
制度は、社員への「贈り物」じゃない。自らの手でキャリアを紡ぐための「武器」を目指して。
「ディップ」という組織の根幹には、創業以来揺ぐことのない一つの思想があります。それは「人が全て、人が財産」という考え方です。この思想は、単なるスローガンではありません。事業戦略、組織運営、そして人事制度の細部に至るまで、あらゆる企業活動の核として深く浸透しています。
今回は、人事企画室で制度設計に携わる大野善香さんへのインタビューを通して、ディップがどのように社員と向き合い、その成長と幸福を追求しているのかを紐解きます。営業の第一線から人事へ。そして3度の育児休業を経験しながらキャリアを築いてきた彼女の言葉から見えてきたのは、「会社が一方的に与える」のではなく、「社員一人ひとりが自らの手で働き方をデザインする」ことを可能にする、柔軟で進化し続ける人事制度の姿でした。
営業から人事へ。キャリアの軸は「人の可能性」への興味

編集部: 本日はよろしくお願いします。まず、大野さんのこれまでの経歴を教えていただけますか?
大野: 2011年に新卒で入社し、当時のエージェント事業部に配属されました。キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーを兼任し、看護師さんと病院の「幸せなマッチング」を創出するために3年間無我夢中で走りました。
もともと自社の制度や採用に興味があったんですが、営業として働く中で、「人を採用し、育てる」ことへの関心が日に日に強くなっていきました。そこで数年以内に人事へキャリアチェンジしたいという目標を立て、結果を出さなければ異動は叶わないと、まずは必死に成果を追求しましたね。
その思いが叶い、社内公募制度を利用して採用担当へ異動しました。その後、研修担当も経験し、2018年9月から現在の人事企画室に所属しています。人事の中でも、採用、研修、制度設計、労務関連など、幅広く経験させてもらいました。
編集部: 人事領域への異動はご自身の意思だったのですね。人事企画への異動のきっかけは何だったのでしょうか?
大野: 実はそれは偶然なんです。採用や研修を経験する中で、ある日上司から「異動しないか」と。自分の意思で人事に飛び込んだ後は、偶然の積み重ねでキャリアが拓けていった感覚です。ただ、その偶然のチャンスを掴み取り、キャリアを積み重ねてこられたのは、ディップという環境があったからこそだと思っています。
思想の言語化が生んだ、全社的な意識変革

編集部: ディップの根幹には「人が全て、人が財産」という考え方があると伺いました。これはいつ頃からあるものなのでしょうか?
大野: 私が入社した頃からありましたから、社長の考えの根幹として創業時からずっと受け継がれているものだと思います。ただ、社員がより強く意識するようになったのは、ここ10年くらいかもしれません。組織開発室が立ち上がり、フィロソフィーを言語化していく中で、その価値観が改めて全社に浸透していったように感じます。
編集部: その考え方は、今のディップにおいてどのような意味を持っているのでしょうか?
大野: 私たちは「労働市場における諸問題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現を目指す」というビジョンを掲げています。事業そのものが「人」と深く関わっているからこそ、社外の働く人々を幸せにするためには、まずサービスを創り出す私たち従業員が幸せであることが大前提だと考えています。従業員を大切に想い、一人ひとりが幸福を感じられること。それが全ての根幹にあるんです。
その思想から、「社員幸福度No.1」という目標も生まれました。これはあくまで結果としてのNo.1を目指すのではなく、従業員一人ひとりの幸福度が上がることを主眼に置いています。個々の幸福が、より良いサービスやユーザーへの貢献に繋がり、社会を改善していく力になる。そう信じています。
真摯さゆえに生まれる「ひずみ」。制度が進化し続ける理由
編集部: そのような考えを持つディップには、どんな社員が多いと感じますか?
大野: 社外の方からは「優しい」「人間味がある」と言っていただくことが多いですね。私自身が感じるのは、ユーザーやクライアント、そして隣で働く仲間のために「本気で」価値を届けたいと考える人が非常に多いということです。
営業担当であれば「お客様に価値のある効果を届けたい」と真剣に悩みますし、エンジニアであれば「どうすればもっとユーザーライクな画面を作れるか」「社内の業務フローを改善できるか」と常に考えている。仕事に対して非常に真面目で、正義感が強い。立場に関係なく、間違ったことを良しとせず、正しいと信じる道を突き進む文化があります。
編集部: 素晴らしいカルチャーですね。一方で、そうした社員の真摯さが、人事としての課題に繋がる側面はありますか?
大野: はい。社員一人ひとりが常にユーザーや社会の変化と向き合い、動き続けているからこそ、一度作った制度が時とともにフィットしなくなる瞬間が必ず訪れます。目的を達成するために作られたはずの制度が、時代や人の変化によって形骸化してしまう。だからこそ、私たちは制度を「作って終わり」にせず、常に現場の声に耳を傾け、働き方の変化に合わせてアップデートし続ける必要があると考えています。
「組み合わせ」で創る、自分だけの働き方

