年間1億円以上のコスト削減!バイトル原稿作成Copilotで注目される生成AI活用事例「Aipen」チームにインタビュー
アルバイト求人サービスを運営する弊社で、求人原稿のDXに挑むチームがあります。バイトル原稿作成の負担削減ツールを開発するAipenチームに、お仕事についてインタビューしてみましょう。
生成AIを組み込んだバイトル専用ツールで実費1.4億円のコスト削減
田中:Aipenは、バイトル原稿専用のCopilotです。主力人材事業のバイトルでは、常時200万件以上の求人広告が掲載されており、掲載コンテンツの作成には大変な手間がかかっています。これまで、ディップでは年間数億円の外注費と、社員による膨大な手作業が発生していました。
そこで、生成AIを用いてディップの求人広告フォーマットで下書きを作成できるようにすることで、求人広告作成業務にかかる外注費を削減し、営業社員の原稿作成業務を減らすことでセールスタイム創出による売上UPを目指したツール開発を行うことにしました。
インタビュアー:具体的にはどれくらいの費用を削減できたんですか?
田中:外注費としてかかっていたコスト年間1億円以上が削減されました。該当業務は社員だけで処理できる工数に抑えられたため、IRに掲載する費用が丸々減った形です。
また、社内でも同様に原稿作成業務があるので、その業務にかかる時間を短縮できます。セールスタイムの創出に貢献し、売上アップにも一定の効果がありそうです。
株主向け決算報告資料に掲載されました
未経験も多い少数チームでも、成長の連続で経験不足を乗り越えられた
社員5名と業務委託の開発者1名で動いています。
【チーム体制】
渡辺(Dev・SM):iOSやAIなどの知見があり、本PJで開発チームをまとめながらスクラムマスターを担当
高橋(Dev・フロントエンド):元々バックエンドを得意としていたが、本チームではフロントを主に担当
石井(UIUXデザイナー):新卒ながらUIUXの専門性があり、本PJでは特にUIデザインを担当
加藤(企画PL):Devのバックボーンを持ち、本PJから企画ディレクションやUXリサーチを担当
田中(PO・PdM):CRMでUXデザイナーを経験後、本PJのコンセプト立案・戦略KPI設計・プロダクトマネジメント等を担当
変わりゆく生成AI事情。不確定な開発を支えたのはユーザーの声
インタビュアー:チームの方々にお話を聞いてみたいと思います。それぞれの業務の中で、大変だったことや工夫したこと、成長したと感じることはありますか?
渡辺:企画・開発メンバーともに求人原稿に関するノウハウが少ない状態でスタートしたこと、そこに生成AIという最新技術を絡めて開発することが大変でした。
特に求人原稿として問題のない品質なのかを評価すること、生成AIの出力をコントロールすることには苦労しました。社内の求人原稿作成専門チームの方々にプロンプト調整や出力結果の品質チェックにご協力いただくことで、足りないノウハウをお借りすることにしたため、AIによる原稿作成の品質は当初よりも格段に良くなりました。今後もユーザーの声を聞きながら継続的にブラッシュアップし、品質向上していきたいと考えています。
生成AIについては、開発中にも次々と最新バージョンのモデルが公開され、変化が目まぐるしい技術です。初期は思ったような出力をしてくれないことも多く、技術記事や海外の論文を読みながら手探りで微調整をしていきました。 自身にとって未知の分野や最新技術を扱うので大変なことも多いですが、リリース後の「原稿作成が以前よりも楽になった」といったユーザーの声がモチベーションに繋がっています。
PoCはレガシーな技術で、プロダクトの成長に合わせて進化させていく開発経験
インタビュアー:プロジェクトの進行にあたって、一筋縄ではいかないことばかりですね。同じ開発チームでフロントを担当した高橋さんにとっては、Aipenチームの開発はどうでしたか?
高橋:PJの初期段階はまだPoC開発という感じで長期的にプロダクト開発が続くか不確定でした。そのため、最初からモダンな技術を使ってUIなども作り込むのではなく、HTMLに生JavaScriptというレガシーで簡単な技術を使って、UIもほぼCSSフレームワーク頼りにしたことで、初期の開発スピードを上げることが出来たと思います。レガシー技術でWebページを作るのには慣れていたのでAipen開発に初期段階で関われたのは幸運だと思っています。
その後、フィジビリ等を経てプロダクトとしての将来性が開けたことや機能の増加に伴うコードの保守性の低下を受けて、フロントエンドフレームワーク(Nuxt.js)を導入することを渡辺さんに相談しました。自分自身このようなモダンなフロント開発には疎かったのですが、フロント開発に強い業務委託さんの助けなどもあり、現在技術リプレイスを進めることが出来ています。学びの連続で大変ですが、コード品質や開発生産性が上がることが期待できますし、自分の成長にも繋がっています。
デザインとビジネス目標の融合、新しい視点を手に入れた新卒デザイナー
インタビュアー:石井さんは新卒ながらチーム唯一のデザイナーとしてジョインされていますが、はじめての職場ではどういったことを学びましたか?
