経営陣が語るDXのポイント:長年「人」を扱ってきたディップがDXで目指す世界

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冨田英輝
ディップ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO ▼詳細

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dip people編集部
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この記事は、ディップをけん引するトップたちがDXをどのように捉え、ディップの未来をどのように描こうとしているのかを伝えていく「経営陣が語るDXのポイント」シリーズです。ディップは「カケザンプロジェクト」や営業支援アプリ「レコリン」など、社内業務の自動化やDXを進めてきました。そして現在では、お客様に対してもデジタルサービスの提供を開始し、特に中小企業のDXを推進しています。デジタルレイバーの提供による業務の自動化や、どこよりも早く採用が決まる求人サービスを目指した改良など、さまざまな取り組みが行われています。

経営陣と執行役員へのインタビューを通して、上記のようにDXを取り入れて進化を続けるディップの攻めた意思決定や問題解決への向き合い方を伝えてきました。今回の記事では、1997年の創業時からディップの成長をけん引してきた代表取締役社長 兼 CEO・冨田 英揮に話を聞きました。DXはディップにどのような成長をもたらすのか。なぜ新しいことに挑戦し続けることができるのか。これからのディップはどこに向かうのか。ディップの歩みと今、そしてこれからについて冨田が語ります。

ディップがDX事業を行う理由|日本の労働市場の課題解決に貢献したい

ディップは2019年から掲げている「Labor force solution company」を実現するためにDXを進めてきました。

求人広告を通じた人材採用の支援に加え、デジタル技術を活用したサービスの提供も行うことで人手不足の解消を図り日本の労働市場における諸課題の解決に向けて取り組んでいます。

ディップの掲げるビジョン

まずはじめに、従来の事業ドメインである求人広告メディアからAIやRPAなどのデジタル技術を活用したデジタルレイバーを提供するようになった経緯とそこに込めた想いについて聞きました。

――DX領域に参入し、“労働力に係る諸問題を解決するLabor force solution company”を目指すことになったきっかけについて教えてください。

ディップは創業から常に時代に合わせて変化してきました。インターネットの黎明期である1990年代、当時の求人は紙の求人情報誌しかなく求人広告枠も小さなものでした。私は「将来、求人の在り方もインターネットに移行するだろう」と考え、いち早くインターネットの求人情報サイトを立ち上げました。その後、YouTubeが出始めた2010年には動画で職場紹介ができる機能を取り入れるなど、求人情報の在り方を大きく進化させてきました。

そして近年のAIやRPAといったデジタル技術の発展を受け、新たな進化を実現しようと乗り出したのが、DX事業です。デジタル技術による労働力(デジタルレイバーフォース)を提供する事業を展開しています。

このようにディップは今、求人広告メディアを軸とした人材サービス事業に加え、デジタル技術を取り入れた事業ドメインの拡大を目指しています。人手不足の解消、そして日本の労働市場の課題を解決に貢献していきたいという想いを”Labor force solution company”という言葉に込めています。

――現在、ディップが提供しているDXサービスは主に中小企業に導入が進んでいますね。中小企業のDX支援を進める理由を教えてください。

はい、ディップでは業界ごとに多くの企業に共通する定型作業を自動化するDXサービス「コボット」を開発し、主に中小企業向けに提供しています。

コボット

このようなDXサービスは大企業においては半数ほどに導入されています。しかし、中小企業ではコストが高い、社内にシステムについて分かる人がいない、人を雇おうにも採用が難しい、などといった理由であまり導入が進んでいませんでした。

中小企業には、簡単で安くないと使ってもらえません。ディップは昨年4月にベトナム最大のIT企業であるFPTソフトウェアと業務提携し、さらに高い技術で低コストのサービスを提供することができるようになりました。ディップが提供する「コボット」は低コストで導入でき、初期費用や保守費用が不要です。なので中小企業でも安心して使え、大企業にも負けない体制へと強化することができます。販売開始から1年半強ですでに1.4万社以上の導入実績があり、多くの企業に活用いただいています。今後も中小企業が導入しやすい価格帯でサービスのラインナップをさらに拡大していく予定です。

――今後さらにDX事業を拡大していくにあたって、DX商品・サービスはどのように変わっていくのでしょうか。

今の私たちのDX商品は採用や入社手続きなどの人事、労務周りの仕事を効率化するものが多いです。

次のステップとして考えているのは、業務の拡大です。人事の隣の組織、つまり営業やマーケティングの部署など社内の他の組織へ横に広げていこうとしています。現在では営業系のDX商品も展開を始めています。1つの企業の中で私たちの多様なDXサービスが広まっていくことを期待しています。

さらにもう1つ拡大させる方法として、業種の拡大があります。今不動産コボットという商品がありますが、そうした業種に特化したものにも広げていきます。

ディップの新事業を立ち上げる際の事例をみていても、1つの部署から始まったことが少しずつ他の部署に広がって成功していくことが多いです。なので、お客様の企業でも同じことができると考えています。

ディップにおけるDXの位置付け

長年「人」を扱ってきたからこそ気づくDXの重要性

インターネットやデジタル技術の可能性にいち早く気づき、さまざまな事業を立ち上げることで成長してきたディップ。

2010年代に迎えた3度目のAIブームやコロナ禍で急速に広まったDXの影響で、データやデジタル技術を活用したビジネスが社会全体で増えています。

人材・求人業界でもデジタル化の動きが加速する中、冨田はDXをどう捉えているのでしょうか。

――ディップではDXをどのように位置づけていますか。

そもそもディップは、紙が主流だった求人媒体をデジタルで提供することから始まった会社であり、元よりデジタルフォーメーションの会社であったと言えます。
当然、今後も人材サービス事業のDX・デジタル化を進めていきます。

