人が幸せになるために、 AI で新時代を拓く ディップ冨田 統合報告書CEOメッセージ全文掲載【CEOが語るAI活用のポイント】

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冨田英揮
ディップ株式会社 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) ▼詳細

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dip people編集部
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本記事は、2023年11月に発刊されたディップ【2023年版】統合報告書のCEOメッセージの全文掲載です。今回は、AIと労働市場の未来を見据えたdipの経営戦略について。dipは、AIとテクノロジーを活用し、労働力不足の解決と働きがいのある社会の実現に取り組んでいます。さあ、一緒にdipのビジョンと挑戦を覗いてみましょう!

人が幸せになるために、 AI で新時代を拓く

誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現をめざして

dip が取り組む社会課題

日本は先進国の中で最も少子高齢化が進んでいる国のひとつであり、労働人口の減少が深刻な労働力不足を引き起こしています。従来の人手不足は景気変動に左右される傾向にありましたが、いま私たちが直面しているのは、景気に左右されることのない人口動態を原因とした構造的な人手不足です。そして、今後、その影響が一層深刻化していくことが予想されます。現在、不足している労働者数は約13万人と言われていますが、2030年にはその数が約300万人に達し、2040年には1,000万人以上が不足すると見込まれます。

このような構造的な労働力不足の解消のため、労働力の創出・流動化を促していくとともに、生産性を向上させることが重要です。そのためには、雇用のミスマッチ解消、働く人のスキル向上と業務の効率化による人材力強化、AIをはじめとするテクノロジーの活用、DXによる企業の生産性向上が必要です。加えて、多様な年齢・性別・国籍・バックグラウンドを持つ人々がいきいきと働ける環境を整備していくことも求められます。

そこでdipは「多様な就業機会の創出/雇用ミスマッチの解消」「人材力・経済生産性の向上/働きがいのある職場づくり」「DEI(※1)の推進/人権の尊重」、そして世界の喫緊の課題である「気候危機への対応」の4項目を事業におけるマテリアリティと設定しています。

また、2022年11月に「ChatGPT」が公開されて以来、これまでのAIの流れとは比較にならないほどに、生成AIの利用者は全世界で爆発的に増加しています。私たちが直面しているこのAIの波は、インターネットが引き起こした社会変化を超えるインパクトになり、AIによるイノベーションが、人々の仕事と働き方を劇的に進化させ、労働市場に一大変革をもたらすでしょう。特に、専門知識が必要とされるような仕事が、AIによる処理へと置き換えられていくことは間違いありません。

そして、いま私たちは、その進化の分岐点に立っています。私たちが目指すのは、AIが人の仕事を奪い取る未来ではなく、人が幸せになるためにAIが存在する未来です。AIの進化を、「リスク」ではなく労働力不足を解消する「機会」と捉え、これからはAIなどのテクノロジーを活用しながら「仕事のクオリティをいかに上げていくか」を考えるべきです。AI時代にこそ、テクノロジーで一人ひとりの持つ力を最大限に引き出し、企業の競争力を高めていくことが重要です。

そこでdipは、AIの進化が事業に与える影響を踏まえてマテリアリティを見直しました。AIの進化と世の中の変化を的確に捉えたスピーディーな事業展開により、社会課題の解決に取り組んでまいります。

社会を改善する存在となる

dipは1997年の創業以来、社会の変化を進化に変え、独自の価値を生み出し、ステークホルダーの皆様とともに成長してまいりました。

創業当時はインターネット黎明期でしたが、「求人の在り方がインターネットへ移行し、大きく変化していく」と確信し、いち早く求人情報サイトを立ち上げました。当時は紙の求人誌が主流で、伝えられる情報が限定的でしたが、インターネットへの移行により情報の量・質・スピードが大きく進化し、求職者(ユーザー)と顧客企業双方にメリットをもたらしました。

その後、「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という理念を軸に経営を推し進め、「ユーザーファースト」なサービスを展開してきました。どこよりも新鮮で豊富な求人情報にこだわり、「職場紹介動画」や「応募バロメーター機能」など他社にない独自のサービスで、ユーザーの期待を超えてきたことが、dipの求人サイトの魅力を大きく向上させ、顧客企業に高い広告効果を提供しています。