石井:初めての実務でのUIデザインは挑戦の連続でした。シニアデザイナーがいない環境で一人で全てのUIデザインを担当するのは貴重な経験になりましたね。学生の頃とは異なり、実際のプロジェクトでは開発工数やビジネスインパクトを考慮しながらデザインを進める必要があることを学びました。
限られたリソースの中で最大の効果を上げるためには、単にデザインの美しさや使いやすさだけでなく、開発にかかる時間やコスト、そしてそれがビジネスにどのような影響を与えるかをしっかりと把握することが重要で、より戦略的なデザインが求められることを実感しました。
石井さんがデザインし、高橋さんが実装した画面デザイン
開発者から企画者へ。適応の中で見つけた戦い方
インタビュアー:加藤さんも、入社時はエンジニアとして入社し、企画はこのプロジェクトがはじめてのご経験でしたね。役割の転換時には、どのようなことに気をつけましたか?
加藤:そうですね…、開発経験が長かったため、どうしてもプロダクト視点で物事を考えてしまいがちでした。ユーザーインタビューなどを通して、ようやくユーザー視点の重要性に気づき、そこから意識して改善していくようにしました。
インタビュアー:具体的には、どのような工夫をされましたか?
加藤:アンケートやユーザーインタビューを繰り返し実施し、ユーザーの課題を徹底的に洗い出すようにしました。そこで得られたインサイトを基に、RICEスコアなどを駆使して解決すべき課題の優先順位づけを行い、より良いプロダクトになるよう企画を進めました。また、他部署とのコミュニケーションを密にすることで、開発チームにユーザーの声を届け、プロダクトの改善に繋げることができました。
バイトル標準から全社の標準へ。Aipenが狙う今後の展開
インタビュアー:今後のAipenはどのような施策を行うのでしょうか?
田中:ディップはバイトル以外にもたくさんの媒体を持っています。各媒体に最適化して横展開していくことで、これからさらに大きなインパクトを残していけると確信しています。
個人的に大切だと思っているのは、常にプロダクトを通して開発投資を回収できる収支水準を短期的に満たしつつ、次第に大きなロードマップを達成していくようグロースさせることです。新規事業の9割は失敗し消えゆくため、不採算な状況が半年程度続くようだと事業から撤退するというルールを定める企業は多いと感じます。このPJは採算がとれているという状況を維持してはじめて、プロダクトゴール達成という長いマラソンを走り抜けられるはずです。
ディップの求人媒体で仕事探しをするユーザー誰もがわかりやすいコンテンツの作成のため、Aipenを通してより多くの原稿に携わっていきたいですし、業務効率化だけでないコンテンツ品質向上もできる未来を理想として、目下外注費削減効果を積み上げていきたいと思います。
インタビュアー:Aipenも参画する「dip AI Force」を推進する鈴木さんは、Aipenや生成AIを活用したPJに何を期待しますか?
鈴木:
鈴木(CIO・最高情報責任者):ディップの社内AI活用を担当。Aipenも参画する生成AI施策群である「dip AI Force」を推進する。 鈴木さんのインタビュー記事はこちら
歴史は繰り返します。当社は、求人誌全盛期に生まれ、Webの求人媒体として、紙媒体の競合を超えてきました。私も雑誌記者をやっていたので、紙からWebへの移行を、この身で体験しています。AIがインターネットや携帯電話のような社会インフラになる時代の到来は不可避です。ネット時代は、時代を先読みすることでなんとか勝てました。でも、次の時代を見誤ると敗者になるかもしれません。
Aipenチームの皆様には、Aipen、そして質の高いAI活用を進めていただくことで、日々の業務や会社全体のプロセス、システムのすべてにおいて、AIと人が伴走する筋肉質な組織に変えていく先鞭をつけていただきたいです!
インタビュアー:みなさん、ありがとうございました!