「頑張っている人たちがいる」 と知れるだけで、勇気になる。 自身の挫折を乗り越え、 上野が目指す組織開発とは。

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上野 麻佑子
人事本部 人材・組織開発室 ▼詳細

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高橋 正憲
商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 ▼詳細

女性活躍推進プロジェクト、クラウド型社内報、内省と対話を軸としたグループコーチングなど。これまで、ディップではさまざまな組織開発の取り組みが行われてきましたが、もともとはある1人の社員の想いから始まりました。なぜ組織開発部門を立ち上げたのか、そして今後の課題とは。人材・組織開発室 シニアマネジャーの上野に話を聞きました。

一人で抱え込み失敗した、営業課長時代。

高橋:先日もディップの組織開発施策について外部セミナーで登壇されたようで、お疲れさまでした。上野さんは2007年入社で、僕より1年先輩ということになりますが、もともとは営業でしたよね。そもそもなぜ人事に異動したんですか?

上野:新卒入社以来、毎年順調に昇格して、5年目で営業課長になったまでは良かったんだけど、その後すぐに絵に描いたような失敗をして。管理職になって「よし、自分の分身をつくるぞ」なんて意気込んでいたんだよね。営業として売れていた自信もあったから、今思うとメンバーの気持ちを一切考えずに一方的に「ついてこい」みたいなマネジメントをしていて。当時は戦略や方針にも納得できなくて、上司や周囲にもツンケンしていたんだけど、ある日上司とメンバーに呼び出しを受けて、ダメ出しの嵐。その時は毅然と振る舞ったけど、裏階段で泣いたなぁ‥。一気に自信を失って、もう無理だって、辞めようと思ったの。

高橋え。

上野:ホントに辞めることが決まって、みんなにも色紙を書いてもらっていたみたいなんだけど‥。最終出社の間際に、たまたま廊下で社長に会って。細かいことは何も聞かれず、ただ一言「ディップを嫌いになったわけじゃないんでしょう?」って。たしかにディップは好きだって本心で思ったから「はい」と答えたら、選択肢を提示してくださって。これから先、あんなことやこんなことをしていきたいんだよねって、楽しそうに話す社長を見ていたら、辞める選択肢がなくなっちゃったんだよね。

高橋:しょっぱなからすごい話ですね(笑)

上野:一度持ち帰って、役員だった上司とも面談をして。「一緒に仕事できるなら残る」とかかなり偉そうなことを言って、選択肢の一つにあった人事に異動することを決めたの。

高橋:内容が濃すぎて記事にできるか心配になってきました(笑)ちなみになぜ人事を選んだんですか?

上野:新任課長の時は一方的なコミュニケーションをとって失敗してしまったけど、一方で「組織やディップをもっと良くしたい」という気持ちはずっとあって。たとえば今は全社的にESサーベイ(従業員の満足度調査)を取り入れているけど、昔はなかったから、勝手に自分で手作りサーベイをつくって事業部のメンバーに答えてもらって、その結果をもとに「ここがメンバーに伝わっていないです」「みんな本音ではこう思ってます」って当時本部長だった岩田さんに話しに行っていた。今思うとかなり幼い内容だったと思うんだけど、岩田さんや管理職のみなさんはちゃんと耳を傾けてくれて。未開拓なところを自分の手で良くしていけることがディップで働く醍醐味なはずなのに、後輩メンバーの中にはつまらなそうな顔をして仕事をしている子もいたから、「どうしたらもっと楽しんで仕事できるんだろう」という想いはずっとあったんだよね。それで、今までは営業として「中から」組織を変えようとしていたけど、人事に行くことでそれを「外からも」変えるお手伝いができるかもしれないと思って、人事を選んだの。

高橋:なるほど。その頃から「組織開発」に近しいことに興味があったわけですね。

いい人を採用するには、いい会社になる必要がある。

高橋:人事に異動してからは、どんな仕事を?

上野:まずは新卒採用チームに所属して、2人の先輩と一緒に3人で、13新卒、約160人の採用活動に奔走していたね。選考基準や選考内容の企画を立てて、全国の説明会に行って、内定者イベントを開いて、という感じで。人事という新しいカルチャーに戸惑いながらも、毎日ああだこうだ議論しては改善して‥を繰り返しながら、3年くらい新卒採用を担当してたかな。未来を創る人材の採用に、日々没頭していたね。

高橋:そこから組織開発に移行していくわけですか?

上野:採用をやりながら、ある意味「採用の限界を感じた」というのがあって。

高橋:というと?

上野:採用戦略はもちろん重要なんだけど、毎年より良い人を採用していこうと思ったら、企業の中身を良くしていかなきゃいけない。事業や社員を成長させないと、ホントにいい採用はできないと思ったの。

高橋:なるほど。とはいえ、当時「組織開発」の部署はなかったと思うのですが、どうやって進めていったんですか?

