「スイスイ申込書処理!」完全内製で脱ハンコ、年間8800時間の工数削減DX事例を徹底解剖
2020年、ディップでは社内DXプロジェクトの一環として電子承認システムを内製しました。このシステムが全社で活用されることにより脱ハンコに成功、煩雑だった業務は一気に解消されましたが、その開発・導入過程は苦難の連続でした。今回はこの電子承認システム「SAAF」開発の経緯や大変だったこと、そしてリリースして感じたことについて、当プロジェクトを成功に導いたPMの小林香織にインタビューで聞きました。
押印が物理的に必要で、承認者の離席・外出時は承認ができなかった
――今回お話していただくSAAFですが、サーフと読むのですね。何かネーミングの由来などがあればお教えください。
そうですね。SAAFというネーミングには、サーフィンのサーフとかけて、「波乗りの様にスイスイ流れるワークフローサービスを作ろう!」という想いを込めました。
そうなんですね。軽やかな印象が名前からも伝わってきます。
――まずSAAF導入前の状況、運用方法を教えてください。
ディップでは求人情報サイト「バイトル」や「はたらこねっと」を運営しています。求人掲載にあたり、営業が申込書を作成したあと、上長の承認をとるためにハンコを押してもらう必要がありました。
以前は、営業がバイトルやはたらこねっとへの求人掲載申込書を作成した後、上長の承認を得るために紙面を印刷して押印をもらい、営業アシスタントが取りまとめてバックオフィスの処理拠点へ郵送するというフローでした。
――どのような課題をお持ちでしたか。
押印が物理的に必要だったので、承認者の離席・外出時は承認ができず、定常的に承認に時間がかかっていました。そのため、承認時間を短縮したいという想いがありました。
さらには申込書のミスが発覚した際も同じ手続きが必要なため、営業も二度手間で、バックオフィス部門も運用工数が増えるという問題があったんです。
他にも、社内確認のために紙面を印刷・発送する経費など無駄が多いという問題を抱えていました。
――システム導入検討の経緯について教えてください。
潜在的な課題を解決したいと考えていたことに加え、東京オリンピックに備えたリモートワーク対応のために導入検討に至りました。その後企画序盤でコロナ渦になり、急に全社でリモートワークが始まったため、対応が急務となり企画を早急に進める必要がありました。
完全内製。柔軟な運用を可能にするフルスクラッチ開発を選択
――どのシステムを選びましたか。
フルスクラッチで開発しました。SaaSシステムの比較検討をしましたが、運用している関連システムがレガシーで親和性が低かったこと、そしてディップ流の運用が柔軟に設定できないということで、フルスクラッチでの開発を選択しました。
ディップ社内の業務自動化組織「dip Robotics」を中心として団結。抜本的なシステム改変で課題を乗り越える
――どのような体制で取り組みましたか。
事業部に要望をまとめていただき、それに合わせてdip Robotics配下、開発チームで推進していきました。
――SAAFの導入で困難だったことについて教えて下さい。
新型コロナウイルスの影響で想定していたスケジュールよりも早い段階でリモートワーク運用が開始されたことです。企画は始まっていたのですが、追加で要望が多く寄せられてしまいました。
要望への対応だけでなく、関連システムとの連携が複雑だったことも大変でした。
またユーザビリティについても検討が足りておらず難航しました。
――どのように問題解決しましたか。
思い切って一度仕切り直し、要件定義・設計・構成全てを練り直しました。
そのまま進めていたら、ユーザビリティを考えない構成になっていたので思い切ってよかったと思っています。
いつでもどこでも承認可能。無駄のない処理フローを実現。
――現在の運用を教えてください。どのような利用方法をしていますか。
申込書の社内確認・承認フローを全てWeb上で完結できるように運用しています。
――どのように課題が解決されましたか。
スマートフォン・PCで対応可能なので、いつでもどこでも押印などの対応が可能になり、承認時間が削減され、申込書の確定まで1件あたり1.2日早くなりました。
また、承認ステップの見直しにより、記載ミスによる申込変更も削減されました。
――導入してよかったと思う点や便利な機能があれば教えてください。
紙の印刷と物理的な対応がなくなったのが良かったと思います。
――運用上で生じている課題などはありますか。
これは愚痴なんですが、リモートワークを掲げるプロジェクトでありながら、システムの発注や検収のためにわざわざ出社し、書類にハンコを押して郵送する必要があったのはまだまだ課題だなと思いました。
また、利用開始後に、想定外・イレギュラーな運用が発覚し、ユーザーになりきれていなかったなと痛感しました。
他にも、連携先システム側で問題が発生し、監視体制を強いられたのはとても心苦しかったです。
更なる利便性の向上に向けて
――今後取り組みたい改善はありますか。
ユーザーの前後の行動を含めた改善や機能の断捨離ですね。
ユーザーが欲しい時に、欲しいものを、気持ちよく利用できるサービスが作れるように精進していきたいです。
ありがとうございました!