スクラム開発で開発速度3倍!ユーザー価値最大化へのディップの挑戦

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長島 圭一朗
ディップ株式会社 CTO ▼詳細

山下 ロルミス
ディップ株式会社 PdM ▼詳細

亀田 重幸
ディップ株式会社 PdM ▼詳細

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田中 雄登
dip people 4代目編集長 ▼詳細

現代のソフトウェア開発において、スピードと柔軟性は競争力の要です。私たちディップのプロダクトチームは、この要請に応えるべく、開発速度を3倍に向上させるという大きな挑戦を遂行してきました。その成功の鍵となったのは、スクラム開発の導入と強力な混成チームの形成です。本記事では、このプロジェクトの全貌を紹介し、私たちが成し遂げた成果とその背後にある意義をお伝えします。

ディップの未来を切り拓く!新たな開発スタイルを確立した背景とは?

田中:自己紹介をお願いします。

長島:長島圭一朗です。20年以上、広告・メディア・EC・IoTなどの様々なWebサービスの企画・開発に携わり、2024年2月ディップ株式会社に入社しました。その後はDX事業、『スポットバイトル』の立ち上げを経て、2024年7月にCTOに就任しました。今はディップ全体のプロダクト開発の改善に取り組んでいます。

田中:今回のプロジェクトの鍵となる、「スクラム開発」というのは具体的にどんな手法なのでしょうか?

長島:スクラム開発とは、アジャイル開発の中でも特にチームでの協力とスピードを重視する手法です。1~2週間程度の短い期間(スプリント)で開発を進め、その都度進捗を確認しながら問題の早期発見と改善ができる点が特徴ですね。チーム全員で成果を出し、状況に応じて柔軟に対応できる点が強みです。

田中:なぜディップの開発チームにスクラム開発を導入することになったのでしょうか?

長島:従来のウォーターフォール型開発では、部門ごとの縦割り作業で時間がかかり、変更対応にも多大なコストを要していました。ディップは今年、『dip AI』『スポットバイトル』という2本の新サービスをリリースするタイミングでもあったため、ユーザーにとって最高の価値をより素早く提供できるように、自分たちの開発体制の刷新を決断しましたまた、今回のプロジェクトには、私たちがディップのプロダクト開発の未来を切り拓くという強い思いがあります。私たちの作る開発プロセスや他部署との連携方法は、後続のチームの模範となるべきもの。「このチームのように働けば成果が出せる」と信じてもらえる存在になりたいと考えています。

田中:単なる技術的な改善以上の意味が込められた挑戦なのですね。スクラム開発を導入するにあたり、最初に何から着手されたのでしょうか?

長島:まずはスクラム開発の基本原則の理解と、チームの意識改革から始めました。従来のウォーターフォール型の開発では、各工程を順番に進める必要がありました。しかし、スクラム開発では柔軟性と適応性が重視され、継続的な改善が促されます。そのため、スクラムマスターやプロダクトオーナーの役割を明確にし、デザイナーやエンジニアなど、各メンバーが自律的に動ける環境を整えました。

スクラム開発チームで役割の認識を揃える様子

田中:なぜそれが重要だったのでしょうか?

長島:デザイナーやエンジニアなど、異なる専門性を持つメンバーが集まる混成チームだからこそ、プロセスの導入だけでは不十分でした。混成チームの強みは、各メンバーが異なる視点とスキルを持ち寄ることで、より包括的なソリューションを生み出せる点にあります。だからこそ、各専門分野の知識を効果的に結集し、協力体制を強化する必要があります。それぞれが自分の役割をしっかり理解し、効率的に動けるようになることで、最終的にチーム全体の開発速度が上がるという確信がありました。

田中:まさにスクラム開発の特徴である、自己組織化されたチームづくりの土台というわけですね。

長島:はい、スクラム開発は「プロジェクトや進捗状況の透明性」「定期的な振り返り」「振り返りを踏まえた改善」を基盤としており、これらを実践することでチーム全体の協力体制が強化されます。なので単に技術的なプロセスを導入するだけでなく、その根本にあるスクラム開発の基本原則を全員が理解することがまずは大事になります。そのうえで、スプリントプランニングやレトロスペクティブと言った定期的なミーティングでチームのプロセスを常に見直し、継続的に改善する文化を築くことが必要です。そのため失敗を恐れず、迅速に対応する姿勢が、革新的なサービスの開発を支えます。

田中:実際にこの4か月でどんな変化が見られましたか?