上野:人事に異動してからも、役員の方とはディップの問題について「もっとこうしたほうがいいんじゃないか」みたいな議論は常々させていただいていて。たとえば私が新卒採用の問題について話していたら、「じゃあ採用の問題を100本書いてきて。100本ノックしよう」みたいな(笑)実際に100本書いて集合したら、「こんなに問題あるのか」って言われて(笑)

そのあともESサーベイの結果を見て「ディップの主な課題と改善策」みたいな企画を10本くらいつくって。それをきっかけに「じゃあ上野がそれをやってみろ」となって、「組織」というよりはまずは私1人でスタートしたのが組織開発の始まりかな。

高橋:なんだかパワフルな話ですね(笑)

上野:振り返ると、社長も役員のみなさんも、他の上司のみなさんも、私のやりたいことを後押ししてくれて、いつも新しいチャンスをくださったんだと思う。まさに、社名の由来であるDreamとIdeaとPassionがあれば、道は拓ける。それがディップなんだと実感しているよ。

真の女性活躍推進を目指し、立ち上げた「Fプロ」。

高橋:いわゆる組織開発を担当されるようになってから、まずはどんなことを始められたんですか?

上野:最初に始めたのは「Fプロ(『Full of Work&Life Project』の略)」かな。当時、世の中的にも女性活躍推進のムーブメントが起きていたんだけど、制度だけ用意するような会社も多くて。ディップでは、もっと本質的に考えて取り組みたいと思った。それに、もともと女性社員比率も管理職における女性社員比率も高かったので、じゃあ何が課題だろうと考えた時に、若手女性の活躍支援なんじゃないかと。実際アンケートを取ってみても、20代前半のうちから「将来、結婚・出産しても仕事し続けられるかが不安」と思っている人が多かったんだよね。

高橋:プロジェクトでは、どんなことをやっていったんですか?

上野:真に課題を解決するには、現場の率直な声が必要だと思ったので、まずは全国から現場の女性社員を18人集めて、第1期「Fプロ」をスタートさせたの。「何が本当の課題なのか?何に取り組んでいくべきか?」をみんなで議論して、自分たちで状況を改善していこうとするプロジェクトだったね。

高橋:どんな課題が分かってきたんですか?

上野:ひとつは会社の姿勢がきちんと伝わっていなかった。経営層のみなさんは、ライフイベントを迎えても成長や活躍を諦めることなく仕事が出来る会社でありたいと考えてくださっていたんだけど、それが現場に伝えられていなくて。そこで、オリジナルの冊子「キャリアバイブル」をつくって、会社の考え方やディップには法定以上の充実した制度があることを伝えたり、実際に活躍している人を紹介したり。あとは、ライフイベントを迎える前に仕事の壁にぶつかって悩んでいる人も多かったので、「成長・やりがいって何だ?」とか、「残業ありきではない、生産性の高い働き方とは?」「上司との良い関係性づくりとは?」「小分けロールモデルを作ろう」という足元のテーマについても発信したね。結果、ESサーベイでも「長く働ける会社だと思った」というスコアはきちんと改善された。それが1期の成果かな。

高橋:そのあとは?

上野:仕事において重要なのは、制度や環境という外的要素以上に、「成長実感」と「自己重要感」という内的要素だということが分かった。あとは相対的に、男性は冒険心で5~6割できると思えば「やります!」と言えるんだけど、女性は完璧主義で自分を厳しく見る傾向にあるから、「100%やれます」とならないと手を挙げられなかったりする。そのときに必要なのは「あなたならできるよ。やってごらん」「応援するよ」と言ってくれるメンター、サポーターの存在で。こういった女性の特性を理解した上でのマネジメントができているか?も大きなポイントだなと。だから第3期では「ボスFプロ」をつくって、女性メンバーだけが考えるのではなく、管理職も女性活躍支援についてできることを考えようと活動したね。

外部のパートナーさんにも、「ここまで本腰を入れて取り組んでいる会社は珍しい」と仰っていただけて、改めてディップって社員の成長・活躍のために、本気で取り組む会社なんだなと実感したよ。

大企業病にはしない。そのために始めた社内コミュニケーション。

高橋:「Fプロ」の成果が出てきてからは、「社内コミュニケーション推進」にシフトしていったんですか?どんな課題感があったのでしょうか?

上野:うん、他にもさまざまな取り組みをしていたんだけど、その時感じていた課題感が「このままだと大企業病になっちゃうんじゃないか」ということ。私が入った2007年頃は、社員数がまだ600名ほど。その後だんだん1000名、2000名と増えていくにつれて、情報のタコツボ化やセクショナリズム(縦割り主義)の気配を少し感じるようになったんだよね。これを防いで、ディップの強みである風通しの良さや経営と現場の距離の近さを維持するには、工夫が必要だと思ったの。

高橋:なるほど、他にはどうですか?

上野:あとは、事業成長に合わせて、組織風土をさらに進化させたかった。ディップの急成長を支えてきた「素直に、迅速に、一体感を持って」動ける風土は、今でもディップの強みになっているんだけど、これからさらに成長していくには、それではうまくいかない時に「考えて、対話し、生み出す」という風土が必要で。なんかうまくいかないぞという時に、そもそも何が目的だっけ?他にやり方はないのかな?などと考えて、組織の枠を越えてお互いにアイデアを出し合い、新しいやり方を試していく。これには、まず「相互理解」が必要だなと思って。

高橋:それがTUNAG(クラウド型社内報)ですか?

