「誰もが求人画像を作成できる」へ 効果的な求人画像を 簡単に作成できる画像作成支援ツールをゼロから開発した話
ディップでは「バイトル」「はたらこねっと」などの求人サイトを展開しています。それらの媒体に掲載する求人の画像作成なども自社で行っていますが、求人掲載数の増加に伴い、画像作成コストが増大していました。その課題を解決するために立ち上がった「GAZO」プロジェクトは、「誰もが求人画像を作成できる」状態を目指し、求人画像作成支援ツールの開発を行いました。今回はそのプロジェクトにおいてプロダクトオーナーを務めた小久保に話を聞きました。
求人掲載の増加に対応できる効率的な画像制作フローを作りたい
――導入前の状況、運用方法を教えてください。
求人サイト「バイトル」を運営しているディップでは自社で求人原稿の作成業務も行っております。
バイトルの求人原稿には職場の様子を伝えるための画像を何枚か登録できますが、サイトへの画像の掲載にあたり、お客様から提供いただく写真やフリー素材を利用してアピールポイントを文字で乗せる加工をすることがほとんどです。
この求人原稿用の画像作成ですが、営業担当自身で行うケースと、制作部門に依頼するケースがあります。
これまで営業担当が画像加工する場合は、一般に利用されるスマホアプリや、無料の画像編集ソフト、PowerPointなどを利用していました。高度な加工・編集はできませんが、スピード優先で対応するためにこの方法が採択されていました。一方、制作部門に依頼する場合は、専門のデザイナーが請負い、加工や使用するフォントまで質の高い状態で仕上げます。
近年のバイトル・はたらこねっとの掲載件数の増加に伴い、画像作成のニーズが年々高まり、スピード感のある対応が求められるようになってきていました。
――どのような課題をお持ちでしたか。
1つはコスト面での課題でした。
画像制作ニーズが高まると同時に制作部への依頼も増え、外注コストが増大するようになりました。
今後さらに掲載件数を伸ばしていくには、画像制作フローを見直し、人件費も外注費も抑えていく必要がありました。次に「制作スキル」と「クオリティ」面での課題でした。
バイトルやはたらこねっとには、独自の掲載規定があり、利用できる画像のルールが定められています。各制作者はそれを満たす画像を作る必要があります。そのためこれまでは業務用スマホに画像編集アプリを導入し、利用促進を図ってきましたが、スタンプは利用NGなど使い方に制約を設ける必要があり、営業に画像編集スキルを習得させるには時間がかかるなどの課題もありました。
原稿作成依頼数は増加する一方で「自分で作るのは大変だから制作依頼しよう」といった風潮はますます高まっていくという状況になっていました。
――システム導入検討の経緯について教えてください。
今後の外注費がさらに増大していくことが予想されたので、デザインスキルやセンスに依存せず、誰もが一定クオリティの画像を作成できる仕組みの構築を決定しました。
誰でも画像編集ができるシステムを社内で開発
――どのシステムを選びましたか。
自社サイト専用の画像編集システム【GAZO(ガゾ)】を社内で開発しました。
――そのシステムの選定のポイントになったところはどこですか。
自社求人サイトの仕様(掲載規定)を予め踏襲し、画像のリサイズを自動で行ったり、職種やターゲット別に背景やフレームといったパーツを選択できるなど、求人原稿ならではの画像編集ノウハウをテンプレートや素材として詰め込みました。
また、画像のクオリティに大きく影響する有料のデザインフォントを、【GAZO】を通して全営業が利用できるようにしました。
これまでの一般アプリより「GAZOは使いやすい」と今の段階から営業に浸透させ、今後スケールしていくことでコストメリットが出るようにと考えています。
――どのような体制で取り組みましたか。
ディップ社内からは、画像制作業務を担当するクリエイティブ統括部、プロジェクトマネジメントのサポートにdip Robotics、社外からはシステム構築のパートナーとしてGAUSS社に協力いただきました。
――プロジェクト推進体制や環境のよかった点について教えてください。
