データサイエンティスト職最終選考官が語る、新卒に求めるものと未来への展望

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進藤 圭
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dip people編集部
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こんにちは。2024年4月にディップに入社しDataBrain課に配属されました、久保です。今回は執行役員 商品開発本部長であり、データサイエンティスト職の最終面接官も務める進藤圭(シントウ ケイ)さんにお話を伺いました。ディップのデータサイエンティスト職の社員が働く組織のひとつであるdip data design. Lab、そしてDataBrain課はどんな組織なのか、そしてどんな人と働きたいと思っているのか、詳しくお話いただきました。

進藤さん、ディップとAIの出会い

久保:本日はよろしくお願いします。簡単に今までのご経歴を教えてください。

進藤:大学の頃は勉学よりもビジネスに夢中な学生でした。2度の起業を経験し、2回とも失敗したので「もう起業はいいからサラリーマンになりたいな」と思って就職活動を始めました。そして選考を受けた中で一番変な会社で、「やりたいことをやってみれば」と言ってくれたディップに入りました。最初の1年間営業担当を経験してから、2009年頃ナースではたらこという新規事業立ち上げに参加し、その後は、バイトルの企画、経営企画、マーケティングなど複数の異動を経験しました。あとは2012年頃のまごラブや、2014年頃の聖地巡礼マップというプロダクトを作ったり、2016年頃には投資事業を始めたり、2020年頃にはDX事業を始めたり、3冊の本を書いたりもしました。そして今はバイトルやはたらこねっとの企画開発とマーケティングを担当している商品開発本部の責任者をやっています。

久保:もともとはバイトルなどの企画開発やマーケティング、新規事業企画をやられてきたんですね。進藤さんがディップでAI関連の事業に関わるようになったのはどのタイミングからなんですか?

進藤:入社した当時ディップではバイトルやはたらこねっと以外に「ジョブエンジン」というサービスを運営していたのですが、そのサービスがデータの自動収集と自然言語解析の技術を使っていて、それがきっかけで興味を持って学び始めたのが最初ですね。そこからRPAのツール、データ収集やUI操作の自動化ツールなどを使って社内の業務自動化をはじめました。

久保:始まりはディップ社内の業務自動化だったんですね。

進藤:そうです、求人サイトの会社ってたくさんの書類作成作業や、管理画面のボタンを押す業務が発生します。それらを自動化するんですよ。社内DXを進めていくと、データが集まってきてAI化を検討できるようになりました。データ収集と分析ができるようになったイメージです。データが集まってきたのでいよいよAIを作ろうとしたけど情報がない。ということで自分たちでAINOWというAI専門メディアを作りました。

久保:AIを開発したいけどノウハウがないからまずメディアを作って情報収集するって発想が面白いですね。

進藤:みんな情報がなくて困っていたんです。AINOWは今やAI領域最大級の専門メディアになっていますね。そのサイトを一緒に作ってくれたのが大学や大学院で機械学習を学ぶ学生インターンやそこから社員になってくれた新卒社員たちでした。彼らと一緒にAIを作り始めました。

久保:当初は学生や新卒が主力だったと。内製でAIを作っているんですか?

進藤:最初はレコリンというCRM(社内の営業担当が顧客情報を蓄積するツール)を開発して、そのデータを使って顧客リストの名寄せや、アポイント獲得の推薦に自然言語処理や機械学習を使ったところから始まりました。これは社内で内製開発をしていますね。

全社のデータとデータ関連人材を集めた「dip data design. Lab」

久保:dip data design. Labはいつどういった背景でできたんですか?

進藤:お話した通り、社内にはCRMやサイトのデータがたくさんあり、少しずつAIエンジニアも採用できるようになってきました。サイトのデータ分析・活用でも世界有数の実績があります。AI開発に関しても、求人原稿の審査を自動化するKENSERのような自社AIも作れるようになり、世界的な検索サービスの会社やSNSの会社とレコメンドエンジンを作ったりと開発の実績もできてきました。でも、各部署にバラけている。そこで全社のデータとデータ関連人材を1か所に集めて、本格的に活用するチームを作りました。それがdip data design. Labです。

久保:dip data design. Lab(以下:ddd)って変わった名前ですよね。

進藤:データは分析とかAI開発をする前に、まずどうやってデータを収集するか、どういった価値を生ませるか、デザインする必要があります。なのでデザインをミッションに入れたかった。もうひとつは、自由な環境で研究開発する要素もデータサイエンスには必要。なのでサイエンスもミッションに入れたかったのでラボ。社員にも覚えてもらいやすいように語呂よく頭文字を取ってdddにしました。

久保:dddにはDataBrain課とデータスチュワード課の2つの組織がありますがそれぞれどういったミッションを持っているのでしょうか?