上野:そうだね。それまでも社内報はあったけど、あまり見られていなかったという現状があったから「ディップが大切にしているフィロソフィーがちゃんと感じられて、経営と現場や現場同士の相互理解・相互信頼を深められる場所」としてTUNAGを始めたの。

高橋:導入に際して気をつけたことはありますか?

上野:まずはTUNAGをちゃんと日常的に使ってもらうことを意識したかな。どんな施策も運営側が中途半端だと現場には浸透しないから、絶対みんなにとって良いものにすると決めて、想いを伝え続けた。「何のためにやるのか」「なぜディップにこれが必要か」を全社員にメールしたり、経営層のみなさんに直接改善点を伺っては取り入れたり。当時はブーイングもあったけど(笑)ログインデータも公開して、最初は強制力も使って触れてもらって。でも一方で、来てもらうからには「見てよかった」と思ってもらえるコンテンツづくりが必要だから、常に今現場や経営は何を知りたいのかの旬を捉えて、どんな伝え方をすると「伝わる」のかを考えていたよ。なるべく形式ばった発信ではなく、「ぶっちゃけ座談会」と称してディップに関するいろんな考え方を共有したり、「オープンに」という点も意識したかな。

高橋:経営層からの発信も増えましたよね。

上野:うん、事前に現場の40名くらいに意見を聞いたら、知りたいことの第1位は「経営層がいま何を考えているか」だったんだよね。それを伝えたら、経営層のみなさんも快諾してくださって。現場の私たちが「経営の声を聞く」ことも大事だし、「経営に現場の声を届ける」ことも大事。TUNAGを介してそういうことができればいいと思って。

高橋:TUNAGを導入した効果はいかがですか?

上野:定量的な効果としては、以前の社内報は閲覧率が高い記事でも4割ほどだったんだけど、今は平均で7割、1週間のうちでは9割に上がっていて、これは他社と比べてもかなり高いみたい。あとは「ディップはいい会社だと改めて感じた」「経営層のことがより好きになった」「仲間の頑張りに刺激を受けた」という声はよく聞くようになったね。導入後のアンケートでも「TUNAGを導入してよかった」という回答が7割以上あって、2018年の『TUNAGエンゲージメントアワード2018』では、総合グランプリの「Engagement of the Year」を受賞することができたんだ。これはディップの全員で獲った賞だと思っているよ。

「頑張っている人たちがいる」と知れるだけで、勇気になる。

高橋:このインタビューを通して、改めて振り返ってみていかがでしたか?

上野:今思えば、どの施策も自分の失敗体験からきているんだなと思う。

高橋:というと?

上野:営業課長時代に「辞めたい!」と思った時って、今思うと完全に視野狭窄に陥っていたんだよね。あれもこれも理想通りにいかない、もうここでは学べることは無い!なんて。実際は、社内を見渡せば私よりマネジメントが上手な人、企画力のある人はたくさんいたはずで、でも当時の自分はそんなことにも気づけていなかった。だから失敗した時に誰にも相談せずに1人で限界を感じて辞めようと思った。

じゃあ頑張れている時ってどうかと言うと、周囲の仲間に相談して力を貸してもらったり、前向きな想いを語って応援してもらえたりしているんだよね。どれも自分からコミュニケーションを取りに行っている。そうすると、頑張っている人たちがたくさんいることも分かって、「自分ももっと頑張ろう」と思えるんだよね。コミュニケーションが生む好循環って言うのかな。だから今いるディップのみんなにも、当時の私がそうであったように、自分次第でより良く変えられるその可能性に気がついてもらいたい。みんなが「仲間と力を合わせて成長していける場所を創りたい」というのが根本的な想いとしてあるのかもしれない。「1人じゃないんだよ」ということを伝えたいんだよね。

高橋:たしかに、その原体験は大きいのかもしれないですね。

上野:人事に来てからもメンバーに伝えるんだけど、「自分一人で仕事をするのが実力じゃない。成し遂げたいことを実現するために、いかに仲間の力を借りられるか?引き出せるか?が大事であって、それが本当の仕事力なんだよ」と思っていて。

あとは私自身がディップでいろんな人に支えられてきたからこそ、「恩返ししたい」という気持ちは強くあって。人として育てていただいたと思ってる。だから、せっかく数ある企業の中でディップを選んで入社してもらったからには、「ディップに入って本当に良かった、人として成長できた」と思ってほしいし、「仕事・人生を楽しめる人」であってほしい。今はそんな想いでやっているかな。

高橋:素敵です。本日はありがとうございました!

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上野 麻佑子

人事本部 人材・組織開発室 2007年新卒入社。『はたらこねっと』の営業、営業課長を経て、2011年より人事に異動。2児の母。

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高橋 正憲

商品開発本部 クリエイティブ統括部 制作戦略推進部 制作企画課 3代目dip people編集長。2008年に新卒で入社し、進行管理、広告審査室、制作ディレクター、管理職などを経験。2020年4月より現職。