これまでに担当してきたプロジェクトでは、細かな要求仕様書を作成し、仕様の隅々まで目を配りシステムを構築していました。
今回はdip Roboticsのアドバイスをもらい、途中からプロダクトオーナーに徹して、ニーズ把握に多くの時間を割くことが可能となりました。たくさんの営業ヒアリングを通じて重視される項目を洗い出すことができ、より現場に活用されるシステムを目指せたと思います。
また、画像解析のノウハウをもつGAUSS社にも柔軟に対応いただき、画像からの人物切り抜きなど、専用のエンジンをdip独自に実装いただくなど、営業現場ではこれまで叶わなかった操作が可能になったことも大きいメリットです。
ユーザー視点に立ち返り、営業の使いやすさを重視したUIを設計
――本取り組みで困難だったことについて教えて下さい。
デザインフォントの導入、文字装飾を中心としたユーザーインターフェースの整理は難航しました。
――詳しくお聞かせください。
フォントは当初、オープンなWebフォント導入を目指していましたが、デザイン品質として画像で利用するには物足りないことが発覚しました。様々なソリューションを模索したのですが、最終的にはモリサワ社と交渉し、Webシステムに導入可能なフォントを契約・導入しました。
ユーザーインターフェースについては、当初、海外の画像編集Webサービスを参考に設計していましたが、そのWebサービスにはない機能やふるまいを、いかに分かりやすく画面に落とし込むかという点で苦労しました。
メインユーザーとなる営業が普段利用しているPowerPointやwebサービスはなにか、それらの操作感に視点を切り替え、各機能をあらためて階層化して検討していきました。
最終的には当初なかったツールバーを追加することで、機能の上位下位をわかりやすくデザインに落とし込むことができました。誰もが分かりやすいようなアイコンのデザインを提案してくれたData Brain課の藤本さんにも感謝しております。
営業が蓄積した知見のエッセンスを織り込んだシステム。リリース後の出だしは好調。
――実際に導入してみていかがでしたでしょうか?
8月下旬より全営業部へ公開し、利用を開始しました。画像出力枚数は初動1か月で2000枚超の見込みで、利用者数も着実に増えていっています。
利用率も今現在(2021年9月)で20%を超えるようになっており、出だしとしてはなかなか好調です。
ただし、まだ認知が低かったり、画像加工の外注費用が実際に下がってきているわけではないので、今後もこのような点を注視していき、さらに活用してもらえるように拡散していきたいと考えています。
――実際に導入してよかったと感じた点や今回のプロジェクトのやりがいだった点を教えてください。
Slack上で営業のGAZOに対するコメントを拾っていますが、おおむね好意的に受け止められているようでほっとしています。
制作コストの削減という切り口からのスタートではありましたが、実際にヒアリングや運用方法を知る中で、私の想像以上に営業現場でのピュアセールスタイムの確保や原稿制作に対する課題は多く、画像制作の効率化に活用いただけていることはうれしく思います。
普段は原稿制作を担う組織ではありますが、その分、画像を含めた求人原稿制作のノウハウはどの部署よりも多くもっているので、そうした知見を【GAZO】というシステムを通して幅広く社内に活用いただける事例を生み出すという点でもやりがいがあったなと感じます。
――運用上で生じている課題などはありますか。
現在はあくまで社内向けに構築した仕組みですので、今後代理店様、各社パートナー企業様向けへのアップデートなども視野に入れて追加開発をしていきたいと考えています。
今後は「誰もが”効果的な”求人画像を作成できる状態」を目指す
――今後取り組みたい改善はありますか。
デザインスキルに関する課題はある程度解決できたと思いますが、利用ユーザーのセンスに依存する部分はまだ解決途中です。効果の出る画像、CTRの高い画像をAIによって学習させてレコメンドさせるなど、さらに効果的な画像を提案・作成できるような仕組みに進化させていきたいです。
――ありがとうございました!