いよいよ始動!「AIエージェント事業」の牽引役の一人、岡本周之さんがdipにジョイン!(後編)

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岡本 周之
ディップ技術研究所所長兼CTO室長 ▼詳細

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dip people編集部
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7月よりディップ技術研究所所長 兼 CTO室室長としてdipにジョインされた岡本周之さんのインタビュー。前編に続き、後編をお届けします!

ミスの再発防止に大事なこととは?

鬼頭:ところで、日立製作所に在籍中、インドの研究所で副所長をしたみたいですが、その時代の話を聞かせてください。

岡本:インドの研究所は、現地ビジネス向けの研究開発をミッションとする50人程度の組織で、半分くらいがソフトウェア系の技術を研究する人。そのマネジメントを任されたんです。

鬼頭:苦労した点は?

岡本:文化の違いが大変でした。考え方が大きく違うんです。日立には、「失敗を共有して、再発防止に生かす」という姿勢が社内カルチャーの根底にあるんです。日立製作所が長年開発してきた発電所や金融システムなどの社会インフラでは、たった一不具合が大きな障害につながってしまいます。だから、わずかなミスが見つかった段階で、徹底的な原因究明と改善を全員で協力してすすめる文化があります。

鬼頭:それは日本企業の共通文化かもしれないですね。トヨタの品質管理においても、「失敗から学ぶ」ことが徹底されていますよね。

岡本:そうですね。ところがインドでは、むしろ逆に教わってきた人が多いんですよ。人口が多くて競争が非常に激しいためか、失敗を認めることは負け』だ。決して認めてはいけない」と考えるんです。ただ、それでは日立全体の成長にはつながらないだから私は、「ミスを犯すことそのものよりも、同じミスを繰り返ことの方が問題。個人を責めるのではなく、プロセスを改善して会社全体で再発防止するという方針を現地スタッフに何度も説明して、意識の変革を進めていきました。

鬼頭:それは大変だ…。

岡本:「ミス」にまつわる認識の仕方について、体に染みついた価値観を変えていくわけですから大変でした(笑)。そのためにも、安心して問題を早期に報告できる雰囲気づくり」「根本的な原因分析による、仕組みでの再発防止」いう2点を意識しました。問題発見に関して一番最悪なケースは、お客様のクレームで初めて気づくことなんです。現場の担当者は何か起きている事は把握していたはずなので、「絶対に怒らないから、ミスや問題は早く社内でシェアしてほしい」と伝えました。早い段階で打ち手を考えた方が選択肢が増え、手のほどこしようがあるんです。後になればなるほど、事態は悪化していきますよね。

再発防止に当たっては、ミスが起こった背景にまでさかのぼって根本原因を分析しました「うっかりしてました」「漏れてました」という担当者の反省で終わらせない。個人の「今後は気を付けます」に頼ると、絶対にミスは繰り返されるので、そもそもミスが起きにくいように仕組みを整備するんです。その両側から働きかけてミスを減らしていきました。

マネジャー職でもクリエイティビティーを発揮!

鬼頭:一般に、ものづくりに関心が高いエンジニアは、経営やマネジメントには就きたがらない傾向があるように感じますが、岡本さんは比較的若い時期からマネジメント職を経験していますね。

岡本:マネジャーの仕事は、例えばデータ収集のような現場作業は減るけれど、収集したデータ解釈の議論や、そもそもの全体戦略の検討など、クリエイティブな部分は意外に多いんです。いわば、ものづくりを「一つ上の視点」から味わえる。そのうえ、マネジャーになって経営の視点を身に付けると、むしろできることが増えるので、これも面白いなと思ったわけです。メンバーの育成も、私は「できなかったメンバーが、できるようになる」ことが嬉しいタイプなんで苦になりませんそれに自分一人にできることは限られていますから、メンバーに任せられる部分が増えていくと、自分はさらに他の仕事に進んでいけます。

鬼頭:ものづくりの現場から離れると、最新情報に疎くなる感覚はありませんか?

岡本:ものづくりにおける核心の部分というか、概念的でも少し深いところが分かっていれば、ビジネスを検討する上では十分な気がしています。ただ、ベンチャー企業にいると、部長・本部長クラスでも現場作業はつきもので、久々に作業すると「やっぱり楽しいな」って感じました。本当はマネジャーがそこに時間を使ってはダメなんですけどね。

鬼頭:なるほど。ところで、在籍していた日本コンピュータビジョンの顔認識システムの特長は、簡単に言うと、どういう仕組みになっているのですか?

岡本:一般的に、AIによる顔認証システムでは、眉頭・目尻鼻の穴・口角・頬のラインなど顔の特徴的な場所を何点も測定し、その並びがどの程度本人と似ているかで判断しています。中国にセンスタイムという企業があって、顔の認証技術では世界トップレベルの会社なんです。そこと技術提携してソリューションを開発し、日本企業に提供していました。顔の情報というのは保護されるべき個人情報です。難しかったのは、開発元が中国ということで、米国に関連している企業だと導入の許可が取れなかったり、データが別利用されてしまう危険はないかという不安感を顧客が感じることが多く、その不安を払拭するのには苦労が絶えませんでした。