加えて、私たちは労働力の提供の形もDXによって変えていきます。日本の労働力人口は今後減少していき、人手不足が深刻化していくと予想されています。そこでディップが「人の労働力」だけでなく「デジタル技術を活用した労働力」も提供する形に変わっていくことで、日本の労働力供給の効率を高め、日本の成長率を向上させることができると考えています。

また、足りない労働力をデジタルツールの導入で賄うことができれば、現場で定型業務から解放された人が他の新たな価値を生み出す仕事ができるかもしれません。そうしたお客様の次の成長につながる役割としてもDXを推進していきたいです。

――これまで求人を扱っていたディップがDXを率先して進めていく意義はなんでしょうか。

今後20年で仕事の半分がデジタルレイバーにシフトするといわれる中で、ディップはSlackや最先端のクラウドサービスを取り入れるなどし、全社員の年間労働時間70万時間の削減(※)を見込んでいます。

長年求人情報を取り扱い、さまざまな業界や仕事の内容に精通している立場から見ていると、「人間にこんな定型作業を任せずに、もっと別の仕事をやってもらったほうがいいのでは?」と思う場面がたくさんあります。長年人を扱ってきたからこそ、人の大切さを誰よりも理解しています

仕事の中に多く存在する定型業務は出来るだけ効率化してかかる時間を削減し、生まれた時間をその社員が能力を発揮できる仕事を任せたほうが職場も生き生きとし、労働環境もよくなっていきます。そうなれば、従業員は長く定着してくれて熟練度も高まります。やがて生産性は向上し、結果的に企業の競争力強化にもつながります。

ディップが率先してDXを推進することで、効率的で新たな付加価値を生み出す働き方の手本を示していきたいと思っています。

DXを進めることで生じた変化と課題

――DXを進めることで社内外で変化は起きていますか。

DXを進めていく上で、社内にもお客様にも大きな変化がありました。両者に共通していたのは新しい状況、サービスにあまり抵抗がなかったということです。

社内で言えば、Slackの全社導入や営業支援アプリ「レコリン」は始めてみると意外とあっさり社内に受け入れられた感覚があります。社内のDXというのは、動き出せば早く浸透していくものだと感じました。導入して実際に触ってみて、良さを実感すれば前に進んでいくことが社内DXをしていくなかで分かりました。

お客様も一緒です。お客様は私たちの提供する商品がDXかどうかというのは気にせず、「これ便利だね」「役に立つね」という感覚で導入してくれているので、変に抵抗を感じずに導入が進みました。無理やりではなく自然な変化だったというのが特徴です。

お客様からしたら、いつも来ているディップの営業が「こんな商品新しく作りました、いかがですか」と言って提案しにきた、という感じです。お客様に対する自然な変化の作り方がよかったのだと思います。

チャンスでもあり課題でもありますが、お客様との関係性が点から線になってきているのがディップに起きている変化ですね。

――課題とはなんでしょうか。

これまで求人の事業というのは、求人を掲載している期間しかお客様とお付き合いがありませんでした。しかし、DXはシステムが動いている限りお付き合いが続くので、ビジネスモデルの変化に対応していかなくはいけません。

お客様と毎週、毎日コミュニケーションを取ったり、DXサービスの使い方をアドバイスすることでカスタマーサクセスを増やしたりとこれまでやってこなかったことに取り組んでいく必要があります。これまでは「(求人広告で)人を採用する」という観点で仕事をしてきましたがこれからは「(デジタルツールを活用して)お客様の仕事がうまくいく」という観点も持つことが重要になります。

ディップのこれから|デジタルの活用で進化を止めない

――これまでディップは求人広告を通して「人」を提供し、現在ではデジタル技術を活用した事業で「デジタルレイバー」を提供しています。日本の労働力の課題解決のために次にディップが取り組んでいくことについて聞かせてください。

中期経営計画「dip2025」で達成しようとしていることがいくつかあります。

まず、人材事業の中で「どこよりも早く(採用を)決める」というのを行おうとしています。企業が労働力を、求職者が仕事を見つけるのをより早くするということをやっていきます。今は検索エンジンを使って仕事を探すことが主流ですが、応募してもなかなか決まらないのが実情です。なぜなら、求職者がやりたい仕事と企業が欲しい人材がマッチングしていないことが多いからです。

多様な媒体が集めた求人を同じサイト内に集めて載せるという形を取る、いわゆるアグリゲーションサービスは他にもあります。一方、ディップは約1500人の営業が直接お客様からヒアリングし、最適なコンテンツを紹介しています。ダイレクトにお客様と求職者をマッチングできる環境を作っているので早く採用を決めることが可能です。私たちは今、データとAIを活用してこのマッチングの質を上げていこうとしています。

もうひとつは中小企業にDXを届けるということです。DXというのは分かりにくい、高い、誰も教えてくれないというイメージから導入のハードル、導入してもうまくいくまでのハードルが高くなっています。それを誰でもできるようにしようと取り組んでいるのが「どこでも誰でもDX」を掲げるデジタルレイバーの強化です。

それができれば、日本の99%以上を占める中小企業でも足りない労働力をデジタルツールで簡単に補うことができ、日本の生産性をあげることができると考えています。

これらを実現していく私たちディップもその模範にならなくてはいけません。今後もディップは常に新しい時代の変化を見逃さずに捉え、進化に変えていきます。

――ありがとうございました!

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冨田英輝

ディップ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO DIP America,Inc. President 27歳で起業を志し、中小企業創造活動促進法などの認可を受け、1997年に30歳でディップ株式会社を一人で立ち上げる。ディップ株式会社を2004年東証マザーズ上場、2013年東証一部上場に導いた。

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dip people編集部

『dip people』の企画・運用・制作を行い、ディップの情報を社外へ発信しています。