営業だけじゃない。コーポレート部門に息づくディップのベンチャーマインドとは。
「チャレンジし続ける」をファウンダーズスピリットのひとつに掲げ、上場後も常にベンチャー精神を忘れずに成長し続けるディップ。そのようなベンチャー精神は、経理や総務といったコーポレート部門においてどのように発揮されているのか。2006年に入社、現在は経理財務部 購買課 課長を務める野村沙織さんに話を聞いてみました。
最新システムを導入しながら、全社の購買活動をつねに効率化してきた
上野:野村さんはディップが2004年5月に東証マザーズに上場した2年後、創業10年目であった2006年に新卒入社されたんですよね。新卒200名という大量採用を始めた年でもありましたが、どうしてディップを選んだのでしょうか?
野村:当時は現在のような2000名規模の企業ではなく、200名の社員しかいないまさにベンチャー企業でした。それに東証マザーズに上場したばかりで、「これから大きくなっていくぞ!」という雰囲気が先輩社員の方たちにあり、そこに惹かれて入社を決めました。
上野:ディップの創業期からの転換でもある成長期での入社で、今とはまた社内の空気感が違っていそうですね。そこで配属されたのが総務部、その後購買課が2008年にできてそちらに異動されたということですが、200名だった社員数がどんどん増えていく中での社内の仕組み整備、どんなことをされていたのでしょうか?
野村:まず購買のシステムがなかったので、導入するところから始まりました。会社でモノを購入するときは、一般的にまず見積を依頼して、次に発注書を送って…という取引先とのやりとりが発生するのですが、当時は社内で統一された方法がありませんでした。口頭やメールだと、もし発注者が退職してしまうと誰がどのように購入したのかが不明になるなど、履歴が残りづらく、また個別に取引が発生するので、会社としてもデータを蓄積できない状況でした。購買課ができた理由はそういった社員の皆さんが個別で発注していた「分散購買」から、一括で購入する「集中購買」というシステムに切り替えるためです。そのため、全社で使用できる購買のシステムを導入し、それを社員のみなさんに慣れてもらうことから始めました。
上野:取引のフォーマット化やデータ蓄積など、会社として基礎の部分から関わっていたわけですね。
野村:そうですね。バラバラに社員が動いていたので、毎月の月次決済も月末にリアルタイムで把握しにくい状態でした。そこで2009年に全社で購買システムを導入し、購買課を通さないとモノを購入できない体制にしました。システム導入によって、会計システムとも連携させることになったので、当月の購入見込み金額というのが事前にわかるようになったため月次決算もスムーズになり、ディップの業績発表のスピードにも貢献しました。
上野:ディップの購買体制は意外と最近整ったのですね。知りませんでした。
野村:そうなんですよ(笑)そこから、しばらくの間はエクセルや紙を併用して処理をしていましたが、社員数が増えるにしたがって処理が追いつかなくなってきたこと、また、社員の方の二度手間が発生していたことから、2019年より新たな運用をスタートしました。その運用の変更もあり、いまではシステム上で完結できるようになったおかげで、社員が何かを買うときにおこる煩雑な作業をなくすことができました。
企業ドメイン変更後、DX推進も早急に対応。ディップを牽引中
上野:2019年にディップは「Labor force solution company」という新たなビジョンを掲げ、求人広告事業だけではなくAI・RPAを活用したDX事業でも企業の課題を解決していくとしました。そこから購買課でも、積極的にRPAを活用しているとお聞きしましたが、どのように活用されているのでしょうか?
野村:DX事業をディップとして推進しており、まずは社内でAI・RPAを活用していこうという流れが背景としてあります。また新事業を次々と立ち上げていく中で取引先も増えたので、いままでのやり方だとうまくまわらないこともあり、定型業務をなるべく自動化するために、積極的に自分たちでRPAを活用できないかメンバーたちと議論しながら使っています。オペレーション自体がRPAとの相性がよい業務もあるので、積極的に使っているという背景がありますね。
上野:具体的にどのような場面で使用してるのですか?
野村:たとえば取引先の信用調査などですね。新規の取引先と取引する際は、会社として取引をしても問題がないかを調べる信用調査という作業が発生するのですが、これを自動化するためにプログラムを組んでロボットを動かしています。ほかにもいままで人が行っていた業務をRPAで代替しています。いまだと6個のロボットを動かしており、機械がやれることは機械でという考えも進んでいますね。
上野:経理や購買の部門ってアナログなイメージもあったのですが、ガンガン自動化してらっしゃるんですね。
野村:さきほどお話した2019年に新たな運用をスタートした際にも、ロボットがじつは役立っています。ロボットによって全社員の方の工数を大幅に削減することに成功しました。
上野:具体的にどのようなことだったんでしょうか?