長島:開発速度が従来の3倍になり、ユーザーへの価値提供のスピードが飛躍的に向上しました。また、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、課題解決のスピードも上がり、各メンバーがより自律的に動けるようになりました。

田中:ありがとうございました。ここからは『バイトル』でスクラム開発を導入した事例について、2人のPdM(プロダクトマネジャー)にお話を伺います。

ユーザー価値を徹底的に追求!応募数3倍を実現したフロントエンドのスクラム開発

ディップは日本初の「Good Job ボーナス」を搭載したスポットのバイトサービスを立ち上げるという挑戦を成功させ、ユーザーからの応募数が想定の3倍に増加しました。この驚異的な成果を支えたのは、スクラム開発を取り入れた開発プロセスの革新です。その変革がどのように実現され、ユーザー価値を最大化したのか。PdM(プロダクトマネジャー)の山下ロルミスさんに、真相を伺いました。

田中:簡単に自己紹介をお願いします。

山下:山下ロルミスです。アニメ制作会社とゲーム開発会社のディレクター職を経て、2014年、ディップ株式会社に入社しました。商品開発本部 メディアプロデュース統括部部長として、求人メディアの『バイトル』『バイトルNEXT』『はたらこねっと』を担当しています。スクラム開発ではPdMとして、バイトル全体のプロジェクト優先順位や他プロダクトとの連携について、スクラム開発チームが注力すべきことを決める役割を担っています。

田中:まずはプロジェクト概要を教えてください。

山下:ディップは2024年5月に『dip AI』を、10月1日に『スポットバイトル』をリリースしました。このプロジェクトでは、この2つの新サービスと『バイトル』を連携させることで、より良い仕事選びの体験を提供しています。例えば『バイトル』に訪れた求職者に対し、自分の希望職種が決まっていない場合には『dip AI』を、スキマ時間で働きたい人や、自分に合う仕事を試したい場合には『スポットバイトル』を提案するといった体験の設計を行いました。

田中:より良い仕事選び体験のために、どうして今回の取り組みが必要だったのでしょうか?

山下:『dip AI』や『スポットバイトル』など、革新的なサービスを市場に投入するだけでは不十分で、その価値をユーザーに正確に理解してもらう必要があります。私たちはユーザーに対して明確で魅力的な価値を伝えることが不可欠だと考え、今回のプロジェクトに臨みました。

田中:具体的にはどんな改善を行ったのですか?

山下:求職者が仕事を探す流れに合わせ、例えば『バイトル』で仕事を検索する際に検索条件で「単発」を選択すると、『スポットバイトル』の案件をファーストビューで表示させる機能を実装しました。また、検索条件の変更が複数回あった場合に『dip AI』への訴求を表示し、遷移できるような改善を行いました。

田中:今までもディップでは複数のプロダクトを連携することはあったと思うのですが、今回のスクラム開発では何が特徴的だったのでしょうか?

山下スクラム開発チームでユーザーリサーチを徹底的に行い、ターゲットユーザーのニーズや課題を深く理解した点が特徴的でした。インタビューやアンケート、ユーザビリティテストなど多様な手法を用いてデータを収集し、ユーザーの視点からディップのサービスの価値を再定義しました。私たちの目標でもある「ユーザー価値の最大化」のためには、チーム全員でユーザーに対する理解を揃えることが不可欠だったのです。

田中:確かに、ユーザーの声を開発プロセスに迅速に反映させるためには、デザイナーもエンジニアも、全ての関係者が同じ理解を持つことが大切ですね。スクラム開発では、それを実際のプロダクトに反映する際に、具体的にどのように進めていったのでしょうか?

山下:サービスの価値を効果的に伝えるためのコミュニケーション戦略を策定しました。例えばユーザーストーリーを活用して、サービスがどのようにユーザーの生活を改善するのかをビジュアルコンテンツやデモンストレーションを通じて、サービスの利便性や独自性を視覚的に訴求しました。それを踏まえて、「求人検索」→「仕事の詳細確認」→「応募完了」といったユーザーストーリーに合わせ機能改善を実現しました。

田中:それによってどんな成果があったのでしょうか?

