と思い、自ら手を挙げました。

「購入して終わり」じゃない。“使える”マーケットデータには地道な作業が必要。

高橋:では次に、「マーケットデータの作成」について教えてください。

百々:ディップは約1,500名の営業社員を擁しているとはいえ、無限にリソースがあるわけではありません。世の中には無数の企業があるので、「ディップ(または事業部・営業部)としてどのような顧客を開拓していくべきか」「そういったお客さまに対しどのような営業活動を行っていくか」という戦略を立てる必要があります。そして、それらの事業戦略を立てる数値的根拠となるマーケットデータを私たちの部署で作成しています。

高橋:たとえばどんなデータなんですか?

百々:各都道府県にはどれくらいの企業・マーケットがあるのか。たとえば年間●円以上の採用予算がある企業は何社あって、×円以上だと何社くらいあるのか。そのうちディップはどれくらいのシェアを獲得できていて、他社はどうなのか、などですね。

高橋:ちょっと不躾(ぶしつけ)な質問になってしまうかもしれませんが…世の中には市場調査をしている会社やいわゆる「企業リスト」などを作成している会社があると認識しているのですが、そういった会社から「購入して終わり」という風にはならないんですか?

百々:(ギラッ※目つきが変わる)たしかに各求人媒体に掲載されているデータを取得・整理して、販売している会社はあります。ただ、それを「自社で使えるもの」にするにはひと手間もふた手間も工夫が必要で。たとえばそのデータとディップの売上データを突き合わせてディップのシェアを割り出したり、各営業担当や事業部を紐づけたり、各社のIRデータを調べて追加したり。あとはディップの場合代理店さんでの販売もあるので、その場合はどうするか、チェーン展開しているお客さまで複数窓口での取引がある場合はどのように集約するか…なども考慮する必要があり、意外と一筋縄ではいかないんです。データマネジメント界隈ではよく聞く話ですが、全角・半角の違い、スペースの有無など「表記揺れ」の問題もあります。「データ」というと簡単に取得できて加工できると思われがちですが、意外とそういった地道な作業が大事なんですよ。

高橋:なるほど…失礼しました(ペコリ)。ちなみにマーケットデータはどれくらいの頻度でつくられているのでしょうか?

百々:当初は「どうやってマーケットデータを作成しよう」というところから始まったので、期の戦略を立てるために年に1度出すのがやっとでした。でも最近は戦略の精緻な分析・見直しが行えるよう、高頻度で出すようにしています。また、データの内容も、以前は都道府県レベルでしか出せなかったのが市区町村レベルでも見られるようになったり、主要求人媒体だけでなく地方の求人媒体の利用状況も分かるようになったりと、徐々に充実させています。

高橋:市区町村レベルで見られるのであれば、事業部長だけでなく営業の部課長が方針を立てるときにも参考にしやすいですね。

営業現場でリアルタイムに見られるよう、企業リストをBIツール化。

高橋:アポイント取得を進めるための「企業リストの作成」はいかがですか?

百々:こちらも元となるデータは「マーケットデータ」と同じで、求人媒体の出稿状況などをもとに作成しています。月に1度データを作成し、それをもとにまだディップでは接触できていないお客さまについては営業管理職が担当を割り振り、アポイント取得を進めていきます。それらのデータは『レコリン』とも紐づいていて、各営業担当は『レコリン』さえ開けば自分の担当企業が一覧で分かるという仕組みですね。

ディップが独自開発したCRMアプリ『レコリン』

高橋:とはいえコロナ禍で市況が変わりやすい状況だと、よりスピーディーな対応も求められそうですね。

百々:おっしゃる通り、最近は「2週間に1度はリリースしてほしい」などの要望が増えてきたので、なるべく営業の要望にこたえるようにしています。

もうひとつの動きとしては、「BIツール」への移行を進めています。もともとリストはExcelで提供していましたが、何万件ものデータを扱うには不向きですし、組織ごとに分けるとファイル数も増えてしまい、そうなると作業工数も増えてしまいます。また、Excelだとリアルタイムでの更新もできません。そこで、これらのデータをリアルタイムで共有し、営業自身が自分たちでデータを抽出、閲覧できるよう、BIツールへの移行を進めてきました。これは今年の7月にリリースすることができましたね。

高橋:営業からの反応はいかがですか?

百々:今までは営業部からのデータ抽出依頼に対して「3営業日ください」というような状況が続いていたのですが、そういった待ち時間がなくなり、営業部からも「すぐ分析に移れる」と評価いただいています。

一方で、Excelのほうが色付けしやすい、並び替えしやすいといった面もあるので、Excelに慣れてしまっている営業さんにとってはまだまだ使いづらいなどの声もあるようです。このあたりは今後の課題ですね。

データは整いはじめた。次はどう活用してもらうか。

高橋:今後実現したいことはありますか?

百々:BIツールでデータに触れやすい環境はできてきたので、次はそれをどう活用していくか、顧客データを活用し、どのようにアクションにつなげていくかが課題だと思っています。私自身はずっとデータに携わっているのでデータへの抵抗はありませんが、ディップの中にはまだまだデータに慣れていない方もたくさんいます。そのため、今後はデータマネジメント課のデータリテラシー向上はもちろん、「営業部全体のリテラシー向上」にもチャレンジしていきたいですね。営業現場が自ら積極的にデータを使える状態になれば、よりスピーディーに戦略が立てられたり、余った時間で新たな着想が得られたりなど、“Labor force solution company”の実現に向けて新たな文化がつくれるのではないかと思っています。

高橋:すごくいい取り組みですね。

百々:そのためには、もちろん自分たちのデータリテラシーを上げることも必要です。外部の知見などに触れ、「データってこんな風に活用できるんだ」といった情報を吸収しつつ、それをディップの状況に当てはめ、営業現場にも「このように活用するのはどうですか?」ときちんと提案できるようになっていきたいですね。

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百々 久美子

企画・統括本部 営業企画統括部 戦略推進部 データマネジメント課 課長 2006年新卒入社。2年ほど『はたらこねっと』の営業を経験し、2008年からは事業管理や事業企画を経験。現在はCRMなどを担当するデータマネジメント課の課長職。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。