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組織を動かす「仕掛け人」。自組織だけでなくエンジニア全員が「働く喜び」を感じられる開発組織を目指す。

interviewee

戸叶誠
▼詳細

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岩城 茉優
▼詳細

ディップ株式会社の技術部門において、『スポットバイトル』と『バイトル』を扱う2つの部署を部長として牽引する戸叶誠さん。戸叶さんが目指すのは、メンバー一人ひとりが「達成感」と「成長感」を得て、自律的に挑戦できる開発組織です。その独自の思考法と、組織を動かす「仕掛け」の裏側に迫ります。

防衛から防災、そしてディップへ。異色のキャリアを歩む

岩城:まずは戸叶さんの現在の仕事について教えていただけますでしょうか?

戸叶:はい。現在はスポット開発部と第二バイトル開発部の2つの部の部長をしています。合わせて約35人ほどの部下を抱えていますね。
スポット開発部では、『スポットバイトル』という新しいサービスの開発を全て担当しています。具体的には、ユーザー向けのスマホアプリ、クライアント向けの管理画面、社内ツール、給与支払いのシステムなど、『スポットバイトル』に関わる全てのプロダクトの開発を行っています。
もう一つの第二バイトル開発部では、10年後も『バイトル』で戦えるように、『バイトル』の未来を見据えた機能の開発を進めています。ディップの中でも特に活動が活発な2つの部署を担当している形ですね。

岩城:同時に2つの部署を見ていらっしゃるのですね。これまでのキャリアについてもお伺いしてもよろしいでしょうか?かなり多様なご経験をお持ちだと伺っています。

戸叶:そうですね。社会人歴で言うと、今年で23年目になりますが、最初のキャリアは組み込みエンジニアでした。防衛産業で、自衛隊が使う装備品、たとえば通信機や護衛艦を制御するシステム、さらには魚雷標的などを開発していました。10年ほど防衛業界にいましたが、プログラマーからステップアップし、SEやSIとしての業務も経験しました。
その後、転職した企業では、緊急地震速報や火山監視システムを開発していました。特に火山監視では、桜島の山中で地震計などを設置するために、実際に火山内部の坑道に入ることもありました。

岩城:防衛に防災…壮大なキャリアを歩んでこられたんですね。

戸叶:そうですね(笑)。そこで5〜6年の経験を経て、プロジェクトマネジメントの領域に本格的に携わるようになりました。最終的にはプロジェクトマネジメントを主軸にしていきたいという思いから、ディップに転職したのが約6年半前、2019年の1月です。

岩城:サービス内容というよりも、プロジェクトマネジメントというポジションに惹かれて転職されたのでしょうか?

戸叶:そうですね。役割に惹かれたのが大きかったです。「ソリューション」という言葉へのこだわりが強いんですよ。どんな課題であっても、自分のスキルや知識を駆使して解決に導くことが好きなんです。もともと組み込みエンジニアとしてプログラミングをしていましたが、それだけでは解決できない課題があると感じ、SEとして設計を学びました。しかし、一つのプロダクトや機能の設計だけでは全体が見えないため、SIとしてシステムを統合する役割も勉強しました。そしてその中で、物事の始まりである「何かの目的に向かってものを作っていく」というプロジェクト単位の動きに気づき、最終的にはプロジェクトマネージャーとして活躍しようと考えるようになりました。そのためにプロジェクトマネジメントプロフェッショナルという国際資格も取得し、現在もPMI(プロジェクトマネジメント協会)の日本支部の研究会でプロジェクトマネジメントの研究を続けています。

組織を動かし、全て自分事として考えるマインドセット

岩城:部長になり、組織を作っていく立場になった時に目指していた姿はありますか?

戸叶:まず、開発組織として「どうしたら今の会社の課題を解決できる組織になるのか」を考える必要がありました。個人的に、エンジニアは楽しく活動できないといけないという思いがあります。エンジニアのパフォーマンスはモチベーションに大きく紐付いているので、そこを上げれば開発の生産性も向上します。だから、最初に目指したのは「開発が楽しく、素早く、賢く活動できるようにメンバーを支援する方法を考える」ということでした。

岩城:それは、何か課題を感じていたからでしょうか?

