いよいよ始動!「AIエージェント事業」の牽引役の一人、岡本周之さんがdipにジョイン!(前編)

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岡本 周之
ディップ技術研究所所長兼CTO室長 ▼詳細

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dip people編集部
▼詳細

7月よりディップ技術研究所所長 兼 CTO室室長としてdipにジョインされた岡本 周之(オカモト チカシ)さんは、ソフトウエア、ハードウエア、AIテクノロジーなど多方面でご活躍されてきたエンジニアで、スタートアップの経営幹部のご経験もある方です。国内外で73件も特許を申請し、実際に取得済みの特許はなんと 42件以上(日本29件、アメリカ13件、他数件)にのぼります。これからdipが注力するAIエージェント事業の牽引役の一人となる岡本さん。今までの経歴で培ってきた強みについて、CHOの鬼頭さんにインタビューしていただきました!※後編はこちら

運命か、必然か。30年の時を超えて…

鬼頭:なんとも奇遇なのですが、僕たちは、同じ大学の同じ学年、同じ工学部出身なんですよね…。あれれ…?今になって、急に記憶がよみがえってきたんですけど、もしかすると、僕たちはかつて学生時代に近くにいましたよね?

岡本:そうです(笑)。教養のクラスが同じで、よく一緒に時間を過ごした仲間でしたよね。『鬼頭』という苗字は珍しいので、僕は覚えていますよ。

鬼頭:えっ!まさか、まさか、あの岡本くん!え~!!びっくりしました(笑)!!

岡本:こんな偶然ってあるんですね!とても懐かしいし、再会できてうれしいです!思い出話はいろいろ尽きませんが、それはまた後日ゆっくりと(笑)。

鬼頭:ところで、岡本さんは広島県出身ですが、中国地方からわざわざ名古屋大学に進学する人って少ない感じもして、どうして名古屋大学に進学したんですか?

岡本:もともと航空系の分野に興味があって、航空学科があるのは名古屋大学と他に数校だけ。のちにロボット系にも興味が湧いて、名古屋大学の電子機械工学科に進学したんです。

鬼頭:大学や大学院では、どんなことを研究テーマにしていたっけ?

岡本:回転体の振動をシミュレーションする研究をしていたんですよ。

鬼頭:回転体の振動とは、具体的にいうと?

岡本:例えば、発電所のタービンとか、ヘリコプターのローターって、軸に使うベアリングとの隙間などの影響でさまざまな周波数の振動が発生するんです。回転により、どのような振動が発生するのかをコンピュータを使ってシミュレーションする研究をしていました

鬼頭:大学院卒業後に入社した日立製作所を選んだのは研究のつながりですかね?

岡本:研究室の教授推薦ではあったのですが、実際に配属されたのは学生時代の研究とは全然関係ない部署で(笑)。テレビやガラケー、ビデオカメラなど、映像・音楽・情報系の家電を扱う部署で、新商品や新機能をつくる仕事をしました。消費者が日常的に使用する家電や電子機器を「コンシューマーエレクトロニクス」と呼ぶのですが、入社から12年間はこの分野の研究・開発に携わりました

新しい技術に触れるとワクワクするタイプ

鬼頭:工学部で大学院まで卒業すると、研究室での研究テーマや技術分野から全く違う分野で就職することに抵抗感がある人も多いと思いますが、そういう感情はなかったですか?

岡本:全然ないですね(笑)。私は新しい技術に触れることが好きで、とにかく「新しい技術に触れる」という体験ができれば満足感を感じるタイプなんです。「たとえコケてもいいから、新しい技術をやらせてほしい」という考えの持ち主なんですよ。例えば、日立製作所は重電メーカーとして有名ですが、その分野の技術はかなり完成されています。成熟した研究の精度を高めていくよりも、「ポシャってもいいから新しいものにトライできる部署」を希望したんです。

鬼頭:新しいものが大好きというのは、昔から?