2020年3月、コロナ禍の緊急事態宣言による一斉臨時休校を受け、多くの企業は急な欠員対応に迫られました。そこでdipは、短期間の人員確保を支援するために、顧客企業に広告スペースを無償で提供しました。また、コロナに罹患したアルバイトなどの有期雇用労働者が経済的不安に直面している状況を踏まえ、dipのサービスを通して就業した方を対象に、感染した際、治療期間として必要な半月分の収入を支援しました。

2021年12月からは、有期雇用労働者の待遇改善のため、dipの採用コンサルタントが顧客企業に、時給の引き上げや採用時のお祝い金の支給などを提案する「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」を進めています。賃金引き上げ交渉には、顧客企業の反発が懸念されましたが、採用力・定着率向上につながると多くの企業に賛同いただき、時給アップ等の処遇改善を実現した求人数は99万件(※2)を超え、「バイトル」に掲載される平均時給は7.2%上昇(※3)と過去最高を更新しました。

そして、現在は、「dip DEIプロジェクト」を立ち上げ、顧客企業に対し、多様性・公平性・包括性を企業文化や組織に取り入れるよう働きかけています。超高齢化社会に突入する中で、様々な世代の方々が活躍できる職場をつくらなければ、企業は生き残っていけません。また、働き手にとっては、様々な年齢層の人とコミュニケーションできることが、自己成長の機会につながります。本プロジェクトにより、年齢を入力することなく応募できる求人数は40万件を超えています。引き続き、年齢・性別・国籍などに関するバイアスを解消する取り組みを行ってまいります。

人とAI・テクノロジーの力で労働課題を解決する

日本における労働力不足という構造的な問題を解決するためには、労働力の創出と流動化を促すとともに生産性の向上が欠かせません。その強力な後押しとなるのがAIをはじめとするテクノロジーの活用です。

dipは2015年よりAI分野でのプロジェクトチームを立ち上げ、2016年からは日本最大級のAIメディア「AINOW」(エーアイナウ)を開始しました。さらには、インキュベーション事業として「AI.Accelerator」(エーアイアクセラレーター)を立ち上げ、1,000社以上のAI関連のスタートアップ企業と面談を重ね、支援してまいりました。

さらに、2019年に新たなビジョンとして「Labor force solution company」を掲げ、これまでの人材サービス事業に加えて、DX事業を開始しています。

日本の中堅・中小企業のDX化は、大手企業に比べて大きく遅れを取っています。どの業務を変革できるかがわからないことや、ツールの導入にコストや手間がかかること、仮に導入したとしても十分には使いこなせないといった懸念があることなどが原因です。そこでdipは、中堅・中小企業に特化した商品設計・価格設定で、導入と継続利用がしやすいようにパッケージ化したDXサービス「コボット」を開発し、すでに1.2万社以上(※3)の企業にご利用頂いています。DXの導入で業務の効率化を図り、従業員にはその人独自の能力を発揮できる仕事を任せた方が、働く人もいきいきとし職場環境も良くなっていきます。そうすれば、人材は定着し、スキルの熟練度が高まり、生産性が向上します。それが企業の競争力強化につながっていくのです。

AIなどテクノロジーを活用して多様な人材がそれぞれの能力を発揮し、より豊かに働くことで、企業の競争力を高め、「誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会」を実現したい。これがビジョン「Labor force solution company」に込めた思いです。

AIエージェントで新時代を拓く

今般、創立30周年の2027年2月期を最終年度とする中期経営計画「dip30th」を策定しました。「新時代」をテーマに掲げ、既存の人材サービスを大きく進化させた「AIエージェント事業」を立ち上げております。その実現に向け、「ディップ技術研究所」を設立、東京大学松尾豊研究室の成果活用型企業である株式会社松尾研究所と連携し、最先端の技術開発を行っています。  私たちが手掛ける人材サービスには、「バイトル」「はたらこねっと」など、サイト上で求職者と採用企業とをマッチングさせる求人広告(メディア)と、「ナースではたらこ」「介護ではたらこ」など、キャリアアドバイザーが介在し求職者の仕事選びをサポートする人材紹介(エージェント)の2つのモデルがあります。一般に、求人広告より人材紹介の方がきめ細かなサービスを提供できることから、正社員の転職領域では、求人広告から人材紹介へ移行しつつあります。一方、アルバイトなど有期雇用労働者を対象とする領域においては採用単価の低さを理由に、「人」が介在する人材紹介の実現は困難でした。しかし、「人」の代わりに「AI」がユーザーに寄り添い、対話することで、その人の潜在的なニーズや将来の夢、特技、性格などに合った仕事を提案する人材紹介サービスを実現できます。  一般的に、求職者のサイトへのアクセスから就業に至る率は数%程度であり、AIエージェントによりマッチング精度を高め、就業率を向上させることで、大きな収益機会が創出されます。  AIによる精度の高いマッチングを実現するためには、データの量・品質が非常に重要となります。求職者とAIの対話履歴や応募に関する情報に加え、全国約2,000名の営業社員が集める最新かつ正確な独自の求人情報の蓄積が強みになってくるのです。この事業により仕事選びは、従来の「大量の求人情報から検索する・選ぶ」から、「AIと対話しながら最適な仕事に出会う」へと進化していきます。  求人企業とっては、AIによる精度の高いマッチングを実現することで採用率・定着率を大幅に向上させることができます。  私たちは、「AIエージェント事業」の実現を通して、誰もが適性に合った仕事に就き、働くことに喜びと幸せを感じられる社会を創りたいと考えています。人と企業を幸せにするテクノロジー。それがAIのあるべき姿です。