野村:社員の方が何かを購入するとき、たとえばポスターを作成したいとなったらポスター作成の許可を必要な決裁権限者からもらう「実施稟議」と、承諾された後にあらためてポスターを取引先に発注して欲しい依頼として手続する「購入依頼申請」を行う必要がありました。別々のシステム上で同じ内容を2回入力する必要があり、大変手間になっていたんですね。特に購入するものが多い部署では、相当な手間になっていました。そこで、「実施稟議」と「購入依頼申請」を合体させる運用を新たに2019年にスタートさせ、1回の申請で済むようにしたんです。
上野:それは素晴らしいですね。
野村:ただし、まだ問題が残っていました。申請者は1回の申請で済むようになったものの、購買が注文書を発行するためにはどうしても別のシステムを使う必要があり、そのためには私たちが申請者の入力内容をそのシステムに転記するという手間が発生しまう。そこで、RPAを導入して、「実施稟議+購入依頼申請」で承諾された項目を自動連携できるようにしました。具体的には1時間に1回、ロボットがデータを自動でダウンロードして、システムからシステムに転記するイメージです。新しい技術の導入で、全社の負担軽減が実現できました。
上野:自部署の負担にもならずに、全社の方の工数を削減できたのは大きいですね。
野村:はい。ディップはメディアを成長させるためにCMプロモーションを発注する頻度がもともと高かったり、現在ではメディア領域以外の新規事業を担う事業部で新たな取引先も急速に増えているので、購買上の煩雑さをなくすことによって事業の拡大をよりスムーズに進められるようになったのではないかと思います。
2020年4月、コロナ禍の3週間でテレワークで完結できる業務体制を構築
上野:コロナ禍で、購買課全体がテレワークに移行するための業務フローの構築にも携わられたとお聞きました。
野村:はい。2020年3月の上旬に始めたプロジェクトでしたね。テレワーク体制構築を提案し、約2週間ほどで実装を完了できたのを覚えています。
上野:経理という領域だと、取引先との書面上のやり取りが必須で、新たにオペレーションを構築するにも時間がかかるイメージです。いろいろな手配や調整が必要だったのではないですか?
野村:たしかに元々経理財務部は月次決算処理など紙を使用して行う業務が他の部署より多く、出社しないと業務が遂行できないオペレーション体制でした。ただ、感染が拡大する前に「緊急事態宣言が出るかも」となりましたよね。その時に「このままだと、緊急事態宣言中に15名のメンバー全員にリスクを冒させて毎日出社させなければならなくなる」「それだけは避けたい」と思ったんです。そのため、これを機に全員がテレワークの状態で業務を完結させるために、他の部署と違って新たに仕組化を図ることを決めました。
上野:メンバーへの想いがそうさせたと。
野村:もろもろのリスク等を調査した上で、2020年3月には新たな仕組みを上司に提案しました。上司からもすぐにOKが出て、提案してから2週間ほどで取引先への広報を完了。3月末には紙ではなくPDFでのやりとりで月次決算の95%ぐらいは完了できるようになりました。早くから気付いて提案できたことと、その提案をすぐに受け入れてくれた上司のおかげでスムーズに移行できましたね。
上野:起案から1ヵ月未満で、完全テレワークに移行。すごいスピード感ですね。
野村:「請求書は紙で処理するもの」といった慣習で行っていた部分を、「本当に今必要か?」という目線でゼロベースで見直せたのがよかったのだと思います。もちろん初めての試みなのでやっていく中で改善すべきポイントは見つかるかもしれませんが、まずは試してみようという感じで、世の中の状況に応じた対応をすぐに実装できたのはよかったなと思います。
手をあげれば主体となって実行できる環境は、コーポレート部門にも息づいている
上野:野村さんは16年間さまざまな変化をご経験されたかと思いますが、その中でディップのいいところってどこだと思われますか。
野村:先ほどのコロナ禍での請求書のPDF化もそうですが、基本的にディップ・ユーザー・社会にメリットがあることであればどんどん自分で調べて提案できる、それを実行できる風土があるところですかね。ディップの根底にある時代の変化に柔軟に対応してチャンスに変えていくという精神は、営業さんや開発の方だけでなくコーポレート部門にも浸透していると思います。
上野:RPAを購買課で導入している動きなどもまさにそうですよね。
野村:はい。ただ、いままで話してきたことは、変化してきたとはいえ購買課として当然なことだと思っています。これからは、もっと社員の方たちに購買課なりのご提案をしていきたいと思っています。
上野:どういうことですか?
野村:今までは、会社の規模拡大や成長に合わせて、社員の方の購買システムを整えるといったベーシックなことが多かったので、ある意味購買の動きとしてはスタートラインだったと思っています。今後はたとえば購買課に蓄積されているさまざまな部署の購入データを使って、こちらから購入する取引先を提案したりだとか、「その発注もいいけど、こんな発注方法もありますよ」と、どんどん皆さんにナレッジを共有していきたいなと思ってます。会社で唯一、いろんな部署の購入データを知っているのが購買課なので。そういったデータを用いて今までできなかったこともやっていきたいです。
上野:裏方的なイメージがある部門ですが、社員の方々をサポートするために”攻め”の姿勢での業務も計画されているんですね。
野村:環境がととのってきているので、そういう未来の話も結構出てきますね。まだ構想状態ではありますが、そういった世界を実現できたらなと思います。
上野:ディップの購買課の変化やバックオフィス部門で働く方々のマインドが理解できました。本日はありがとうございました。