岡本:そうですね。私は「理詰めとヒラメキ」の両方を味わうことができれば、それで楽しく仕事ができるんです(笑)。日立には多様な部署があって、私は「新しいことをやりたい」といつも言っているので、結果的に3~5年ごとに新たな挑戦をさせてもらえました。「せっかくならやりたがっている人にやらせてやろう」ということで白羽の矢が立つ形でしたね。

鬼頭:新しいものに出会うと心躍るタイプなんですね。確かにここ20年間はテクノロジーが急速に進化して、変化のダイナミズムが味わえる面白い時代でしたね。

岡本:そうですね。たとえば電化製品をネットワークにつなぐ時、OSにLinuxを使うとより高度なことができます。そんな風にして先端技術を突き詰めていくうちに、だんだん私は社内でもソフトウエア工学のエキスパートになっていって、全社横断のIT技術の研究所でも主任研究員を勤めました。新しいものが出るたびに、仕組みがどうなっているのか知りたくてワクワクしながら学んでいた頃ですね。そうするうち、面白いことに、私の部署で開発した技術が産業用の制御機器など、伝統的な製品へ展開されるということも起こっていったんです。

鬼頭:なるほど!個人向けの小さな情報家電を便利にするために発展した技術が、産業用で品質重視の大きな制御装置などにも展開されて、日立製品に広く寄与したということなんですね。それはワクワクするなぁ!とはいえ、たとえば制御機器などにソフトウエアを実装する場合、オープンソースのLinuxを選ぶことには反発もあったんじゃないですか?

岡本:もちろん反論がありました。Linuxに限らずクラウドなど、新技術が出たばかりの時って、たいていの人は使いたがらない。「変化」を嫌うんです。みんな変わりたくない。

鬼頭:「不具合が出たら誰が責任とるんだ」という思考ですよね。

岡本:ですから、新技術を取り入れるメリットを社内であちこち説明して回りました。

鬼頭:大変な作業ですよね?どう進めたんですか?

岡本:基本的には『黒船』方式です。「あそこの会社はもう使ってますと他業種や海外の実績を発信していると、現場にも危機感が芽生えるんです。合わせて導入効果をデータで示して、「やりましょう」と言い続けていると、流れが一変る時がきます技術の進展に人々の心が追いついてくると、ある時点を境として、抵抗感がふっとなくなっていくような気がします。

鬼頭:そういう意味では、今のAIも同じ状況じゃないでしょうか?

岡本:そうですね。しかも、日本人はAIに関する拒否感が欧米ほどは強くないので、導入しやすい状況だと思います

AIの進化はまるで「生物の進化」

鬼頭:AIとの関わりはいつからですか?

岡本:ディープラーニング(深層学習)が広がる少し前からで、本格的にAIに携わるようになったのは、2020年にソフトバンク系のベンチャーに転職してからです。

鬼頭:ディープラーニングといえば、研究者の間ではよく知られていたコンセプトでしたが、それがまさかここまで高度な精度のAIに進化するとは予想だにしなかったです。

岡本:確かにそうです。データ解析における学習データやパラメータの「量」や「規模」が、これほどまでに「質」に対して進化をもたらすというのは、まるで生き物が進化する過程にも似ているとさえ感じました。

鬼頭:なるほど!言い得て妙ですね!

岡本:AIが意識や感情を持つことについても、あたかも「持った風」な感じにすることは、そのうち実現できるんではないでしょうか。人間の脳は、一つ一つの細胞がすごく複雑な処理を行なっているわけではなく、それぞれは比較的単純に電気信号を伝え合っていて、それらが複雑に組み合わさって高度な処理を実現しています。一方でChatGPTでは、「推論」という高度な思考作業(と同等の応答)が、ものすごくシンプルなことの組み合わせで実現可能だと示されんです。だから、「AIが意識や感情をもつ(ように見える)」ということも、こうしたことの延長線上にあるように感じています。

鬼頭:今後はどういう変化が予測できますか?

岡本:現段階のように、パラメータの数が何兆というレベルではなく、もっと少ない数のパラメータで同じような精度で効率良く処理できるようになるんじゃないでしょうか。コンピューターの計算資源の制約から、今までと同じペースでパラメータ数を増やし続けることは現実的ではないので。今より少ないパラメータで、同じことが可能になると思います。

鬼頭:なるほど。その視点は興味深い!

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偶然にも、約30年前、同じ大学、同じ工学部、同じ教養クラスで、近い距離にいたお二人。好奇心を原動力として、「人を大切」にしながら最先端の現場を歩んできたお二人の人柄には、どこか共通した核となるものが感じられました。後編では、「ミスを減らす組織づくり」「AIエージェント事業」について語っていただいています!お楽しみに!

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岡本 周之

ディップ技術研究所所長兼CTO室長 1998年に日立製作所に入社し、ソフトウエアエンジニアリングの研究開発を主導。手がけた分野は、コンシューマー製品、産業機器、金融ソリューションなど多岐にわたる。2020年からは日本コンピュータビジョンに転職し、AIによる画像認識の日本市場向けサービス開発と運用をリード。2016年博士号取得(情報科学)。

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『dip people』の企画・運用・制作を行い、ディップの情報を社外へ発信しています。