AI時代にこそ問われるフィロソフィー

AIを活用したサービスが身の回りでも増えていく中、AIと対話しながら最適な情報にたどり着くプロセスで、AIの提案する情報が信頼に足るものなのか、自分の情報を預けても大丈夫なのか、など不安に思われることも多くあると思います。そこで、多くの方にサービスを信頼していただき、安心して利用できると感じてもらう差別化要素は、企業が長年培ってきたブランド力や信頼感、企業姿勢だと思います。

dipは、これまで有期雇用労働者の方々の待遇向上のための賃金の引き上げ交渉やDEIの推進など、ユーザーに寄り添ってサービスを提供してまいりました。その結果、多くのユーザーや企業との間に強い信頼関係を構築し企業ブランドを磨いてまいりました。

これを支えているのが、社員一人ひとりに根付いているフィロソフィーです。dipのフィロソフィーは、企業理念である「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」、「Labor force solution company」というビジョン、ブランドステートメント「One to One Satisfaction」、そしてdip WAY(行動規範)とファウンダーズスピリット(行動哲学)で構成されています。フィロソフィーは、役員、従業員が常に立ち返る原点であり、その心を突き動かし、幾多の挑戦を支える力の源泉となってきました。

このフィロソフィーが、従業員のロイヤリティを高め、社会課題に向き合う日々の仕事の中で体現されていくことで、多くのユーザー、顧客企業のロイヤリティを生み、dipの高いブランド力や信頼感が築かれてきました。AI時代における最大の差別化要因であるフィロソフィーを強みに新時代を拓いていきます。

夢とアイデアと情熱で新時代を拓く

dipは、「人が全て、人が財産」という信念のもと、多様な個性をもつ従業員一人ひとりの力を磨き、最大限に発揮できる環境をつくり、その幸福度を高めることで、人的資本の強化に取り組んでまいりました。dipの価値創造のあゆみは、フィロソフィーに基づき全社員が一丸となり、夢とアイデアと情熱を持って困難を克服することで、自らが進む道を切り拓いてきたものです。その姿勢は「ファウンダーズスピリット」として次世代へと受け継がれ、労働市場の未来に向けて、新たな価値を生み出し続けていくでしょう。フィロソフィーの体現こそが、持続可能な社会の実現、そしてdipの持続的な事業成長と企業価値向上につながるものと強く信じ、経営をリードしてまいります。

これからもdipは、時代の変化を敏速に捉え、夢とアイデアと情熱で新時代を拓いていきます。ステークホルダーの皆様におかれましては、私たちの未来へのご期待をいただき、引き続き長きにわたりご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2023年11月
※1:DEI(Diversity, Equity & Inclusion)
※2:2023年3月時点
※3:2023年8月時点

終わりに

dipの旅はまだまだこれから。労働者と企業をつなげ、全ての人が働く喜びを感じられる社会を目指し続けています。AIとテクノロジーを駆使し、人々の働き方を革新する企業として、dipは未来を切り開いていきます。皆さんも、dipの旅に一緒に乗り込みませんか?これからもdipの挑戦と進化をお見逃しなく!

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冨田英揮

ディップ株式会社 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) 1966年9月生まれ、56歳。愛知県出身。愛知学院大学商学部卒業後の90年地産入社。92年フォーラム入社。97年ディップを設立し、現在同社代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)。

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dip people編集部

『dip people』の企画・運用・制作を行い、ディップの情報を社外へ発信しています。