分析で社内の困りごとを解決。 情シスの“運用統括ユニット”とは。
あちらに「作成書類が多すぎる…」と泣く人事部がいれば、現状を分析して改善ポイントを見つけ、社内のITスペシャリストを巻き込んで解決する。そんな「分析屋さんであり、社内のITスペシャリストと困り事を抱えている社員との架け橋」という、情報システム部内でもちょっと異色の部署「運用統括ユニット」のリーダー・中山さんに、やりがいや仕事内容などを聞いてみました。
もっとたくさんの人を幸せにしたくてディップへ。
鈴木:前職は「小さな会社でひとり情シス」をされてたとのことですが、そもそもどうして社内SEになろうと思ったんですか?
中山:もともとはシステム開発をやっていたのですが、社員数50人未満の非常に小さな会社だったので、サーバーとかパソコンについて分かる人が私しかいなかったんですね。それで自然とネットワークの構築やサーバー管理などの「情シス業務」と「開発業務」の2足の草鞋を履くことになりました。…記事にしづらいきっかけですみません(笑)。
鈴木:いえいえ!でも今は開発ではなく、情シス業務のほうでキャリアアップされてますよね?
中山:小さな会社だと、本当に目の前に困ってる人がいて、直接「これがないと仕事ができないんだ死んでしまうんだ」と文字通り泣きつかれるんですよね(笑)。こっちとしては開発業務も抱えていて正直それどころじゃないときもあるんですけど、しょうがないなって思いながらも対応すると、ものすごく感謝されるんですよ。それを繰り返していくうちに、仕事っていかに相手が求めてることを提供できるかだし、自分だからこそできる領域で困ってる人を助けてあげたい、これってすごくお互いにとっていいことだなって感じるようになったんですよね。
鈴木:そこから情シス業務のやりがいに惹かれていったんですね。ディップに転職しようと思った理由は何だったんですか?
中山:今考えると思い上がっていたなと思うのですが、自分は当時その会社の50人を幸せにできていると思ってたので、じゃあ所属2000人の会社になったら単純に40倍の人を幸せにできるんじゃないかと思って(笑)。誤解を恐れずに言ってしまうと、社内SEの中には決まったルーティンをひたすらこなしていくことを求められる会社もあるんです。でも私はどちらかというと自分のアイデアで人を助けたいと思っていたので、ディップならスピード感をもってそういうことができそうだと思って入社しました。
残業確定の月例業務を劇的に改善した話。
鈴木:ところで、現在リーダーを務めていらっしゃる「運用統括ユニット」は、情報システム部の中でどんな役割を担っている部署なんですか?
中山:「分析屋さんであり、社内のITスペシャリストと困り事を抱えている社員・部署との架け橋」という、情報システム部の中でも少し独特な立ち位置におりまして。どちらかというと人懐っこさとか相手の懐に飛び込んでじっくり話を聴く力を要求される部署なんです。
鈴木:人懐っこさですか!すみません、ちょっと意外だなって思っちゃいました。具体的にはどんな業務をされてるんですか?
中山:大きく分けて2つありまして。1つは「問い合わせの一次切り分け」です。システムやデバイスに関する問い合わせを1つ1つ確認して、「この問い合わせはサーバー運用に関することだからインフラ運用課(※)に担当してもらおう」とか、「この問い合わせは、ここを詳しく確認する必要があるな」などと判断しながら仕分けしていきます。
※インフラ運用課:情報システム部の中で、社内のネットワークやサーバーの運用管理を担当している部署のこと。
鈴木:1つ1つ判断しながら仕分けですか。それこそ人懐っこさよりもITスペシャリスト並みの知識のほうが必要とされそうなイメージですが…?
中山:実は問い合わせ内容も、「こういう問い合わせが来たら、こう対応すればOK」のように定番化しているものと、「こういうことに困ってるんだけどシステムでどうにか改善できないか?」のような“相談事”に近いものに分かれるんです。定番化している問い合わせへの対応は覚えてしまえばいいだけなので、専門知識は特に必要ありません。また、“相談事”のほうは相手から「何に困っているか、どう改善したいか」をいかに具体的に聞き出すかが重要だったりするので、極端な話、職人肌のITスペシャリストよりも、親しみやすいキャラクターと高いコミュニケーション力でお客さんの心をつかむタイプの営業職や接客業の方のほうが向いていると言えるかもしれません。
鈴木:なるほど。2つ目はどんな業務ですか?
中山:「生産性の分析業務」です。そもそもこの運用統括ユニット自体が、問い合わせの内容や傾向を分析して、困り事の原因や生産性が上がらない理由、つまり「ボトルネック」を見つけて問題解決するために立ち上げられたチームなので、どちらかというとこの分析業務のほうがメインになってきます。
鈴木:これまで、どんなボトルネックを見つけてどんな問題を解決してきましたか?
中山:そうですね、例えば…運用統括ユニットが立ち上がったばかりの頃の話なんですが、経理財務部のみなさんから「締め日の業務を何とか効率化できないか?」とご相談いただいたんですね。毎月の締め日には決まって22時くらいまで残業されているということで、詳しくヒアリングしたところ「同じメールを何通も何通も手作業で送っている」というボトルネックを見つけることができたんです。そこで、社内のITスペシャリストを巻き込んでオリジナルのツールを作り、メール送信作業を自動化することで、毎月22時まで残業してやっていた作業が1時間未満で完了できるようになりました。
鈴木:すごいですね!それは喜ばれたでしょう。
中山:すごく喜んでいただきましたね。お礼のメールまでいただいて。非常にうれしかったです。
鈴木:冒頭でおっしゃっていた「分析屋さんであり、社内のITスペシャリストと困り事を抱えている社員・部署との架け橋」という意味がよく分かりました。
中山:依頼者である他部署の方々と、ザ・職人!という感じのITスペシャリストとの間に立って、どちらの気持ちにも寄り添いながら、みんながいちばん幸せになる落としどころを探る立場なので、バランス感覚は非常に大切にしてますね。
鈴木:そのザ・職人!なITスペシャリストも多く集まっている情報システム部の中で、異色のポジションにいるからこそのやりがいはありますか?