山下ユーザーからの応募数が想定の3倍になり、開発に必要なコミュニケーションコストや時間を大幅に短縮することが出来ました。表の成果はまだまだ全体の一部になりますが、素早い変化に合わせて、ユーザー価値を最大化する体制になりました。

田中:スクラム開発でユーザーの理解を揃え、スプリントを回して課題や問題の共有をしてたからこその成果ですね。スクラム開発の挑戦はまだ始まったばかりかと思いますが、最後に今後の意気込みをお願いします。

山下:私たちはスクラム開発を取り入れることで、私たちは日本初の「Good Job ボーナス」を搭載したスポットサービス『スポットバイトル』を成功に導き、ユーザーからの応募を想定の3倍に増加させることができました。スクラム変革は、単なるプロセスの変更ではなく、チーム全体の考え方を根本から変えるものです。この経験を通じて実感したスクラム開発の力を活かして、今後もさらなる革新を追求していきます。

1年なんてふざけるな!開発速度を3倍にしたバックエンドシステムのスクラム開発

現代のソフトウェア開発において、迅速な価値提供は競争優位性を確立するための鍵です。特にバックエンドシステムの開発において、そのスピードはプロジェクトの成功に直結します。しかし、「バックエンドシステムはスクラム開発では対応できない」と考える方も少なくありません。そこで今回は、スクラム開発を活用して開発速度を3倍に引き上げた背景について、PdM(プロダクトマネジャー)の亀田重幸さんにお話を伺いました。

田中:簡単に自己紹介をお願いします。

亀田:亀田重幸です。ディップ株式会社に新卒入社し、約10年新規事業&サービス立ち上げに従事してきました。『バイトル』の新規サービス企画や、人工知能専門ニュースメディア『AINOW』などを立ち上げた後に、社内DXのプロダクト責任者を担当しています。自社のSFA/CRM『レコリン』は約2,000人の営業が毎日利用するプロダクトにまで成長しました。特にビジネス視点でプロダクトデザインを行い、UXを考慮した設計でユーザー価値の最大化を行う事が得意で、今回のプロジェクトでは『バイトル』のバックエンドシステムのPdMとしてチームを引っ張っています。

田中:今回のプロジェクト概要を教えてください。

亀田:今回は『バイトル』と『dip AI』や『スポットバイトル』が連携できるように、想定の3倍の開発速度で大規模なバックエンドシステムの開発を行いました。従来の開発手法では、大規模なバックエンドシステムの開発に1年以上の期間が必要とされることが多くありました。計画段階から実装、テスト、リリースまで、一貫したプロセスを踏むため、その間に市場のニーズが変化したり、技術の進歩に追いつけなくなるリスクも伴います。しかし、私たちは「1年なんてふざけるな、もっと価値を早く届けたい!」と考え、より迅速に価値を提供する方法を模索した結果、スクラム開発を導入するに至りました。

田中:世の中の変化に合わせて、より早くユーザーに価値提供する解決策がスクラム開発だったのですね。どんなポイントがバックエンドの開発と相性が良かったのでしょうか?

亀田:バックエンドシステムの開発は、フロントエンドや他のシステムと連携する必要があるため複雑さが増します。スクラムは短いスプリントを繰り返すことで、定期的に機能をリリースし、フィードバックを取り入れることが可能です。このアプローチにより、開発チームは市場の変化に迅速に対応し、ユーザーのニーズに即座に応えることができるようになります。

田中:なるほど、様々な関係者とコミュニケーションを取りながらチームで進める必要があるからこそ、スクラム開発の手法がぴったりだったのですね。では具体的に何に取り組んだのでしょうか?

亀田:特に、バックエンドシステムの複雑な要件に対応するために、モジュールごとに責任を分担し、各スプリントで具体的な機能を実装・テストするアプローチを取りました。この方法により、開発のボトルネックを排除し、各チームメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を実現しました。また、スクラム開発を効果的に活用するために、適切なツールの導入も欠かせませんでした。タスク管理ツールやコミュニケーションツールを活用することで、チーム内でのスムーズな情報共有や作業の進捗管理を容易にし、開発の透明性を担保し、問題を早期に発見・解決できるような体制を整えました。

田中:結果的にどうなりました?