戸叶:そうですね。例えば「言われたから作っている」「納得できないけど上司からの命令だから」といった状況では、自分が納得していないため、言われた通りにしか作らず、意図が伝わらずに使えないものになってしまうことがあります。
一方、自分たちが作りたいものが個人のメリットにも繋がり、その上で会社にも貢献できるような活動であれば、メンバーは色々と考えてくれるはずです。「足りない部分はどこか」「もっと役に立つにはどうするべきか」といった前向きな提案も生まれやすくなります。結局これらはモチベーションの差であり、そこを繋げるための活動を目標にしていますね。

岩城:なるほど。私から見ると、スポット開発部も第二バイトル開発部もメンバーが皆楽しんでいるように感じています。どのようなことを実践されているのでしょうか?

戸叶:まずスポットの部長になってから掲げたのが、「今の仕事を通じて達成感や成長感を得られているか」という問いをメンバーに投げかけることでした。そして、それを実現するための仕組みを作っていく必要がありました。
具体的に行ったのは、会社とは関係なく「個人の長期目標」をメンバーに質問することです。これは「5年後、10年後にどうなりたいか」という話です。明確な長期目標を持ち、それを言語化でき、自分で考えて活動できている人は、既に自律的に成長できる状態にあると思います。しかし、多くの人は「なんとなくやっているけど、5年後と言われると分からない」「どこを目指せばいいのか迷子になっている」という状態です。だから、まずはそこを言語化するサポートから始めました。

岩城:具体的にはどのようにサポートされるのですか?

戸叶:「どんな憧れがあるか」「どんな活動をしていた時が楽しかったか」「現時点で達成感を感じているのはどんな時か」といった話を聞き出します。その延長上で「5年後にはこの方向を目指してみましょう」「憧れが強いなら10年後にはその位置に立つことを考えてみましょう」と提案します。例えば、エンジニアだけど一社の社長に憧れているなら、10年後や20年後にはCEOを目指すという長期的な視点で計画を立てていきます。
まずはこれを明文化し、その上で「今年や半年で何を頑張るか」「最初のステップは何か」を考えます。大きな目標から構造化して分解し、具体的な目標設定を行うのです。そうすると、「10個のステップのうち1個クリアできた」「2個クリアできた」といった形で成長を実感できますよね。去年や半年前の自分と比較して「成長した」と自認できる結果が得られれば、自分がやりたいことと会社が期待している活動がマッチする状態で成果を出せるようになります。

岩城:組織を動かしたり、メンバーの意識を変えたりするのは難しいと感じますが、組織作りの中で意識していることはありますか?

戸叶:大目標としては、誰もが納得できるような、抽象度の高い目標を立てることを意識しています。例えば極端な話、「世界平和を目指しましょう」と言われて、それを否定する人はいませんよね。ただ、そこに至るアプローチは人それぞれ異なります。
だから、組織全体としては抽象度の高い目標を共有しつつ、個々のアプローチがその目標に繋がっていることを説明します。例えば、目の前のタスクが「世界平和に繋がる仕事なんだ」と意識できるような構造を作ることです。ディップで言えば「フィロソフィーと紐付ける意識付けをしよう」「みんなで意見を出し合いながら会社を作り上げていこう」といった話を繋げることで、全体の方向性を揃えるようにしています。

誇りを持ち、自律的に動ける組織を目指して

岩城:現在、戸叶さんが組織に対して持っている目標やビジョンはありますか?

戸叶:まずは、先ほど話した「達成感と成長感をメンバー全員が得る」という取り組みを、スポット開発部だけでなく、全社的に広めていきたいと考えています。それが全体に広がれば、メンバーは自律的に動けるようになるはずです。
その結果、エンジニアが誇りを持ちやすくなると感じています。「自分の目指していることと成果が紐付いていて、会社の中でも挑戦し評価された」「私は胸を張ってこの仕事をやっている」といった意識が生まれれば、次の挑戦へと繋がり、努力を続ける原動力になります。それが組織全体を強くし、マイクロマネジメントが不要な、自律型の組織に繋がると考えています

岩城:ご自身の部署だけでなく、ディップ全体のエンジニアについて、なぜそこまで広範囲に考えることができているのでしょうか?