編集部: 制度をアップデートし続ける、という考え方をもう少し詳しく教えてください。
大野: 例えば、最近では有給休暇の付与日を全社員4月1日に統一しました。以前は入社半年後に付与していたため、社員ごとに付与日がバラバラで、管理者にとっては部下の休暇管理が煩雑になり、従業員自身も「自分の付与日はいつだっけ?」と分かりにくい状態でした。これを統一することで、管理者は計画的な取得を促しやすくなり、従業員はシンプルに自身の休暇を把握し、計画的に利用できるようになりました。
編集部: 既存制度の運用を見直し、より使いやすく改善していくわけですね。
大野: その通りです。他にも、子の看護休暇の対象を、法定の「小学校3年生まで」から「小学校6年生まで」に延長しました。これは社員の声がきっかけです。保育園と違い、小学校に上がると朝の登校時間までの過ごし方や、夏休みなどの長期休暇の課題が出てきます。特に小学校中学年以降も、まだまだ親のサポートが必要な場面は多い。そうした実態に合わせて制度を手厚くしました。
重要なのは、一つの制度で全てを解決しようとしないことです。ディップには、短時間勤務が可能な「フレキシブルワーク制度」もありますが、これも看護休暇と同様に小学校6年生まで利用期間を延長しました。これにより、例えば「夏休み期間の1ヶ月だけ時短勤務を利用する」といった柔軟な働き方が可能になります。
このように、複数の制度を社員一人ひとりが「自分のライフスタイルに合わせて組み合わせる」ことで、キャリアを諦めることなく働き続けられる環境を整えています。
編集部: 大野さんご自身も3人のお子さんを育てながら働いていらっしゃいます。制度をどのように活用されましたか?
大野: 私も制度に助けられました。特に第一子の時は、仕事と育児の両立が未知の世界で、フルタイムで復帰するのが怖かったんです。そこで、制度を活用し、復帰後1ヶ月ごとに勤務時間を調整しました。「今月は16時半まで働いてみよう」「クリアできたから来月は17時までにしてみよう」と、自分と子供のペースに合わせて徐々に慣らしていくことができました。この経験があったからこそ、第二子、第三子の時は安心してフルタイムで復帰できましたね。
制度は「背中をそっと押す」ためのもの
編集部: 既存制度のアップデートだけでなく、新しく生まれる制度もありますよね。
大野: はい。最近では、有給休暇を積み立てられる制度や、短時間勤務を選択する社員を支えるフレキシブル手当などを新設しました。
ここでも大事にしているのは、ディップの制度は「全部やってあげる」というものではない、ということです。あくまで、自律的にチャレンジしようとしている社員の「背中をそっと押してあげる」ためのもの。完璧な制度で全てを解決するのではなく、小さな選択肢(武器)をたくさん用意し、社員がそれを組み合わせて自分だけの働き方をデザインしていく。その思想が根底にあります。
不確実性が高く、多様な価値観を持つ人が働く現代において、「これさえやっておけばいい」というモデルケースは存在しません。だからこそ、会社は柔軟に使える選択肢を用意し、その使い方や組み合わせ方を社内報などで共有していく。そうすることで、一人ひとりが自分らしいキャリアを築いていけると信じています。
編集部: 制度の作り手として、大切にしていることは何ですか?
大野: 常に「現場の生の声を聴く」ことです。作り手になると、どうしても高い視点から物事を見たり、数字だけを追いかけたりしがちです。でも、それでは社員が白けてしまう制度しか作れない。制度が導入された時、従業員が「自分は会社から大切にされている」と少しでも感じ取ってもらえるような、温かみのある制度設計を心がけています。
未来の仲間へ。ディップで、あなただけの「仕事人生」を。

編集部: 最後に、これからディップの仲間になるかもしれない方々へメッセージをお願いします。
大野: ディップには、社員の挑戦を支えるための働きやすい環境や制度が数多く用意されています。しかし、冒頭でお話ししたように、それは会社から与えられる「贈り物」ではありません。一つの制度であなたの働き方や生活が劇的に変わることはないでしょう。
大切なのは、用意された多くの選択肢をうまく取り入れながら、自らの手で「自分らしい仕事の仕方」や「自分らしい生活」を組み立てていくことです。ディップというフィールドを存分に活用し、あなただけの「仕事人生」を楽しみながら切り拓いていってほしい。私たちは、その挑戦を全力でサポートします。

