やみくもな効率化よりも使う人に寄り添ったDXを 750万円のコスト削減に成功した新労務システム導入の裏側に迫る
ディップではデジタルの力による業務効率の向上に日々取り組んでいます。
人事の、入社をはじめとする労務手続きは、2020年度まで基本は紙ベースで行われ、一部の手続きがデジタル化されてはいましたがわかりづらいUIで、様々な要因が絡み合いとても不便でした。
その状況を改善すべく立ち上がった今回のプロジェクトは、2021年3月にSmartHRの全社導入を果たし、さっそく工数削減などの効果を生み始めています。
このようにしっかりと効果のあるDXを遂行できた裏側には、効率化よりも従業員視点を大切にするという考え方がありました。
今回はそのプロジェクトのリーダーを担当した、山中彩に話を聞きました。
様々な要因が絡み、使いづらく、工数も増大していた導入前の運用
――まず導入前の状況、運用方法を教えてください。
まず、各種人事手続きが紙ベースになっていて、処理完了までのタイムラグがありました。また処理状況を確認したいときは紙書類を探したり出社して確認しないとならないシーンもありました。
そして、使用していた旧労務管理システムは旧アウトソース先が提供していたものでしたが、従業員が使用する際のUIがわかりづらく、人事担当者がフォローする工数もかかっていました。
また、旧労務管理システムからの人事情報は、一日に一回限定のCSV連携で後続の社内システムに連携されていました。このためタイムリーに情報連携がされず、人事・システム部門でのエラー解消のタイムラグが発生し、正しい情報が反映されるまで数日かかることもありました。
ほかにも、旧アウトソース先の対応柔軟性や変更への対応スピードが当社の変化のスピード感とずれる部分が多くありました。会社は変化していくものの、運用の変更には時間がかかるので、そのタイムラグを埋めるために人事作業者が手作業で変更後の運用を何とか実現していたという状況もあり、手作業による対応工数の増大と手作業によるミスの発生リスクが課題でした。
――システム導入検討の経緯について教えてください。
従来から上記課題は指摘されていましたが、コロナ禍において一つ目の課題が顕在化したことが大きいです。
まずは、複雑化していた雇用契約管理機能の一部をシステム化できないかというところから、システム担当者と共に検討を開始しましたが、様々なシステムをお伺いしていく中で基盤となる人事システム自体を刷新する方向性となりました。
業務をゼロから見直し、従業員が本当に使いやすい状態を目指す
――どのシステムを選びましたか。
SmartHRを選定しました。
――そのシステムの選定のポイントになったところはどこですか。
SmartHRの選定ポイントはたくさんあるのですが、一つ目は電子書類回収に対応しているという点です。
また、iPhoneからの利用に対応していることや、現状よりもコストダウンできることもポイントです。
従業員が使いやすいインターフェースであることも重視しました。こちらは、従業員満足度・ロイヤリティの向上に直結するからです。
ほかには、API連携が豊富であることも評価しました。他に使いたいシステムが出てきた場合の連携対応力は大切だと考えています。
そして、会社としての機能改修の対応力に期待できたという点もあります。ディップの人事の思想と一致していたことが大きいです。
――どのような体制で取り組みましたか。
人事担当、システム担当でそれぞれ責任者・PM(プロジェクトマネージャー)を擁立し、それぞれのPMが各作業者への指示を行う体制をとりました。
――本取り組みで困難だったことについて教えて下さい。
既存の人事システム導入時のメンバーがほぼおらず、なぜ今この運用になっているか、なぜこのような設定になっているのか、現状の把握をすることが大変でした。
――どのように問題解決しましたか。
現状を無理に改変しようとせず、法律的、一般的に何がスタンダードで、何が外してはいけないポイントなのかを専門家やアウトソーサーに都度確認しながら設計を進めました。その中で、以前のアウトソース先の運用のために対応していたことも多くあったことがわかりました。
ゼロベースで業務を改めて見直し、従業員の使いやすさや労基法・コンプライアンス的に押さえるべきポイントを把握し、作業者の工数を減らす運用を目指して実装を進めました。
結果的に紙手続き書類は一部の行政手続きに関連するものは残るものの、大幅削減に至っています。
また、社内諸制度利用のための申請書のうち、社内規程に様式(紙書面)が指定されているものが複数ありましたが、本運用変更を見据えて事前に電子申請でも対応可能にする規程改訂を行っています。
全社導入達成。書類回収のスピードアップ、年間750万の費用削減と、工数の大幅削減に成功
――現在の運用を教えてください。どのような利用方法をしていますか。
全社で利用を開始していて、入社前の内定者~既存の従業員、退職後の従業員でも利用可能にしています。
――どのように課題が解決されましたか。
旧構成では全体的にタイムラグや使い勝手が問題になっていたのですが、それが解消されました。
入社手続きにおいては、これまで紙運用であったものを全てSmartHR上で行い、必要な説明はBoxのOPENリンクを作成しSmartHRからのメールに組み込んで案内しています。アウトソース先からの書類の発送や入社者に書類を書いてもらう時間が平均3日短縮され、スムーズな入社手続きが実現できています。
在職者利用に関しては、これまでIE(Internet Explorer)でのみしか使用できないシステムで、UIもわかりづらかったため、操作に関するお問い合わせが多くありましたが、SSOログインや使いやすいUIにより、従業員からの操作に関するお問い合わせが大きく減少しています。
退職者利用に関しても、退職者は源泉徴収票や給与明細を退職後に閲覧・取得する必要が生じるシーンがあるため、退職後に郵送を行っていました。しかし紛失されてしまう方も多く、再発行のお問い合わせ・対応工数が双方に生じていたのです。退職者も必要な帳票をSmartHRで閲覧可能な状態にすることで、双方の問い合わせ工数が減少するものと考えています。
また、システムとアウトソーサーを入れ替えたことにより、年間750万円の費用削減になっています。
そして、旧システムではCSV連携のみだったところから、SmartHRではAPI連携ができるようになったため、機動性も上がり後続システムとの連携も迅速になりました。
――導入してよかったと思う点や便利な機能があれば教えてください。
「カスタム従業員項目」は便利だと感じています。従前のシステムではシステム上の項目名を変更するだけでも改修費用と期間を要していましたが、SmartHRはデフォルトの項目以外は自由に変更できることが魅力でした。
カスタム項目を使用した申請フォームを作成することで、人事担当者は情報がSmartHRに集約され、情報が点在しなくなり運用工数が減少、また従業員はSmartHRを見ればよい、という状態を実現できていることは大きいと考えています。
――運用上で生じている課題などはありますか。
未来日の履歴保持が現状ではできないため、未来日データの登録や抽出は運用面でカバーしています。
今後の改善リリースを待ちつつ、現状では確実な運用をできるように、各担当者と連携して進めていきたいです。
むやみな効率化ではなく、従業員ファーストな改善を目指す
――今後取り組みたい改善はありますか。
身上変更の申請など、人事担当者にとっては見慣れたものであっても従業員にとっては初めてのこと・不慣れなこと。初めてのことは不安がたくさんあって、そこにわかりづらいシステムやわかりづらい説明が重なると、さらに相手に不安を抱かせてしまうと思います。
システムによる効率化はもちろん大切ではありますが、双方の工数削減などの効率だけを考えるのではなく、従業員の皆さんがより安心できるように、困ったときに欲しいものがすぐわかる、すぐ手が届く、そんなシステムになるように引き続き追加開発・改修を進めていきたいと思っています。
ありがとうございました!