やることに線引きしない。 それが求人広告の「クリエイティブ」
クリエイティブな仕事って、なにをイメージしますか?
人の満足感や喜びをつくる。そういった高揚感を知らないままでいたなら、私はこの仕事を辞めていたかもしれません。
私は大学卒業から変わらず、今の仕事を続けている冨岡という者です。主にどんな仕事をしているかというと、『バイトル』『はたらこねっと』などに載っている大手クライアントの取材や原稿作成。それから採用担当者様に会いに行って、採用施策の企画提案などをしています。超ざっくりいうと、1日のほとんどは編集作業をしているか、アイデアを考えている人、という認識でOKです。
そんな身分として、最近就活生とお話していると「求人広告のクリエイティブってなんですか?」という質問を高確率でもらうことがありますが、いつも私は「モノづくり、デザインの世界やアートとか、そういうかっこいいものではないかも」と素直に答えています。そう言うとちょっとがっかりされたり、「?」と疑問符を浮かべる人も結構多いです。
でも、それって当たり前の反応。クリエイティブってモノづくりじゃないの? 当の私がそうだったので、そのモヤモヤはよくわかります。
ディップにはクリエイティブを担う『広告制作部』という部署があります。ここに入ったばかり、もしくは入りたいと志望する人の多くは「文章が好き。いいキャッチコピーを書きたい」「ライティングスキルを磨こう!」「おもしろいデザインを世に出せたらいいなあ…」といったふうに意識が高く、モチベ―ションがあります。それはとても素敵なことです。
私も入社から3年目ぐらいまではそんな想いで、来る日も来る日も求人広告のキャッチコピーを考え、原稿を書き続け、知らない世界をたくさんの取材で見聞きさせてもらい、その様子をカメラに収め、苦手な動画編集もこなしました。ときには実務ではないけれど、同僚と公募なんかに挑戦したり、みんなで集まって、統一のお題でキャッチコピー100本ノックをして頭が沸いたり、クリエイティブを追求することが許される贅沢な環境でもありました。
わあ、自分は憧れのクリエイティブな仕事に就けている!文を書くのも好きだし、我ながらいい仕事を選んだなあ。そんな充実感がありました。もちろん、その幸せは今でも日々の業務で感じます。
クリエイティブが大好きだった。一個人の悩みと転換期。
でも、いつからか壁を感じることが増えました。クライアントや社内パートナーである営業に自分のクリエイティブを納得してもらえない。具体的には、このキャッチコピーは載せられない、と跳ね返えされたり、せっかくいいモノを作ったはずなのに制作意図が伝わらなくてお蔵入り。こんなにオリジナリティ溢れた原稿を作ったのに!どうしてわかってくれないんだろう、と憤慨しました。
それからもう1つは、毎日ライティングやら写真編集やらって好きだけど、うーん…飽きてきているなぁ、というマンネリ感。やりがいの薄れでした。
そんなとき、ちょうど新しい流れが広告制作部に生まれます。今までのように取材をして、オリジナリティ溢れる表現で原稿を作って終わり。それじゃこの先、ちょっと厳しいよね?制作マンとして市場じゃ戦っていけないよね。っていう一部の危機感。その危機感から生まれたチームに私も参加することになりました。(これはのちに、表現だけがクリエイティブじゃないのかも……。そんな考えを持つことになるきっかけでした)
さて、そのチームで実験的に始まったのは、クライアントの悩みを洗いざらい聞いて、まずは今どんな状況なのかを把握、分析。採用活動に生じているバグに目星をつけては地道に潰していく、というクリエイティブとはかけ離れたような仕事でした。
(うーん、こんなことまでやるの…?)とは思ったけれど。
なかなかイメージしにくいと思うので、例を挙げてみたいと思います。たとえば、今までのクリエイティブでは聞く必要のなかったこともしつこく聞きました。採用活動費は年間いくら?その何割をうちに割いてる?買っている掲載プランはABCDどれなのか?応募数は集められているが、採用率が30%を下回るのはなぜなのか?採用のフローは現場と本部のどちらが握っているのか?店舗によって、福利厚生の記載が違うがそれはなぜ?――今までは作り手として気にしないでいたことです。気にしないでも、ライティングは十分にできていたし、「こういう仕事は営業担当がやるべき!」とこじつけ、どこか線を引いていました。実際、仕事に線を引くべきだと思っている人は多いと思います。
でも一見、クリエイティブに必要そうにないこともヒアリングしてみると、稀にクライアント自身も気づいていない採用の問題点が見つかる。そうやって、自分で見つけた問題点が作り手自身に腹落ちしていないと、どんな改善策がベストかわからないまま全く的外れのモノづくりをしてしまいます。その過程では、凝ったライティングやデザインが必要ないと判断する仕事だって、たくさんあります。でも、それを自分でジャッジできて、たとえクリエイティブらしくない方法が最善であったとしても、クライアントの採用活動に満足いく結果を出せるなら、十分いいんじゃないでしょうか。前までの自分は、ここが分からず突っ走ったまでに制作物がお蔵入りになることも、採用結果が出ないことも多かったように思います。
喜んでもらえるなら、きっとそれが一番で。
広告制作のクリエイティブについて。ここまで読んでいただいた方は、がっかりされてしまったでしょうか。
趣味で文を発表したり、凝った写真を撮ることが好きで、仕事もモノづくり関係のことがしたい。そんな欲求が強かった入社当時の自分も、今ではだいぶ仕事への嗜好が変わりました。
クライアント自身や、1年以上ついている営業担当も気づかなかった顧客課題を見つけて、それを解決するアイデアを考え、実行されることに高揚感がありますし、クリエイティブを感じています。
例えていうなら、劇的ビフォーアフターの職人のような。ただポーンと家を建てるのではなく、誰がどんな理由でその家をリフォームしたいのか熟考してクリエイティブを発揮する。自分の好きなものを作れるとも限らないけど、多くの関係者が喜んでくれる。単にモノを作るというのがゴールではなく、人の喜びや満足感をゴールに置く。そういうふうにこの仕事を捉えてもらえれば、おそらく誤解が少ないように私は思います。