「AIエージェント事業」のキーポイントは現場社員がもつ生のデータ

鬼頭:今後はAIの世界も競争が激化すると思いますが、AIの競争を制する「勝ちパターン」というものがあるかご意見を聞きたいです。

岡本:テキスト生成の場合だと「自然な日本語作成」という機能は他社と同じ技術をベースに使う可能性が高いので、差別化できるのは入力するデータの部分です。ディップで考えると、営業の皆さんやCAさんがインターネット上にはないリアルな情報を入手できることが最大の強みです。それをAIに学習させることで競争優位性を担保できると期待しています。ディップだけが入手できる生の情報こそが、AIエージェントの存在感を際立たせるはずです。

鬼頭:僕としては、AIがヒトでは思いつかないようなマッチングを生み出せると面白いと期待しているんです。

岡本:なるほど、そこはあまり考えたことなかったですね。ECサイトのおすすめ」方式だと大規模言語モデルの技術とは違うので、そこをどう混ぜていくか、混ぜ方が肝要な気がします

鬼頭:ChatGPTも含めて、今の大規模言語モデルって、会話のどの部分に着目するかっていう抜き出し方の部分にAIのアルゴリズムが働いているよね。同じように、人と企業をマッチングさせる場合でも、人の職歴や能力、興味などの情報、企業や仕事に関する情報のうち、どれに着目をして、マッチングを判別するのかが重要になってくると思うんです。そして、いつかはヒトが思いつかないような想定外のマッチングが生まれると面白いなと思うんです。ユーザーが、「どうしてこの仕事をAIに薦められるのか、皆目思いつかない」と感じながらも、実際にその仕事に就いてみると、「想像以上のパフォーマンスを発揮できた」みたいなことが起こったら、すごいなと思うんですよ。

岡本:たしかに、その次元まで行けたら面白い。現状の「フラグ」の世界からもう一段進めるということですね。今は、人間が検索・絞り込みのフラグを決めてますよね。女性多めとか、ミドル活躍中とか服装自由とかっていうような。深層学習のメリットを生かすなら、サービス提供側の人間が細かく考えるのではなくて、持っているデータを全部ぶち込む全部の情報を突っ込んであげると、コンピューターが「いや、そのフラグじゃなくて、この特徴こそマッチングのポイントですよ」って出してくるっていう。そっち側にいけたらガラッと変わりますね。人が頑張るのではなくて、データの力で量を質に変えてもらうっていう方向なら、いける気がします

技術と人を大切にするディップとは、運命の出会い

鬼頭:ところで、最後になりますが、ディップに入社を決めた理由について教えてください。

岡本:転職エージェントからの紹介があったからなんですが、私がAGさんに伝えていたことは4つあって。1つ目は、技術と人を大事にし、顧客指向で考えられる。そういう会社かどうか。カルチャーやスタンスですね。2つ目が、ビジネス。先端技術やそれを使いこなすノウハウを強みにしているビジネスかどうかというところ。3つ目は自分の役割です。会社の経営層のリアルな悩みや判断をそばで感じ取れて自分が成長できるポジションか。あとは自分の強みを活かしたいので何かと何かをつなげる仕事ができるかどうか。4つ目は家族を説得できる待遇です。この4項目で会社を紹介してもらい、ピッタリのところからご縁をいただいたかたちですね。

鬼頭:印象としては、バイトルで有名な会社っていう感じですか?

岡本:実は、バイトルは知ってましたが、それがディップという社名と一致しなかったくらいです。ただ、いろいろと話を聞く中で、DXに注力していることや、フィロソフィーへの共感も高まっていって。私がやりたいことや、「会社にはこうあってほしい」ということがそろっていて「これはすごいご縁だ!」と思いましたね。

鬼頭:その「こうあってほしい」というところって、何ですか?

岡本:例えば、「社員幸福度NO.1」をめざしているところ、そして「技術と人を大事にする」ところ。「人を大事にする」ということが私の中で大きくて。dipは評価制度やサービスにまで、「人が財産」という思いが組み込まれていて、面接の会話からも本気度を感じました。大友さんの書籍を読んでも一環して信念が伝わってきたので、本物だなと思いましたね。

鬼頭:なるほどね。決め手が「人」というところが意外で面白いですね。「この製品をつくりたい」「この技術をつくりたい」というのではなく、最後のトリガーが人というところに意外性を感じました。

岡本:IT系は技術に注力する企業が多いので、技術面で自分の希望と一致するところは比較的多いんです。ですが、「人を大事にするところ」や「ユーザーファースト」に真摯に向き合うというのは会社の根幹に関わる話なんです時間をかけて成熟する会社の軸ですから、今できていなかったら、当分の間、実現できない。一朝一夕で成し遂げられるものではないだけに大切にしたいと思っていて、ディップには私がめざすものがそろっていたということなんです。

今後は各部署を「横断する、つなぐ」というところにもコミットしていき、dipのさらなる飛躍に貢献できればと思ってますので、社員の皆さん、これから是非よろしくお願いします!

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岡本 周之

ディップ技術研究所所長兼CTO室長 1998年に日立製作所に入社し、ソフトウエアエンジニアリングの研究開発を主導。手がけた分野は、コンシューマー製品、産業機器、金融ソリューションなど多岐にわたる。2020年からは日本コンピュータビジョンに転職し、AIによる画像認識の日本市場向けサービス開発と運用をリード。2016年博士号取得(情報科学)。

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『dip people』の企画・運用・制作を行い、ディップの情報を社外へ発信しています。