ディップにはもとからESGが浸透していた?「FTSE Blossom Japan」構成銘柄選定の裏側に迫る。

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多田 祐佳
経営統括部 経営企画部 ESG・SDGs推進課 ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

世の中でも注目を集めているESGやSDGs。ディップは2021年1月、日本株の主要ESGインデックスである「FTSE Blossom Japan」に選定されました。ディップが選定された理由や、今後目指すべき姿について、ESG・SDGs推進課の多田に話を聞きました。

「FTSE Blossom Japan」に選定された意味。

高橋ディップが「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に初選定されましたね。おめでとうございます!

多田:ありがとうございます!

高橋:と言いつつも、「FTSE」や「ESG」についてまだ理解できていないところがあり…詳しく教えてください。

多田:まずは「FTSE Blossom Japan(フッツィー・ブロッサム・ジャパン)」から説明しますね。「FTSE」は、英国・ロンドン証券取引所のグループ会社で、株式や債券などへの投資判断に利用する指数(インデックス)の開発・管理、また、企業のESG情報開示のチェックや評価を行い、「ESGスコア」を算出している企業です。ディップはその「ESGスコア」において3.6点(5点満点中)を獲得し、日本株の主要ESGインデックスである「FTSE Blossom Japan」に選定されました。

高橋:それってどれくらいすごいことなんでしょうか?

多田:日本には約4200社の上場企業がありますが、2020年12月時点の「FTSE Blossom Japan」構成銘柄は全部で201社です。また、「FTSE Blossom Japan」は日本の公的年金資金の管理運用を行う「GPIF」が採用しているESG投資指数でもあり、多くの機関投資家の方がESG投資の参考にしています。

高橋:なるほど、そもそもですが、「ESG」というのは?

多田:企業価値を測る新しいモノサシのことで、環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の頭文字をとって「ESG」と呼びます。日本にはもともと「三方良し(売り手・買い手・世間)」の考え方がありましたが、世界では「株主良し」「従業員良し」「地球環境良し」が加わり、「六方良し」に向かって進んでいると言われているほど、ESGはグローバルに認知されています。

ESGはきちんと開示しないと伝わらない。まずは取り組みの棚卸しからスタート。

高橋:多田さんは2019年4月からサステナビリティ関連を担当されているようですが、具体的にどのような取り組みを進めてきたのですか?

多田:私は2011年に新卒でディップに入社していますが、営業職として3年間、その後広報に異動し、社内報やPR関連の仕事をしてきました。そのためサステナビリティ関連の仕事は未知の領域だったので、まずは本を読んだり、セミナーに参加したりして、イチから学んでいきましたね。そこからESG指標のひとつである「FTSE Blossom Japan」の選定に向けて取り組みを始めました。

高橋:具体的には?

多田:まずはディップのESGに関する取り組みの棚卸しですね。何ができていて、何ができていないのか。どれは開示できていて、どれは開示できていないのかを洗い出していきました。

少し専門的な言葉になりますが、ESGは「非財務情報」とも呼ばれます。ディップもIR情報を公開していますが、たとえば財務情報では「人に関連すること」というと「人件費」など費用に関する数字でしか示されません。でも実際にはあらゆるテーマの教育をして、密にサポートをして、労働安全対策なども行っていますよね。そういった財務情報だけでは伝えきれない「非財務情報」を見える化し、開示していくのが、ESGにおいてとても大切なんです。

高橋:なるほど。

多田:過去にディップが取り組んできたことも、きちんと言葉にしたり、数値を取ったり、見えない価値を「見える化」しないと、世の中には伝わりません。そこで関係部署に協力を仰ぎ、過去の取り組みの棚卸しを行い、2019年10月にサステナビリティページとしてホームページ上に公開しました。

高橋:まずは「過去の取り組みの見える化」から行ったと。これを機に、新たに取り組んだことなどはありますか?

多田:第1弾の棚卸し・開示を終えてから、第2弾として「社員の意識や取り組みができているが言語化できていないこと」「データや数値がまだ出せていないもののうち、抽出可能なもの」などを整理し、開示を進めていきました。それが人権方針環境方針コロナ禍の対応などですね。

高橋:詳しく教えてください。

多田:まずは「人権方針」ですが、ディップの人権に対する考え方、適用範囲を言語化し、対応窓口や教育・研修についても開示を行いました。ディップは求人情報サービスや人材紹介サービスを運営している会社ですが、だからこそ、自社の社員だけでなく、顧客企業、サプライヤー・業務委託者などのビジネスパートナー、また、求人情報サービスや人材紹介サービスをご利用いただくユーザーの方々も人権方針の対象としています。相談窓口についても、自社の社員のみならず、ユーザーの方々、ステークホルダーの方々にも設置しています。

高橋:「環境方針」はどうですか?