進藤:DataBrain課は「データの脳みそ」。データを使ったプロダクト開発や価値提供を最初から最後までやることをミッションにしています。課の中にはユニットという小さいチームを複数作っていて、データ基盤、データサイエンス、データソリューション、プロダクト開発の4ユニットがあります。それぞれ順番にデータを、集める、分析する、誰でも見れるようにする、AIを作る、をミッションにしています。部署ごとに担当を配置するのではなく1か所に集め小さいチームで完結できるようにしているのがポイントです。

データスチュワード課は「データ利用の世話人」。社内でのデータ活用にまつわる課題を解決することをミッションにする非エンジニアチームです。データ収集やAI開発は現場の協力が不可欠です。その現場の代表が集まって、活用を阻む課題を解決してスムーズに仕事ができるようにしています。

いろんなデータサイエンスの現場を見てきた結果、こんなチームになりました。

久保:DataBrain課の組織について伺いたいと思います。チーム構成はどうなっていますか?

進藤:お話した通り、データ基盤、データサイエンス、データソリューション、プロダクト開発の4ユニットがあります。それぞれ基盤には6名のデータエンジニア、サイエンスには6名のデータサイエンティスト、ソリューションには3名のデータアナリスト、開発には3名のAIエンジニアが所属しています。だいたいこのチームで仕事が進みます。

久保:DataBrain課の雰囲気はどう感じますか?他の部署と違う特色があると感じることはありますか?

進藤:大学の研究室のような雰囲気といえばよいでしょうか。他の部署と比較すると「会社っぽくない」組織かもしれないですね。データサイエンス系の学部や大学院を卒業したメンバーが集まって、年齢や性別など関係なくフラットにデータや実装方法に関する議論などをワイワイやっています。服も私服ですし、そこだけ見ると研究所感もありますかね。

久保:進藤さんは現在ddd、そしてDataBrain課にどのような立場で関わっているのでしょうか?

進藤:私は商品開発本部長、プロダクトの開発責任を負う立場としてサイトのプロダクトの企画や開発の中でデータ分析やAIを組み込むことがあるので、その際にdddのチームと一緒にプロダクト開発を行います。また、dddなどの社内DXやデータの組織をまとめるCorpDX統括部部長の立場として、データ組織やデータの利活用プロセスの設計や実現もdddのチームと一緒に行います。困ったら相談、思いついたら相談、たまに焼肉をおごる、いわばお父さん的ポジションですかね。

ディップのデータサイエンティストとして活躍する人材とは

久保:ディップのデータサイエンティストとして活躍しているという社員に共通点はありますか?

進藤:変な人、という共通点があります。狙って変人採用をしているというのもありますけど。例えば呉さんは休日に10キロくらい歩きます。変。彼はもともと台湾からの留学生で、一橋大学で国際政治学を専攻していた時に因果推論を学んでそれをビジネスに使いたくて入社してくれました。現在はサイトの中のレコメンドエンジンや、売上予測などに知見を活用しながら、学会発表や論文発表でも活躍しています。そのほかにも、地方が好きすぎて移住して地方の課題を軸にプロダクト開発をしている人、カレー屋を開拓し続ける人など、一見するとちょっと変わった人が活躍する傾向にあります。

新卒データサイエンティストに求めるもの、期待すること

久保:新卒でデータサイエンティスト職を採用している会社はまだまだ少ないと思いますがディップではいつから採用しているのでしょうか?また採用を始めたきっかけを教えてください。

進藤:2017年ごろからでしょうか。データサイエンスの分野はまだまだ新しい分野なので、経験者という人も当時はほとんどいませんでした。ベテランとルーキーの差がなく、ものによっては学生のほうが優秀ということもありますしね。私も新卒で入社した組ですが、ディップという会社自体も15年以上前から新卒採用を中心に会社を作ってきました。そんな経緯もあって新卒採用を主軸に採用をはじめて4年ほどが経ちます。

久保:ディップにデータサイエンティストとして入社した新卒社員はどんな仕事を任せてもらえるのでしょうか?