亀田今まで企画に2.5か月、開発に2.5か月を要していたところ、企画を1か月、開発を1.5か月に短縮しました。スクラム開発を並行稼働させたことで、開発期間を半分に削減できました。さらに、より少ない人数で内製化を進め、約3,000万円だった開発費を1,000万円まで削減しました。また、スクラム開発の導入により、チーム全体のモチベーションも向上しました。短いスプリント期間内で達成感を得ることで、一人ひとりのメンバーがプロジェクトに対する責任感とやりがいを感じるようになり、結果として開発速度の向上につながりました。

田中:ユーザーにより素早く価値を提供できるだけでなく、チームや個人の成長にも繋がるのですね。これからスクラム開発に取り組む人に向けた、最後にメッセージをお願いします。

亀田:スクラムは、バックエンドシステムの開発においても強力なフレームワークとして機能します。従来の開発手法に固執せず、柔軟なアプローチを採用することで、開発速度を3倍に向上させることが可能です。チーム全体の考え方を変え、スクラムの原則を徹底することで、複雑なバックエンドシステムの開発も迅速かつ効率的に進めることができます。私たちの経験から、スクラムを導入することで得られるメリットは計り知れません。もし「バックエンドシステムをスクラムでやれない」と思っている方がいれば、一度その考え方を見直し、スクラムの可能性を探ってみてください。きっと、新たな開発速度と価値提供の方法に驚かされることでしょう。

未来を切り拓く、ディップの開発スタイル

田中:ユーザーに最高の価値を届けるために、チームで課題解決に取り組むディップの想いが伝わってきました。最後に、今後のプロダクト開発チームの意気込みと、採用候補者に向けてのメッセージをお願いします。

長島:ディップのプロダクト開発チームは、未来を切り拓く開発スタイルを確立し、これからもその先頭に立ち続けます。私たちは、不確実な未来に対して、変化に対応しながら迅速に価値を提供することを目指しています。常に革新的な開発手法を追求し、最先端の技術とプロセスを取り入れることで、ユーザーに最高の価値を提供しています。今後も挑戦し続け、常に最高の結果を追求していきます!もしディップのプロダクト開発に興味を持っていただけたら、私たちと一緒に未来を創りましょう。採用情報や詳しいプロジェクト内容については、ぜひお問い合わせください。

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長島 圭一朗

ディップ株式会社 CTO 20年以上に渡り、広告・メディア・EC・IoTなどの様々なWebサービスの企画・開発に従事し、2024年2月ディップ株式会社に中途入社。DX事業、『スポットバイトル』の立ち上げに従事し2024年7月にCTOに就任。ディップ全体のプロダクト開発の改善に従事。

山下 ロルミス

ディップ株式会社 PdM アニメ制作会社とゲーム開発会社のディレクター職を経て、2014年、ディップ株式会社に入社。商品開発本部 メディアプロデュース統括部部長として、求人メディアの『バイトル』『バイトルNEXT』『はたらこねっと』を担当。

亀田 重幸

ディップ株式会社 PdM ディップ株式会社に新卒入社、約10年新規事業&サービス立ち上げに従事。バイトルの新規サービス企画や人工知能専門ニュースメディア「AINOW」などを立ち上げた後に、社内DXのプロダクト責任者を担当。自社のSFA/CRM「レコリン」は約2,000人の営業が毎日利用するプロダクトに仕上げ、社内外で表彰をされている。特にビジネス視点でプロダクトデザインを行い、UXを考慮した設計でユーザー価値の最大化を行う事が得意。著書に「いちばんやさしいDXの教本」 HCD−Net認定 人間中心設計専門家

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田中 雄登

dip people 4代目編集長 2021年 新卒(既卒)入社。1年目から採用人事として新卒採用に携わりながら、会社横断プロジェクトを推進するなど組織の枠を超えて活躍。大学時代は約30ヵ国を渡り歩きながら国際法や政治学を学び、NPO/NGOや政府機関でのインターンに従事。現在は商品開発本部のHRBPや 採用オウンドメディア "dip people" の編集長として幅広く活動中。馬刺しと牛乳が好き。