多田:ディップはインターネットに特化した求人情報サービスを運営しているので、紙をたくさん消費したり、燃料を大量に使用するような業態ではありません。ただ、グローバルで考えたときに、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」を始め、世界でも大きな課題として問題視されていて、その対応策は製造業・非製造業関係なくすべての企業に求められています。そこで、まずは事業活動においてオフィス(当時33拠点)で使っている電力量、エネルギー量を調べるために、過去3年間の明細書、請求書に書かれている数値、料金を洗い出し、第三者機関の環境の専門会社に算定してもらい、ディップの事業活動に伴うCO2の排出量、エネルギーの消費量などを算出し、開示しました。

高橋:過去3年分…骨の折れる作業ですね…。

多田:ただ、これらはまだ「現状を開示した」に過ぎません。環境対策としてディップにできる優先課題は何か、どのような目標数値を設定し、そのために具体的に何を行っていくかなどは、これからです。

実は、ずっとESGに取り組んでいたディップ

高橋:それらの取り組みが功を奏し、ESGスコアが上がり、「FTSE Blossom Japan」に選定されたと。

多田:はい、FTSEが合格基準としているのは3.3点以上なのでそのグローバル基準をも超えることができました。でも実は「FTSE Blossom Japan」に選定された際の3.6点って、2020年6月の評点結果なんです。

高橋:というと?

多田:つまり、「人権方針」「環境方針」など新たな取り組みを行う前の評点結果なんです。

高橋:おぉ、つまりもともとの取り組みですでにグローバル基準に達していたと?

多田:そうなんです。ディップのこれまでの取り組みの結果を開示しただけで、ESGスコアが上がり、「FTSE Blossom Japan」の合格基準に達したんです。

高橋:それはうれしいですね。

多田:ディップはもともと主力事業で雇用を創出する社会貢献度の高いサービスを行ってきましたが、それに加えて「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念があります。その理念をもとに、たとえば「バイトルKidsプログラム」による小学校でのキャリア教育、復興支援イベント「ツール・ド・東北」への参画、「レイズ・ザ・サラリーキャンペーン」によるアルバイト従業員の時給アップ支援などを行ってきました。「ESG」という言葉が流行する前から、自然とそういった取り組みができていたと言えると思います。

高橋:なるほど。他に、他社と比較して特徴的なことなどはありますか?

多田:冨田社長の「人が全て、人が財産」という信念のもと、人材基盤の強化には特に力を入れてきました。具体的には、年間数百名レベルの新卒大型採用、それら社員のスキルアップのための社内研修などですね。年間の研修開催総時間は約546時間にのぼります。

また、「女性活躍推進に関する取り組み」も進んでいると言えると思います。2020年2月時点で、女性比率は45.9%と約半数、管理職の女性比率は31.1%で、年々上昇しています。その結果、2013年には「子育てサポート企業」として厚生労働大臣より認定を受け「くるみんマーク」を、2017年2月には厚生労働大臣から女性活躍推進が優良な企業に与えられる「えるぼし」(最高段階である第3段階)を取得しています。

高橋:ディップにいると当たり前に思えますが、自然と社会貢献度の高いことに取り組めていたんですね。

まだ始まったばかり。ここからが本番。

高橋:今後の展望などはありますか?

多田:先ほどもお伝えしたとおり、現状は「今までやってきたことを棚卸しし、見える化した」という段階です。まだスタート地点に立ったばかり。今後は、よりESGやサステナビリティの視点を強めていくために、各目標数値の設定や、PDCAによる改善はもちろん、統合報告書(定性的データ、定量的データの両方の観点から、自社の強みやビジョン、今後の事業展開などについてまとめた報告書)などをもとに世の中の方へ向けてディップの取り組みをもっと分かりやすく、ストーリーを持って伝えていきたいですね。それにより、国際的なESG投資指数である「FTSE4GoodIndex」、その他の有力なESGインデックスである「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数」などへの選定も目指していきたいです。

高橋:期待が膨らみますね。

多田:ESGの推進は、専門の組織だけで行うものではなく、「社員全員」が意識して行うものだと考えています。「FTSE Blossom Japan」に選定された今、その名に恥じないよう、社員への正しい知識の共有や、取り組みの推進を行っていきたいです。

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多田 祐佳

経営統括部 経営企画部 ESG・SDGs推進課 2011年新卒入社。京都オフィスにて3年間営業職を経験し、社内公募制度を利用し広報に異動。社内報、パブリックリレーション(PR)を経て、2019年4月よりサステナビリティ関連を担当。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。