進藤:2つあって1つ目はチームとしての仕事を分業するものです。最初の半年くらいは先輩とセットになって仕事をし、事業、データの種類や業務に関する理解を進めていきます。3か月くらいたつと徐々に自ら扱えるデータや領域が分かってくるので、テーマをもって分析活動に入ってもらいます。例えば「売上予測プロジェクトのデータがあるので、過去の売上の移動平均、季節指標、プロモーションやイベントの影響を示すバイナリ変数を出していきましょう」というように分析を分業する形で先輩から業務が割り振られます。

2つ目は、与えられたテーマについて自分で提案する形で仕事を任せてもらえるものです。例えば「求人原稿の自動生成」というようなテーマを元に分析結果をレポーティングして、次の施策の提案までやってもらいます。提案が良いものであれば、次の施策として採用です。実際に直近でリリースしたばかりのAIエージェントの中にもテーマ分析から生まれた技術が使われています。

久保:どういった経験やスキルを持っている学生さんが活躍できそうですか?

進藤:実際に1年目にプロダクトを出す社員が毎年いて、活躍してくれています。学校の授業やインターン、あとは趣味でもいいので、データ分析や可視化の実務経験、分析のためのデータ前処理、統計学の知識があると良いですね。さらに専門分野として自然言語処理の知識、機械学習の知識があるとプロダクト提案がしやすくなります。SQLでのデータ処理やPython、R等のアルゴリズム実装経験があると、自分で作っちゃう、というところまでできると思うので1年目からプロダクトを作れて楽しめそうですね。

久保:新卒でデータサイエンティスト職として働く私のような社員にどのような期待をお持ちでしょうか?

進藤:先ほどもお話したように、データサイエンスは経験者と未経験歓迎の差が小さい分野です。なおかつ、私たちが運営する求人サービスは多くの学生さんが使ってくれています。ユーザーの感覚に近いのは私たち既存社員より新卒の皆さんです。未経験だから、と尻込みすることなく、ガンガン、スピード感を持ってやりたいことを提案してくれるのを期待しています。

アルバイト探しをより便利にスピーディーにする「AIエージェント」

久保:2023年の4月からディップのAIエージェント事業への進出が発表されました。AIエージェントとはどのようなものなのでしょうか?

進藤:対話型でお仕事を紹介するサービスです。検索エンジンで情報を探すのが上手な人と苦手な人がいるように、仕事探しでも仕事を見つけられず困っている人がいます。転職支援ビジネスの領域では、人材紹介サービスなどで人が直接求職者の話を聞いて仕事を見つけてあげる、その人の良いところを見つけ出してあげる、といったことが行われています。でも、アルバイト探しの領域ではこれまで提供されていませんでした。コストが見合わないことが大きな理由です。本来は仕事経験の少ないアルバイトのユーザーさんにこそこういったサービスを使ってもらえるようにするべき、という考えでサービス開発をおこないました。

もう、プロダクトができているので、ぜひ触ってみてください。例えば「モテるバイトを探して」とか「おなかがすいてるんだけど」といった、ストレートに仕事探しではなくてもあいまいなニーズに応えて仕事を探すことができるようになっています。

久保:AIエージェント事業本部でも新卒のデータサイエンティスト職の採用は行っていますか?行っている場合はどんな業務を任せてもらえるのでしょうか?

進藤:AIエージェント事業本部では今のところは新卒採用をしていません。ただ、私たちdddのメンバーが兼務する形でAIエージェントの開発を行っていますので、dddの新卒採用経由で配属されることはあります。任される仕事はAIエージェントに関わる全ての業務です。例えば、AIエージェントが利用するデータの分析、分析に基づいたレコメンドエンジンの開発、会話文の分析、生成AIを使ったアプリケーション開発などがあげられます。

今後の展望

久保:最後にデータ分析やデータ活用の観点からこれから進藤さんがディップでやっていきたいことがあればお伺いしたいです。

進藤:新しい事、ワクワクすることをどんどんやっていきたいです。ディップは営業が求人ニーズを見つけ、求人をつくり、サイトがユーザーをナビゲートし、その人が仕事を見つける、見つける過程の会話…上げればきりがない程たくさんのデータを持っています。特に営業の活動データや営業担当が顧客から聞き出してくるデータは日本有数です。例えばこれを使って、仕事が生まれて働く人が見つかるメカニズムを明らかにして、予測モデルを作れば仕事を見つけるスピードはどこよりも早くなります。そうなれば社会がちょっと良くなる新しいことができそうですね。

おっとこれ以上はまずいですね、新しい事、ワクワクすることをどんどんやっていきたい人、お会いできるのを楽しみにしています!

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執行役員 商品開発本部 本部長

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