中山:依頼者と近い立場で悩んで、一緒になって解決に向かっていけてるなという楽しさは感じますね。自分も前職でシステム開発をやっていたからこそ思うことなんですが、システムって、突き詰めて言ってしまうと所詮は道具でしかないんです。使い方次第で良くも悪くもなるので、どんな仕組みの中でどう使うかが大事になってきます。先ほどの話では「新しく専用ツールを作ってメール送信作業を自動化する」という方法を取りましたが、例えば「ゼロから新しく作るよりもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使ったほうが早いかもしれない」という場合もあれば、「既存のシステムに組み込んでしまったほうが利便性は高そうだな」ということもあります。そうして様々な可能性や選択肢を吟味しながら考えた仕組みがかっちりハマって、今までできなかったことができるようになって、依頼者に喜んでもらえたときは非常に達成感があります。
鈴木:そこが「人懐っこさがものを言う運用統括ユニット」ならではの醍醐味ということですね。ちなみに現在はどの部署の生産性を分析されてるんですか?
中山:情報システム部の生産性を分析しています。「問い合わせが何件あって、どういう問い合わせがあって、1人あたりの処理件数は…」みたいな感じで。と言いますのも、自分たちのこともまだ分析できてないのに他部署の方々の業務を分析できるのか?という思いがありまして。あと、「こういうことで困っている部署があるので、それを解決するために新しい取り組みをやりましょう」となったときに、我々が今の業務だけで手一杯の状況だとスタートすらできないので、サッと動き出せるぐらいの余裕を作りたいというのもありました。最近やっと「どうやら定番化している問い合わせ対応に多くの時間を取られているらしいぞ」ということが分かってきたので、また社内のITスペシャリストの力を借りながら改善していけたらと思っています。
ロードバイクで培った「へこたれなさ」も武器に。
鈴木:人懐っこさ以外で運用統括ユニットメンバーに求められるものって何かありますか?
中山:「へこたれなさ」ですかね。
鈴木:…ど、どんなへこたれそうな事態に直面するんですか?
中山:運用統括ユニットの仕事はどれも「まったく分からないところからスタートして、自ら情報を集めて、知恵を絞る」という流れになります。先ほどの経理財務部の話もそうですが、ボトルネックを見つけて業務効率化する前に、まず仕事内容を知るところから始めなければなりません。普段からその業務に携わっている方からすれば当たり前すぎるようなことでも、「これはどういう意味ですか?」「これについて教えてください」という風に粘り強く聞き続けて、情報を集めて、そこからやっと方向性が見えてくる。この「自分でゼロから手探りで道を切り開いていく大変さ」に対するへこたれなさや粘り強さは大事だと思いますね。
鈴木:中山さんはへこたれないほうですか?
中山:あまり自覚はなかったんですが、周りの方々からは「へこたれないね」「メンタル強いね」とは言っていただいてますね。
鈴木:それはご趣味のロードバイクで培われたものですか?
中山:ああ、よく調べていただいて(笑)。それもあるかもしれませんね。
鈴木:しかも平地より山を走るのがお好きなんですよね?どうしてそんな大変なほうに惹かれちゃったんでしょうか?
中山:始めたきっかけは、単純にダイエットのためだったんです。大学時代に非常に太ってしまって、これはまずいと。たまたま友達がロードバイクを先にやってたので誘われる形で始めたんですけど、その…もともとすごい負けず嫌いなんですよね、私。一緒に始めた友達に負けたくないという競争心もあって、バチバチしてるうちにチームメンバーも増えていって。で、自転車のレースとかにも出るようになりまして、そこそこ結果が出せたんです。表彰台に上がれたりして。そうするとまたさらに負けず嫌いに拍車がかかり…という形でどんどんハマっていきました。
鈴木:そのロードバイクで磨かれた負けず嫌いな性格と粘り強さが、「自分でゼロから手探りで道を切り開いていく大変さ」にもへこたれない強さとして、今の業務にしっかり生かされてるんですね。
※現在はディップ自転車部に所属。右から2番目が中山さん。「いつも列の先頭を走り、みんなの風よけになってくれる頼もしいナイスガイ(自転車部のメンバー・談)」なんだとか。
目指すは「おせっかいな部署」。
鈴木:これからどんな風に進化していきたいですか?
中山:かなり遠い目標かもしれないんですけど…いい意味で「おせっかいな部署」になりたいです。今は相談を受けてから動いているんですけど、逆にこっちから提案できるようになりたいなと。そのためにはまず実績を作ることだと考えてまして。日々の問い合わせを通して他部署がやっている仕事をしっかり理解しつつ、ボトルネックの特定と問題解決の実績を作って、「情報システム部に相談すれば改善してくれる」という信頼を勝ち取っていきたいです。そうやって、人から課題をもらうのではなくて、人の課題をこちらから見つけることができるようになれればな、と思っています。