戸叶:理屈で言えば、部長職というのは経営層の考えと現場のメンバーの努力を橋渡しする役割だからです。経営メッセージを適切にメンバーに伝え、会社のことを考えて活動することは、部長というポジションの常識でもあります。
ただ、それ以上に、やはり最初に話した「ソリューション」への思いが強いんです。ディップの社員である以上、ディップの課題を解決しなければならない。自分の部署だけが頑張れば会社が儲かる、という狭い考え方ではうまくいきません。結局、会社全体の規模を考えれば、全員が頑張らないと成り立たないんです。だから、何かを解決しようと根本的に考えると、自然とたどり着く先は会社全体になるのだと思いますね。自分事として捉えるべきだと考えています。

岩城:戸叶さんはよくメンバーと壁打ちや1on1を行っている印象がありますが、メンバーにいつも伝えている共通のことはありますか?

戸叶:ロジカルシンキングや構造化という言葉はよく使いますね。説明する時もそうですが、自分の状態を理解するためにも、一つ一つ言語化し、細分化して、どういう構造になっているかを図示したり、言葉で表せる状態にすることを意識しています。そうすると「自分が今どこにいるのか」が分かりやすくなります。
例えば「なんとなく楽しい」と感じている場合、「何が面白いと感じているのか」と掘り下げてみます。どんな情報をインプットしている時が楽しいのか、どんな話題で会話をしている時が楽しいのか。こうしたことを真剣に考えてみるんです。
自分の得意な思考に持っていけるようにするには、自分の頭の中や特性を整理する必要があります。そのため、ロジカルシンキングや構造化は絶対に必要な要素だと思っています。これは自分自身だけでなく、他人の話を聞いてまとめる際や、成果物を作る際にも役立ちます。情報を分解すれば、何が必要で何が不要かが見えてきます。例えば説明書であれば、目次や機能説明といった構成を分解していくと、結局どこに焦点を当てるべきかが明確になります。このような思考を身に付けると、全ての整理がうまくいくので、メンバーにも「意識して取り組んでみてね」「学習してみてね」と伝えています。

活躍できるのは未来を見て解決に導こうと動ける人

岩城:では最後に、ディップで活躍できる人、楽しみながらやっていける人はどんな人だと思いますか?

戸叶:まず、ディップは事業会社なので、尖ったスキルを追求することよりも、社会貢献や事業の成功を目指し、課題を解決に導こうとする考え方を持った人の方がマッチすると思っています。
キャラクター的には、自ら積極的に意見を発信し、「こんな活動をしたい」「こんな提案をしてみたい」と明確な目的を持って行動できる人が活躍できる環境です。
一方で、職人肌で与えられた仕事を着実かつ完璧にこなすタイプの人は、ディップの文化の中では目立ちにくい存在になってしまうかもしれません。また、ご自身の「やりたいこと」がある程度見えている方であれば、さらに活躍いただけると思います。特にキャリアを重ねた方ほど、この点が重要になると感じます。もし転職の理由が希薄であったり感情や感覚によるものであれば、一度立ち止まってご自身のキャリアプランを深く見つめ直す、良い機会なのかもしれません。明確な軸がないままでは、困難な状況に直面した際に高いモチベーションを維持し続けるのが難しくなるためです。

ご自身の明確なビジョンを持ち、「自分としてはこういうことをやりたい。この会社のフィロソフィーに共感している。だから一緒にやっていきたい」と、自身の言葉で語れる方は、間違いなく活躍できるはずです。

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戸叶誠

防衛・防災業界で15年間、組込エンジニアやシステムエンジニアとして従事。2019年にディップ株式会社へ入社後、「バイトル」のプロジェクトマネージャーとして4年間エンハンス開発を担当。その後、新規事業「スポットバイトル」の立ち上げをスクラムマスターとして推進した。現在は両サービスの開発部長として、組織醸成や開発生産性向上に取り組んでいる。

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岩城 茉優

猫と甘いものが好き。